やまもとのグレーゾーン

札幌の絵描き山本雄基のきまぐれ雑感と日常。

チェルシーから歩いてとりあえずMOMAへ向かう。
なかなか寒い朝だけど、歩きたかったのマンハッタン。
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子供の頃、「ニューヨークに行きたいかー!」という
某巨大クイズ番組があった。毎回楽しみにしていた。
あれがNYに行きたいと思わせる初期衝動だったに違いない。
あれを見てたか否かでアメリカに対する意識はだいぶ変わるんでないか。
自由の女神には行ってないし今回も行かないけど…。

しかしまさか2回目、しかも美術目的で来る事になるとはな。 

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MOMA。

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あら、インフォメーションの上にクリストファー・ウールのイケてる抽象!
ウール作品もだいぶ見たなあ。やっぱりこの抽象シリーズがかなりいい。

6年前のMOMAは改築後まもなかったので
各方面からの展示構成の悪評を聞いたが、それでも初めてだったので驚きの連続だった。

あの時マティスの部屋に感動しすぎて自分の絵画観が変わって修論もマティスを書いて
今もマティス作品は1つでも多くみておこうといろいろ回ってるのだ。

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今回はそのマティス部屋に、ダンス1も移動していたし
(前回はハズレの階段のとこに高く架けられていてとても遠くて見ずらかった)、
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念願のピアノレッスンもあったので大満足。
しかも隣の部屋ではムンクの小企画をやっており、俺得ゾーン…。
マティスとムンクは同時代だし、薄塗り基本の装飾的バランスに共通したニオイがある。
でも表と裏みたいな。南と北、人格者と狂人、みたいな。

あとモンドリアンの部屋、モンドリアンも各地で見て来たが
MOMAだけがガラスに入れない剥き出し展示をしてて見やすい。
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ブロードウェイブギウギ、やっぱステキだ。

その他前回との比較で少し思った事をちらりとメモ。
全体的に前回よりも流れが良い気がする。
60年代以降は今も細かく並びを組み替えているんだな。
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ポップの後に、FRPとか新素材使った系のアメリカ西海岸ムーブメントの部屋があったり、
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ボイスからポルケあたりのドイツ部屋などがあったり。パレルモの作品も。
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ポルケはなんかスパイダーマンの微妙な作品が展示されててやや残念。

ただ、60年代以降は作品に必要なスペースもデカくなってるので、
すでにこの部屋数ではフォローしきれていないような感じもした。

2階が現代の部屋だけど、
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今回のラインナップはサーレ、ロンゴ、G&G、
など80年代つまみ食いと、ドイツ・ケルン周辺に限った部屋など。
わざわざドイツから来てドイツ部屋を見せられるとなんとなく損な気が。
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アルバート・オーレンのこれはなかなか。

あとはマシューバーニーの微妙な小作や、
すでにいろんなトコで同じ様なインスタレーションを見て
割と飽きちゃったティスマンスのいつものやつなどが並ぶ。うーん。 

小泉明郎さんの展示ゾーンがあって、すげえなあ…て思った。
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作品もおもしろいし。
 

上階の企画展示は撮影不可なので入り口だけ。
まずTOKYO展。
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ユニクロが協賛企業になってるのか。
かなり詰め込んだ展示で疲れる。作品ラインナップはおもしろく
この中身だともっと広い空間が必要と思う。

それよりも個人的に超ヒットだったのだその隣の部屋でやってた
INVENTING ABSTRACTION1910-1925という展示! 
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渋い抽象画がメインで、ピカソの分析的キュビズムをスタートとして
画面内の色面形態がザクザク分裂しまくってる絵画ばっかり
ズラリと並んでいて思わず笑ってしまうほどのマニアックな内容。

この絞ったテーマのしつこさがすごく丁寧で企画展の意味を思い知る。
時代的には第一次世界大戦を挟んでいる時期だけど、
そういう時にエッジが効いてやたら分割線が多い抽象を描いてる画家達が
こんなにもいたんだという、別視点ての時代の証明になっているのも面白い。
別視点って例えば飛行機などの速度や空気を切るエネルギーとか、化学兵器の登場とか、
人が扱うスケール感の変化など決してそれらを直接テーマにしているわけではないのだろうけど、
個人の感覚レベルでリンクしちゃってるように見える。

個別の作家ではクプカやドローネーの他にもDavid bomberg、Vanessa Bell、
Ivan Klium、Georges Vantongertooなどグッときた。

あと、この時期のデュシャンの絵画はやはり出来が良い。
フィラデルフィアでは見れなかった回転マシーンもこっちで見れた。

展示は実験音楽や演劇の映像等も交えながら
レジェやピカビア、ロシアアバンギャルド、
デステイルと流れて行って抽象アニメーションあたりで締め。
いやあ参った。
同時期のピカソやマティスは最後まで抽象を選ばなかったし
だから最初のピカソ以外は展示の中には組み込まれていないけれど
そのパラレルな感じも脳においておかねば。 

2013年にまさに色面ザクザクで地味な抽象をやってる自分にとっては
なんというか勇気の湧く内容な反面、さあ今地味抽象やってどうすんべ、
というプレッシャーも同時に感じる。
図録もあります↓
 

 夜はDCに続き2度目の伊藤先生達と飲みアゲイン。
待ち合わせ場所までまた歩く。夜の中心部はモニタだらけで明るすぎ。
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黒いゴミ袋の山も懐かしい。

先生達は明日日本に帰国との事。
アメリカらしい肉をほおばりつつ、ここ数日の情報交換いろいろ。
あとは先生の2012年の活動が活発すぎて気になっていたので
作品の話をいろいろ聞きまくった。 

昨日ブライアンに教えてもらった自由の鐘、
実は泊まってるホステルのすぐ近くにあったので、
朝一で行ってみる。
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これがかの有名な。(全く知らなかった)
アメリカ史に精通してない人には
ピンと来ないモニュメントなのではなかろうか。
せっかく見たのであとで調べておこう…

さて、バーンズ財団コレクションへ。
フィラデルフィア美術館のすぐ近くだ。
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もともと郊外の邸宅だったらしく、
その邸宅ごと再現して最近リニューアルしてこの場所に移転したようだ。

本当は事前予約が必要な美術館なのだけど
本日第一日曜は、朝一で並べば予約無ししかも無料で入場できるとウェブサイトに書いてあった。
それならもちろん今日を狙って開館時間にゴー。 

受付にはすでに結構な人。入場時間は決められていて午後からのチケットを貰えたので、
それまで隣のロダン美術館をチラ見する。
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ロダンのエロい彫刻は良いな!


ロダン美術館はすぐ見終われる規模だったのでフィラデルフィア美術館も再チラ見。
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これ、ムンク。

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別館にはトゥオンブリの彫刻数点の展示。
それに今日はブライアンがいなかったので落ち着いてみれたデュシャンだった。
 

時間になったので再度バーンズコレクションへ。
撮影不可ですがひたすら後期印象派近辺の名作祭り!!素晴らしい。

最初の部屋からピカソマティスセザンヌスーラの傑作がドンドンドン。 
邸宅ってことで、名作が部屋の壁中にビッシリみたいなアメージングっぷり。
バーンズさん、度を超えて買い過ぎだし、しかも審美眼すごい。
誰かアドバイザーがいたのだろうか。
超一流コレクターって、どういう世界観の中で生きているのだ。

セザンヌのドクロ入り静物にも感動したが、
何よりここで見たかったのはやはりマティス。 
「生きる喜び」がここにある。
2階の真ん中にあるのだけど、ひたすら素晴らしくて泣けるよ。
同じ人間から、どうしてこんなタイプのユートピアな絵画が生み出されるのかと。
ユートピア絵画でありつつ空間は結構メチャメチャになっててわけわからん。
ところでゴーギャンの遺作を念頭に置いて制作したのだろうか。
画面構成は違えど、その舞台に共通性を感じるような。
真逆のオーラだけど。

「生きる喜び」と対面するように、吹き抜け越しに巨大な「ダンス」も配置されてるので
マティス好きには鳥肌もの!必見。
高い位置に設置された動感のある美しい作品。
マチスのタブローの中では相当ハードエッジな部類に入るが
固さは感じない。
パリでこれの別バージョンと下絵もみているが、
どれも人物と色彩のパターンを組み直していて、
このシンプルに見えるバランスの葛藤が感動するよなあ。

「ピアノレッスン」のより具象的なバージョンもあり。

お腹いっぱい。ここからさらにNYだ。
いや〜なんだかんだアメリカは強い。濃すぎる。

街の中のチャイナバス乗り場へ。旧乗り場は閉鎖されており焦ったが
すぐ近くに新しい複合バスターミナルがあった。
ここから約2時間、NYへ戻る。

NYでのホステルはチェルシーのガゴシアンから徒歩1分のナイスロケーション。
2人部屋が当たって、I♡NYのキャップを被ってる黒人のオッサンが相部屋だった。
そして弱々しく「オレ…いびき凄いんだゴメン。薬飲んだから。明日部屋移動するから」
と言われた。めちゃ良い人だけれども、不安だ。
先に言われたら、オッケーノープロブレムとしか言えん。

そしてこのイビキが過去最高に恐ろしい爆音で、グガーグガーっていうより、
ブオオオオオオオオ
ブオオオオオオオオ
ブオオ、ブッ!って、一瞬止まるのが怖い。 
おっさんが下のベッドなので下から突き上げてくる音でベッドが振動する。 
本当に薬飲んだのか!?寝れるわけねーだろ!

過去にも何度かホステルではイビキに悩まされたが
今回は戦闘力のケタが違う。
困り果てた挙げ句、iPodをカバンから取り出して、
音量最高にして大黒さんのアンビエントでイビキを誤摩化すのがファイナルアンサー。
奇跡的に寝れた。札幌の方角を向いて大黒さんに感謝した。 

今回のアメリカのメイン目的の1つは、
フィラデルフィア美術館でのデュシャン巡礼だ。
ベニスやドクメンタに行く現代美術ファンの多さに比べて、
フィラデルフィアまでデュシャンをまとめて見にくる人は少ないのではないか。
現代美術のスタート地点として規定されることもあるのに、泉の写真だけみて判断するわけにはいかん。
情報拡散まで美術に取り入れてるデュシャンに惑わされないためには、
本人の遺志で作品を一堂に集めたここを体感するのが一番だ。

で、旅の直前に発覚したのだけど、
昨日まで展示替えのせいでそのデュシャンの部屋が閉鎖されていて
急遽都市巡りの順序を変更したり無理やり調整をしたのだった。

宿からすぐ近くのバスターミナルからバスでフィラデルフィア美術館へ。
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ワシントンD.Cもそうだったけど、広い。道幅も広いし、街のスペースの取り方が広い。

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見えて来た。う〜ん、デカい。茶色い。

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ロッキーで有名らしく(見てないけど)、ロッキー像があり、
客も階段でロッキーのポーズをしてるフィラデルフィア美術館。

最初にビビるのはどこか見覚えのある巨大シャガール…
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これは青森県立美術館のアレコホールの連作の残り1枚じゃないか。
ここにあったのかー良いですな。
しかしこのスペースにしか飾れなかった感が満載だ。
むしろ展示室に入りきってる青森が凄い。

目的はデュシャンと決めてるので、他でも沢山見た古典ブースはサラッと…
と覚悟して来たが、サラッと見るにしてもボリュームがありすぎる。
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こういった部屋もたくさんある。

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気になるティツィアーノ。顔半分、画面半分が透明のカーテンで覆われてる。
誰のどういう状況なのか調べなきゃわからんが、それ抜きにしてもこれはヤバいな。
見る枚数を重ねるほど、ティツィさんが好きになる。
絵画自体の構造を検証してるようなアプローチが多々見受けられるので。

だいぶ端折ったけどかなり充実しとる。

目玉作品の1つで、見たかったセザンヌの大水浴図があるはずの立派な専用壁では、
なんとルノアールの水浴絵画にすり替わっていた(笑)
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確かに同じ水浴ではあるけれどこの絵、かなり微妙じゃない!?
…いや、実際僕はルノアールに全然反応できてないのだ。
これはこれで描いた本人も傑作と言ってるような作品らしい。
あまたの国の印象派コーナーでも、ルノアールはガツンと入って来ない。

まあとにかくセザンヌは一体どこに貸しているんでしょう…がっくり。

ここも現代ブースが目立って良質だった。
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これはケリーの初期絵画の部屋。

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スカリーのデカい部屋、

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ちょっとギュウギュウだけどトゥオンブリの傑作部屋。

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ジョーンズもラウシェンバーグも中期のハイクオリティなのが普通にならんでる。

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マティスのオーラな絵画(画像は拡大図)もここだったのか。 


そしていよいよ、一番奥のほうにあるデュシャン部屋だ。
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ホントは2部屋あるのに今は片方しか空いておらず
しかも半分はジャスパージョーンズの作品っていう
イレギュラーバージョンの展示。
これはこれでレアだし比較もおもしろいのだけれど
レディメイドが少ない(便器も無い)、回転板も無い、
階段を下りる裸婦2まで無いのがちょっと残念!
だいたいのレディメイドは他の美術館でも見たからいいんだけど、
やっぱり一気に並んでる展示が見たかったな〜。

とは言え、真ん中で堂々としている大ガラスにすぐに心が奪われた。
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ストックホルムで見たレプリカと全然違うし!
あれはやっぱ微妙な出来だったのか。

細部をたくさん観察してみる。
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裏も。裏なんてまったくレプリカと違う。
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パーツ毎の質感も違うしフレームもメタリックでカッコ良い。
そもそも質感含めた全体の構成から、
デュシャンの造形センスレベルの高さをヒシヒシと感じる。

絵画として図像をみたら、下半分は透視図法を使って床面を意識させながら、
ガラスによって面を無効化させようとしている。
上半分は、タイトルと解説を素直に受け取れば「花嫁」となる物体が、
画面上部から吊り下げられた状態を描いてる。天井。つまり上半分と下半分で天地を設定。
が、「花嫁」は下半分にくらべて正面性が強く、ペラッと描かれていて下半分に比べボリュームが不明瞭だ。いや不明瞭というか、僕らの現実とリンクしたサイズ感といえばいいのか。下半分は、画面内で完結するスケール感を持っていて現実とのリンクが上半分ほどではない。
「花嫁」3箇所の四角部分はガラスのまんまで、よりペラッと感が強調されている。
ガラスと構図と自身の解説をうまく使って、上半分と下半分のちぐはぐな空間性を強引に結合させている感じがする。タイトルとグリーンボックスの情報に引っ張られ過ぎると、ついこういう要素を見忘れるので注意がいる。デュシャンはむしろそういう惑わせ方を積極的に取り入れているように思える。

そしてよくもまあうまいことヒビが入っちゃたこと。
後ろからの窓の光がヒビに反射していい感じ。
見れば見る程、異彩を放つ唯一無二の変なモノだ。。

そして奥の部屋に遺作。
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このそっけない奥部屋の怪しい存在感。
お客がいない間に撮っておけ!

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覗き穴。

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よ〜く見ると覗き穴と手前のレンガ壁の間に、
透明の保護ガラスが確認できる。
レンガ壁によるフレーミングがよく出来ている。

ポイントは、覗き穴がちゃんと2つ空いてて両目で見れること。
これは…ぜひニンテンドー3DSで遺作体感コンテンツを作っていただきたい。

片目でみるともう少し情報が限定されて見えて来るのだろうが両目でみるので、
目の前に「出来がいいんだか悪いんだかよく解らんけどめちゃ頑張って作った謎のジオラマ」
があるっていうリアリティがもの凄い(笑)
実はもっともっと幻想的に見えるのかと思っていたんだけれど、
手作り感がとても近くにリアルに感じられる。

もちろん、見える範囲や視点移動の限界値、照明の入念な設定、
それぞれのパーツに対する造形愛などは伝わってくる。
背景の描写の妙な質感、スプレー塗装のような空と雲のボケ感や
ちょっとエルンスト風にも見えるしコラージュぽいペラッと感にも見える森の感じ、
流れる滝の明らかにローテクなキラキラも想像以上に手作りっぽさが…。

これをコソコソ最期の10年以上も作ってたのかと思うと、
デュシャン、あんたは一体何なんだ!という感じ。
死後10年経ってこれが発表されたときの、
リアルタイムの「ええええ!?」感はどんな感じだったんだろう。

遺作の部屋の観客観察も、おもしろい。
覗き穴の存在を知らずに帰っちゃう人、
覗き穴に気付いて、Oh....!と苦笑いする人、
そうだよな覗いて見たらいきなり裸の女が股拡げてるんだからそのリアクションが正しいんだ。
カップルで来て、片方が知ってるようでもう片方の覗いたリアクションを楽しんでる人、
子供に覗かせて、周りの観客が笑ってる光景。など。

そして自分が絵描きだから余計に思うのだろうけれど、
大ガラスと遺作においてはやはり絵描き畑の人の造形物って感じがものすごくした。
それでいて安直に絵画なところには着地したくなかったんだろなあ、と。
大ガラスはまあ絵画と言っていいけど、絵画か否か?みたいな境界論は、じっさい意味無し。

ちなみに、
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同部屋にある最初期のデュシャンの風景画。

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階段を降りる裸婦その1。


今でいうDVD特典メイキング映像的という位置付けと考えれば良いのか、
大ガラスと遺作をベースにしたメイキング作品の残し方も上手い。
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それに、物として欲しくなる要素満載だし。
グリーンボックスだってまず箱の質感とかデザイン、一つ一つのメモなど存在そのものがアイテムとしてカッコ良いではないか…。

このように過剰に造形的な大ガラスと遺作という2作品を軸に、
デュシャンが残した作品全体の押し引きを
俯瞰して考えられるのがおもしろい。
レディメイドや、それこそ一連の便器作品のスキャンダラスな流れ等も
全体から俯瞰して見た方が味わいがあるように思える。
未来から見た自身の見え方を想定していたのか。

ステレオタイプな「ダダ」!っていうイメージよりは、
考え方を拡張させながら芸術ギリギリを常に提示してたような感じだなあ。
レディメイドっていう手法のイメージが先行しすぎて、
たくさんの誤解が生まれているようにすら思える。

ところでこのデュシャン部屋、一番奥のせいなのか人がまばらで、
監視員がやたら話しかけてくるのでなかなか集中するのがタイヘンだった。
こっちも脳に焼きつけようといつまでも部屋をウロウロしたり
何度もこの部屋に戻って来たりしたので、
向こうもヒマだし興味を持たれたんだろう。
そのうちお互いの自己紹介タイムにまで発展する。
推定60歳くらいの彼の名はブライアンという。
数年前にも日本人で2週間程毎日このデュシャン部屋を取材してた作家が居たという。誰だ。

せっかくフィラデルフィアにいるなら自由の鐘も見て来なさい!と言われた。
最後はガッチリ握手して終わる。何なんだ。

他の部屋の監視員も鼻歌歌うしケータイいじってるし、フリーダムすぎる。

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なぜかトランクの箱は別ブースにありました。
コーネルなどと並べたかったのか。

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日も暮れかけ。
ああ、念願のデュシャン巡礼を達成した。
展示が完全体の時にまた来ないと駄目だな。 

早朝6時にピッツバーグ到着。
ピッツバーグの目的はアンディウォーホル美術館だ。
ここウォーホルの出身地なのだった。
 
しかしDCから一転、ものすごく寒い。
マイナス10度超えの寒さ。 
外を歩く気が起こらない寒さなので、
仕方なくそのまま美術館開館時間までgrayhoundバスターミナルで待機することに。
4時間もここでじっとしてるのか…まあフリーwifiも来ているし電源もちょうだいできる。 

やっと10時になり、徒歩で美術館へ移動。20分弱歩く。寒い!!!
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歩道に生えた煙突から白い煙が。

極寒なウォーホルブリッジを渡る。
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振り向けば、ピッツバーグ市街。

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到着。外見は地味だが、中に入ってみると
実は個人美術館なのに6フロアもあるデかい美術館だった! 
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入り口からテンション上がるも、中はまた撮影不可でした。

不運な事に、中期の巨大ペインティング部屋が丸ごと改装中だったのだけど
他の美術館でもその時期の絵画は結構見ているのでまあ良しとしよう…ガクっ!

それを差し引いても、見応えがある。
超ハイセンスな初期ドローイングから、
銀色のヘリウムバルーンや酸化絵画まで揃っている。
カッコいいし、とことん空虚。
タイムカプセルもあった。

しかもウォーホル以降の関連作家の巨匠レベル作品も実は結構展示されており、
リヒターやポルケもあるし、クーンズ、ウールや、
なぜかハンスフーケ、さらに村上隆2002年の作品なんかまで。
すげー豪華…そしてこれらもまたウォーホルをベースに並んでいるせいか、
他の美術館に比べると、
豪華な作品だらけなのにスカーっとしてて何だか奇妙に思えてくる。

映像も充実していて、
エンパイヤなどの有名な作品からインタビューのアーカイブまでズラリ。すっげー。
とても見きれる量ではないのでチラ見で終えてしまったけど、
ウォーホルがキャンバスに絵具を塗っている映像には
しばらく虜になってしまった。 
オシャレにシンプルなシャツを着たウォーホルがただ黙々と、
筆触を確かめながらペタペタと塗る映像…指なんかも使いながら塗る。
何か見えないアンテナが反応している様な、センスの場だ。
グッと来る…! 

平日の朝っぱらなのでお客さんが全然いないわけだが、
スタッフばっかりやたらいる。しかも若めのスタッフ多い。
大学の研究とかと連携でもしてんのかな。

ちょっと時間があったので、そのスタッフを捕まえて
ピッツバーグの他のアートスポットを聞く。
近くのいくつかのオルタナティブスペースがあるけど内容は微妙との事で
郊外のカーネギー美術館をレコメンドされた。バスでの行き方も教わる。 

まちなかのオルタナスペース2軒ほど回る。
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確かに微妙だけど規模はデカめ。
さてカーネギー美術館方面へ。バスで15分くらいか。

カーネギー工科大学(ウォーホルの出身大学)が近くにあるので
学生街っぽい街並だ。
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美術館はやはりデカい。

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ソル・ルウィットのウォールドローイングも、この一連の旅中で何度目撃したことか。
だいたいこんな感じで現代系の美術館のエントランス付近にでかでかと存在してて
良くも悪くもハイセンスな壁紙化しとる。

古典は弱め。近代はそこそこ見応えあり。
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ボナールに隠れがちなヴュイヤールもちょこちょこ気になる作品がある。

油断するとこんなのも…これもアメリカ初期のリアルか。
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こんなキワドいのが収蔵されちゃってるんだ。
自国の試行錯誤の上でのアメリカ絵画ってのはこういう展示見てるとわかるような。

以降だいぶ見慣れた光景。
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どうも最近のマイブームか、マザウェルばっか見ちゃう。


おもしろかったのはここからの現代ゾーンで、
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ジョン・カリンとエリザベス・ペイトンの間にトーマス・シュッテなど。
シュッテは好みじゃないからあんまピックアップしてないけど、
ヨーロッパでもかなりたくさん見た。

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杉戸洋の大きくて見応えのある作品も!

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この並びもヤベえ。左からトマ・アブツ、グロッチャン、
デ・カイザー、sergej jensen(セルジュ・ヤンセン?)。

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アブツの本物もようやく拝めたな。すっげー面倒くさそうな処理を割と丁寧に
工芸的に処理してる感じ。綿布の布地がわかる薄塗り部分が、
厚塗り部分と意識的に分かれてて、各々の色面やグラデーションが
その色と形で空間の矛盾を起こしてる。
サイズが小さいせいか図録とのギャップは思った程ではないにしろ、
塗ってる感、手仕事性を直接愛でられるサイズ、存在感。
隣には真っ赤で同じ放射構図つながりのグロッチャンだが
グロッチャンのほうが物質感や塗りの特殊テクがだいぶ強くてスペクタクル的。

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こっち側、デカイザーとヤンセンはもう少しささやかな存在感なので地味だ。
地味なままイケてる。アメリカまで来てこういうの見ると凄いヨーロッパの抽象!て感じがするのは
勝手な思い込みか。

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Vija Celmins ヴィヤ・セルミンズの星ペインティングも。

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これはクリストファー・ウール。ドリッピングでも硬質な表面か。
側面見ると、これは支持体は固めの木材だ。アルミやらキャンバスやら木材やら紙やら、
満遍なく試してるんだなあ。
…でもちょっとこれは微妙かな笑

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締めはマイク・ケリー。

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逆側のエントランスにもめっちゃデカいウール。
…などなど、いやあ思わずおおおと唸るラインナップだった。
絵画好きにはたまらんな。
ウールはどの現代系美術館に行ってもあるので食傷気味になってきたが。

駅の方までまたバスで戻る。
ピッツバーグに安いユースホステルを見つけられなかったので、
泊まらずにまたバスで移動する。せわしいな。
今度はフィラデルフィアに向かうんだけど、
事前に検索したら電車はちょうど良い時間のが無いので、またバス。
megabusってやつ。こっちはグレイハウンドより適当な感じ。
すべてネット上で手続きして、
専用のバスターミナルもないという格安都市間バスらしい。
大丈夫かなと不安になったが、サイトで指示された場所で待ってたら
ちゃんとバスが来て乗れた。日暮れ前に出発!
こちらもフリーwifiプラス電源までついてて素晴らしいなあ。
素晴らしいけど、なぜか途中の休憩所で3時間も動かず待たされたんだ。
理由は聞き取れなかった…。

そのせいで、フィラデルフィアに着いたのがなんと深夜1時半。
どうやらもう地下鉄も来てないし、
何回深夜の知らねえ街に放置されればいいんだよ…怖ええ。
仕方が無いので駅から恐る恐る宿まで30分以上歩く。寒いし遠いよ。
ただDCでの失敗を元に、
ちゃんと24時間フロントが空いてるホステルを取ったのでばっちりなんとかなった。

 

DC2日目。またモールへ。
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博物館前に、倒れたまま放置された屋台が。

今日はハーシュホーン美術館からスタート。
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円形の広い回廊状の展示スペースが特徴的。
企画はアイウェイウェイの個展。
去年はまだ軟禁されてたはずなのに、この規模の個展か。 
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まとまった展示を見るのは初めてだ。
実際背景について詳しくないので深い鑑賞ができたとは思えないけれど、
中国の形に木を掘ってる割と有名な作品から、大きなインスタレーション、
映像作品まで幅広く、空間認識とユーモアのセンスがある。
監視カメラの彫刻家などおもしろいが、
全体的には、造形だけ見ると、そつなくこなせる器用な優等生って感じがする。
全活動を通してこそ重要な作家だと思う。
後にちょっと調べたら、アメリカ時代の大学の先生がショーン・スカリーで
そっからジャスパージョーンズ、デュシャンと系統を学んでいったとのこと。
なるほどねえ。

上階の常設は絵画が多くてうれしい。
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不気味なウォーホルを黒いベルベットの支持体に描いてるシュナーベルの絵画や、

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マークグロッチャンの厚塗りストライプの絵画。これは見応えがある。

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次はスミソニアン航空博物館へ。
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飛行機とか宇宙船の実物展示。子供でもかなり楽しめそうだ。
説明など読んでるヒマもなく割り切って駆け足でザーッと見る。

ナショナルギャラリーを一瞬再訪する。昨日閉まっていたマティス部屋を見に行く。
昼の数時間しか入れないようになってる。
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巨大な切り絵作品が額無しで見られる喜び。
だからこの部屋だけ時間絞ってるんだろうな。 

自然史博物館も覗いてみる。

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動物剥製ゾーンは、やけに動きを強調した展示。

鉱石&宝石ゾーンに思いのほか長居。
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透明の物質ってそれだけで興味をそそるんだけどそれはまあ自分の作品が
そういう傾向にあるからでもあり。。。

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展示もすごい綺麗!

何よりダイヤモンドの反射光に思いがけず見とれてしまった。
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ティアラとかすげー。
絞って反射光だけ撮ってみる。
宝石なんて無縁の世界と思っていたが、学術的なものとして見せられると
一気にハマる。博物館おもれーな。

あと虫ゾーンがやべえ。タランチュラを見た。
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それとイモ虫と戯れるオシャレお姉さんとちょっと引いてるその彼氏な光景を見た。
このような類いの女の人は、妙に魅力的に映るのだった。 

モールの博物館群は入場無料なのですばらしい。
満喫して、駅の上階から発車してる深夜バスを待つ。

さすがに気温も下がって来て冬に戻ったな、寒い。
バス到着。grayhoundというメジャーなバスだ。
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バスの中ではなんとフリーwifiが飛んでいる。
しかしまた夜間の移動だと風景が見れない。
真っ暗だなあ。 

次の行き先は伊藤先生におすすめされたピッツバーグ。 

午前中に本来予約してたホステルに移動、
荷物を置いてナショナルギャラリーへ。
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そういえば映画「ハーブ&ドロシー」でたくさん映ってた美術館だったな。
 見覚えのある場所もちらほら。

通路にやたら植物が茂っている。
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まずは古典美術巡り。
またしてもまたしてもビザンチン美術からの美術史の流れを
順に追える展示だ。
海を超えてもしっかり勉強できるレベルでなんでも持ってますね… 
それにここにもダビンチ作の小さな肖像画。
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背景の植物がいい。 

ヨーロッパ各地と違って、各国均等な分量で展開されてる流れで、バランスが良い。
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ルーベンス、ライオンを描く。

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ルーブルで見れなかったシャルダンもそこそこまとまってる。

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またフェルメーる。これはタッチを消してボカしを効かせてる。

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アングル、こんな画中画…というか
システィーナ礼拝堂の中のローマ教皇ってな作品も描いているのか。

当然1800年代から突然妙なアメリカブースが出現する。
畏怖の念があんましないようなロードオブザリング的な広大ロマン風景画とか、
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すでにちょっとアメリカンオリジナルなエレメントを感じる。

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印象派ゾーンでは、いつものメンツに紛れてメアリー・カサットがたくさんある。
良作が多いです。

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ピカソはこういう傑作をきっちり残してるから参る。

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ルドンはいつもこっそり気に入る。

地下通路で繋がってる別館は現代美術。
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チャッククロース細部。

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お、見た事ある夫妻が…

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おお〜スティルがどーんとあると、アメリカに来たなあって感じがします。 

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後期ポロックも、良い。

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これ小振りのマザウェル。やっぱマザウェル、かなりイイ。

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HOWARD HODGKIN 初見。イギリスの画家のようだ。

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撮影不可ゾーンの一番上の階のバーネットニューマンの企画、
晩年のシリーズ。これもとても良い。 

20世紀絵画のラインナップはやっぱヨーロッパとだいぶ違うな。
こっちの流れで勉強してきたので、しっくりくる。
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新館の建築、この感じはなんか知ってると思ったらは
ルーブルガラスのピラミッドとか、ドーハのイスラム美術館と同じ
イオ・ミン・ペイだって。

美術館を出てナショナルモール、どれ記念塔のふもとまで歩いてみるけれど
歩いてもなかなか近づかん…どれもこれも建物がデカいので距離感が狂ってるようだ。
結構遠い!!
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ホワイトハウスも遠目に眺めて、戻って来たらヘトヘトだ。
それにしても、どうしちゃったのというくらい暖かい。
なんと10℃以上あるようだ。春かと思うわ。汗だく。

夜は、大学の研修旅行でアメリカ滞在時期がかぶってる
(というかこっちがある程度合わせたんだけど)、
伊藤先生ご夫妻と久々に再会。旅行会社のM吉さんとも8年ぶりくらいに再会(笑) 
皆さんフライト直後でかなりお疲れのようだったけど、
いやあアメリカで顔合わせっつーのも不思議なもんだなあ。
OBOGをイジろうと思ったら近い年代のOBOGは居なかった…
自分よりかなり若い世代の見覚えのある子達3人のみを覚えた。
顔と作品がようやく一致した。 

今度はアメリカ東海岸視察だ。
オフシーズンのせいか、airberlinの航空券はなんと往復約450ユーロ。
円安になってきてても50000円以下ってとこだ。
日本からNYに行くのと比べたら半額くらいだし飛行時間も8時間。

NYの知合い作家さんも増えたし、
今回はフィラデルフィアとワシントンDCまで足を伸ばして
デュシャン巡礼もしてしまおう!
と年明けすぐに勢いで決めたのだった。

寝坊もせずに、ベルリン入りした時以来久々のテーゲル空港到着。
余裕をもって到着したが、窓口を間違えて並び30分程無駄にする。
そして正しい窓口に行ったら今度は、
「書類が足りないのでこれでは飛行機に乗れませんね」と言われた。
え??

わけがわからないので必死に質問すると、英語の説明が複雑になってきて
頭が混乱ひ汗。何度も聞き返してなんとかわかったことは、
ESTAが無いとアメリカに行けないということ。

ESTA?なにそれおいしいの?

どうもアメリカに入国するには観光ビザの代わりになるような
ESTAという証明をインターネットで取る必要があるらしい(15ユーロかかる)。
そしてそれを知らない僕の様なアホの為に、
空港内にESTAを発行できる窓口があると教えてもらう。
しかしさっき無駄にタイムロスしたせいでゲートクローズ時間が迫る。

空港内を超ダッシュでその窓口を探し、4回程窓口を間違えながらなんとか見つけるも
係のおっさんが英語全く話せないという新たなピンチに見舞われる。
 
イッヒ メヒテ ESTA!!!

と多分間違ってるけど多分通じそうなドイツ語を披露し、
おっさんも急いでくれる。が、なかなか何言ってるかわからん。
必死にボディランゲージと指差し連発してなんとかESTAの発行に成功。

猛ダッシュで窓口に戻ったけれど、結局10分オーバー!!
めっちゃ頼んだけれど完全にゲートクローズしたとのこと。
…ス、ストックホルムに次いで、またおれは飛行機に乗れないのか
しかし今回は損害のスケールが違うぞ…一体どうすれば。

頭真っ白になってると窓口のおばさんが
「airberlinではどうすることもできないけれど、
この便はデュッセルドルフで乗り換えの便だから、
デュッセルまでの飛行機が他の会社であればまだ間に合うかもしれない。
あっちのルフトハンザならあるかもよ。」
と奇跡の助言をくれた。こういうときは英語がすんなり耳に入って来るから不思議だよ。

ダンケダンケダンケシェーン!
超絶感謝をして、ルフトハンザの窓口へ行って汗だく半ベソで事情を説明すると
「あなたはラッキーですね。ちょうどぴったりの便がありますよ」だって!!
ダンケダンケダンケシェーン!!!!!
当日券の250ユーロ(痛い)を購入し、
無事にデュッセルで乗り換えることができたのでした。
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airberlinの機体!!!!泣けるわ!!!

ドイツの人の優しさに僕は感動した。
こんなアホな日本人に親切に教えてくれるんだねえ…。
いやあしかしハナからアメリカは敷居が高いわ。
機内でも入国の為のチェックシートを書かされたし。

ところで機内ではダークナイトライジングを見た。
映画が見れる程の英語力は到底ついてないのだけど、
なんとなく話の流れはわかった。
なぜ変な井戸の中で修行が始まるのかは解らなかったが、
きっと言葉がわかっても突っ込み所なんだろうなと思って最後までみた。
ダークナイトには到底及ばないが、
結局いつものハリウッドノリの集合で満足した。

さて奇跡的に到着できた6年ぶりのJFK空港に思わず笑みが…。
ボロい地下鉄も懐かしい。
うおーニューヨークのニオイがする。
マンハッタンのチャイナタウンから、
かずえさんに教えてもらったチャイナバスっていう格安バスに乗る。
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乗り場。
まずはそのままワシントンD.Cへ向かう。約4時間半で20ユーロ。安い! 
NYから出るってことにまずちょっと興奮、
遠ざかる摩天楼をバスの窓から眺める。

せっかくの長距離だが、NYを離れると景色も真っ暗。
何も見えなくて味気ない。昼だとどんな光景なのだろう。
そして特に問題もなくDCに着いたのが深夜11時。
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降り場もまたチャイナタウン。

ここから歩いて15分くらい、予約してたホステルに行ってみると、
おいおい!!10時半ですでにフロント終了してて、中に入れないじゃないか…!
 
なんで今日はこんなにピンチが続くんだ(理由は自分が馬鹿なことのみ…) 
仕方がないので深夜の街を徘徊しホステル探し…
深夜ウロウロしてて大丈夫なのか!?
…だめだ見つからねえっす。
その辺のホテルだと一泊200ドルとかだった〜無理です。
絶望しかけたその時、眼前にマクドナルドがぁー救いのMマーク!

腹ごしらえでセットを頼み、ドリンクを
「コカ・コーラ プリーズ!」と全力の発音でお願いするも
は?という顔される。コカコーラが通じねえ。完全に自信喪失させられた。
あ、「コーク」って言えばまだ通じるのね…。
横暴な態度の店員がアメリカっぽい。

店内で飛んでるフリーwifiを捕まえて、
無事に別のホステル発見。さらに歩いて15分で到着、ステイすることができた!!
つ、疲れた…
まだ何も始まってないのにアメリカは1日目から攻撃力高い。

朝一の特急に乗ってアムスからオランダ北部の街レーワルデン(Leeuwarden)へ。

レーワルデンにあるオランダの司法省のエントランスホールに先輩のけんさんこと谷口顕一郎さんの彫刻がある。けんさんのサイトのトップ画像になってるのがその作品だ。
けんさんは前日にレーワルデンに入っていて、現地で再会することに。

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朝やけを眺めながら電車で移動。
ところが雪が降って特急が遅れてしまい、
途中の乗り換えがうまく行かず1時間以上遅れてしまった。
こりゃあピンチで困ったなと思ってたら、
なんとオランダの特急は車内でフリーwifiが使える事が判明。こりゃすげえ。
メールで伝えてなんとかレーワルデン駅前で再会することができた。
もー迷惑かけてばかりです… 

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これがオランダの司法省。建築がカッコいい!
司法省は厳重セキュリティで一般の人は入れないので、
作家さんが事前にアポをとって一緒に中に入るようになっている。
なので今回はご家族のみなさんに見せるタイミングにオジャマして見せてもらうことに。 
 
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幅10mの巨大彫刻がモダンな建築の中央に堂々と浮いている姿を見て、
思わず口が開きっぱなし。
この彫刻は過去に何度か移転をした司法省の建物跡地からの
凹みをトレースして、それを元に彫刻化してるとのこと。
一般の人が見られないのは勿体ないけれど、
どの階のデスクからもガラス越しにこの黄色い彫刻が見える様な建物の構造になっていて、
ここで働く人達にとっての大事なシンボルになってるんだろうなあと思った。
写真撮影基本NGで、
お願いして数枚撮らせてもらったけれど絶対人を写さないように厳重注意を受けた。
そういう張りつめた空気の中に浮かぶ作品の存在感。

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壁には各パーツの採取マップ。

完成まで3年もかかった大きなプロジェクトだそうな。
このような大きな規模でかつしっかりとした完成作品になっていくまでに
多くの人が関わって、多くのお金が動いて、
総合的な作家力がかなり必要なのは間違いなくて
今の自分からは到底想像できないスケールだった。

大きく年齢も離れていなくて昔から知っている自分の大学の先輩が、
札幌での学生期から一歩一歩経験を積み重ねて、海外に渡って、
この目の前の素晴らしい作品を完成させたっていう事実を体感するのは、
それはもう特別な経験だった。

無理してもらっちゃったけど見る事が出来て本当に良かった。

じーんとしながら、
電車でレーワルデンからベルリンに戻る。一度乗り換えしながら約6時間。

2週間ぶりのベルリンのこの感じ、なんか落ち着くわー。
ファッキン アレス!!などと叫んでる迷彩服のバカなおっさん達を冷笑する乗客達、
な夜の地下鉄。

朝起きると、ドラッグ兄ちゃんは普通の状態に戻っていた。
「Sorry,昨日の記憶があんまりないんだけど騒いでしまったよね…きみ名前なんだっけ? 」
とか言ってる。 ユーはドラッグとか風俗とかやらんのか?と聞いて来たけど、やらんよ!!
アムスって…。 

さてまずは第一目的の国立美術館へ。
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裏側。これまた改装中で2013年4月にグランドオープンとのこと、惜しい。
カウントダウンの電光掲示板らしきものが。

横の別館で簡易的なマスターピース展示をやってる。
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こういうのが並んでると海洋国家の美術館って感じがして良いなあ。

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レンブラントの、怪しい絵の前で何を学んでいるのだ。

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ここにはフェルメールの「牛乳を注ぐ女」とレンブラントの「夜警」がある。
これまたどちらも素晴らしい。

牛乳女はめちゃ小さい画面内にやはり完璧に計算されたピカピカの画面。
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フェルメールも振り返ればもうけっこうな数を見たけど、

デルフト眺望と牛乳女のピカピカ感は群を抜いてる。
寄って見た時の描写スケールがたまらん。
意外に荒い作品もチラホラあるんだよな。 

夜警はデかい!
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本当はもっとデカかったらしいけど、いつかの展示移動の時に
部屋に納まらなかったので左側をカットしてしまったとのこと。

カットする前の夜警を模写した小さい絵画が同室に並んでいて、
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確かにそっちのほうが
構図はゆったり余裕があるように見えてくる。

この大きさで視界がスッポリ絵に包まれる上に、
真ん中の人物2人がそれぞれ手と槍をこちらに突き出す様な絵なので
さながら3D映画のような感覚に陥る。
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手前に迫るこの描写はタイヘンだろう。
描写の実験を画題の中に紛れ込ませてるのは古典絵画のおもしろい点だ。

説明書きも相当丁寧に書かれていて、
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~年に客が絵を切り刻んで、ここが修復した跡だみたいな説明まで書かれている。


近くのアムステルダム市立近代美術館(Stedelijk Museum Amsterdam) へ。
ロッテルダム、デンハーグと近代以降のコレクションに
オランダの底力みたいな妙な迫力を感じていたが、
さらにここはデカくて質がめちゃ高い。
どうやらこっちは改装が終わったばっかりで新しいみたいだ。
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裏から見たら古い建築なのに表に回るとでーんと現代的な宇宙船チックな見栄え。

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入り口の雰囲気もジャッドのカラフルな作品を中心においてスタイリッシュな展示。
まずお決まりの近代美術の流れを順に回る。
もちろんデ・ステイルは幅広く、ってな感じだ。
キリが無いので割愛するが、マレーヴィッチのドローイングがズラリと並んだ部屋があり、
その作品群がおもしろく
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チラ見せ。

デザインの展示はやはりここでも充実。
余裕が無いので駆け足モード、この椅子欲しいわ〜。
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2階が戦後現代美術コレクションと企画展、
まず戦後コレクションが素晴らしい!
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ケリー

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ライマン

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マーデン

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ガストン

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Daan van Golden初めて見た。良い。

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マチスの切り絵も

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デクーニングが充実してたり。オランダ出身なんだもんなあ 。

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ニューマンのコレクション、装飾的。

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ジャスパー多めに撮っちゃった。
1枚の作品の中に意識的な行為が詰まってて飽きない。

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突然、金山明の作品が!

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キーンホルツ、ルイジアナ美術館に続き2度目。うまく撮れんが異彩放ってる。

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工藤哲巳も。

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いや〜、揃ってる。ヤバいわ。

さらに企画展のマイクケリーがめちゃくちゃおもしろい。
後期作品をメインにした展示。
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わけわかんなさの中に一貫したファンタジアが存在しているような…これは一体なんだ。

子供の劇の映像とそれに合わせたセットのインスタレーションも
正直何がなんやらなのだがどうも引っかかる。
ヨコトリで見た都市フィギュアみたいなシリーズも、
あの時はまるでピンと来なかったが妙に腑に落ちる。
いや、全然困惑したままなんだけども。
都市部分とその他の繋がりに危なさを感じる。
が大きなボンベに繋がったガラス玉に囲まれていたり、
ごつごつした岩みたいなものの上にボワッと存在していたり。

映像作品は先日デュッセルでも見たあの映像の他に初期作品も見る事ができた。
通して相当ヤバいのだが持続して気になってしまう。 


トラムで今度は中央駅前のホステルに移動。
小さな運河とレンガの目立つ狭い街並をトラムで抜ける感じに
テンションがあがる。また来るときはもう少しゆっくり歩いてみたいもんだ。


駅前は危ない雰囲気が強い。
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「コーヒーショップ」(ドラッグ屋さん)がいたるところに普通にあって
変なパイプとか売ってるし、とても入れる雰囲気ではない。

また「飾り窓」(風俗)ゾーンも近かったのでどれせっかくなので社会科見学してみたら、
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赤ランプの付いた怪しいアパートの部屋でカーテンが開いていて、
ブラックライトで光る下着を身に着けた黒人のブリッブリのお姉さんが
部屋の中から体をうねらせて誘惑してきた。
そういう部屋が並んでいて、20mくらい歩いたら恐ろしくなってきて逃げ帰って来た。 

これらが朝の兄ちゃんの世界なわけだな。
アムス…クレイジーな街だ!! 

デンハーグの朝。
ホステルの近くからトラムに乗ったら違う方向に行っちゃったので
すぐに降りて仕方なく中央駅まで20分程歩く。
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駅周辺の高層ビル。この街もフランクフルトのように金融街っぽい。

デン・ハーグには有名なマウリッツハイス美術館があるけれど、
現在改装中なので入れない。
改装期間中なのでここの目玉作品のフェルメール「真珠の耳飾りの少女」が
日本に貸し出されたりもしてて、残念ながら今は見れない。

ただ、もう1つフェルメール代表作「デルフトの眺望」は
デン・ハーグ市立美術館(Gemeentemuseum Den Haag)に
移動して展示されているとのことで
それを見に来たのだ。 
中央駅前からトラムに乗ってさらに20分程。
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到着。街の中心から少し離れたところにあった。

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チケットがなんとなくシャレとる…が、
モンドリアンの前で子が首を傾げてジャンプって
意味はわからない。

マウリッツハイス展示ゾーンだけは撮影不可。
レンブラントの解剖の絵もあってこれも相当凄かったし、
やはり目的のデルフトの眺望は素晴らしい!!
まずフェルメールにしては思ったよりも画面が大きい。
ガラス額に入ってるのだけど、
フェルメールだからなのか低反射ガラスで鑑賞もしやすい。

しかし、なんとまあ、絵肌の輝いていること…。
絵具を塗るというより優れた工芸作品のように小筆で絵具を置いていったような建物の描写は
感動的だ。物と物のキワのボヤけた色彩もたまらんし、空の色雲の面積、川の描写、
それぞれ塗りも変えて超テクニカル。

同じ部屋の別作家の細密な風景画も十分テクニカルなんだけれど、何が違うのか…
色も構図も絵具に対する愛情というのか、熱意が違う気がするな。
これだけカッチリ描ききっても、
そのカッチリさからはみ出る魅力を保ってる風景画、
いやー感動。

そしてこの美術館、近代以降のコレクションが中心で、その質が高い。
オランダもまたいいもん持ってるんだな〜。
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ルイーズブルジョワや、

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ブルース・ナウマンとベーコンを組み合わせた展示。
ベーコンは僕全然好きじゃないけど、ナウマンのせいでちょっと良く見える?
しかしナウマンもいろんな美術館でだいたい1つは見かける常連。
しかもだいたい良い作品、打率の高さ凄い。
この作品、左に見える赤いボタンを押すと、
メリーゴーラウンドのようにグルグル回る。

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PAEL THEK、う、ケルンのコロンバ美術館でグロい作品作ってた作家か。
めちゃくちゃ苦手だが、こんな絵画も描いてるんだな。

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グロいゾーンもまとめて続く。

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サスナルの小ちゃいけど気になる絵画。

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ライリーの丸使ったシリーズは、自分の作風もあり参考になる。
計算されたパターンの繰り返しによって画面に現れてくる、
ひっかかりのあるイリュージョン。

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ルウィットのウォールドローイングもいくつか。
これはマットな平塗りのパターン。

そしてさすが、デ・スタイルのゴリ押しゾーンがあるし
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何よりモンドリアンのコレクションが凄い充実。
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初期風景画もやっぱり画面内の構築がしっかり考えられているし
重ね塗りの色彩豊かでザクザク筆跡の残る感じ。
普通に、うまいしカッコいい。

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これもモンドリアン…これはどういうことだ。

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遺作の「ビクトリーブギウギ」!チケットで子が飛んでたのは、
展示位置が高かったからなのか笑

色面が貼り絵状になっていて、
手作業的な感覚がかなりダイレクトに残っている。
赤青黄に黒グレーも紙具合によって色彩の揺れが激しい。

加えて、紙の色違いのクリーム色っぽい貼りも散見される。
これは未完の証なんだろうか。

しかし、ヨーロッパで見るモンドリアンの多くはガラスに入ってる。
額装にも相当気を遣っていたである作家なはずなのに、
ガラス額装はベストなのだろうか?
NYのMOMAではちゃんと剥き出しで見れたはずだが。

予想外のボリュームに、バテた。

中央駅まで、またトラムで戻る。
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ここの駅も改装中でかなりワークインプログレスな雰囲気。
ファストフード屋でポメスを買い食い、今度はアムステルダムへ移動。

途中オランダらしいあの風車や広ーい川などが見えて、
オランダ!!て感じになってきた。(写真撮り忘れる)

夕方アムス駅に到着して、外にでるとこれまた独特の雰囲気…
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じっくり街並を味わう間もなくメトロに乗る。
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地下鉄の中には妙な絵が描いてある。

猛ダッシュでレンブラントの家へ。
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モチーフ部屋。


それとエルミタージュ美術館アムステルダムでゴッホを見る。
ゴッホ美術館もまた改装中なので作品がこっちに移動してるとのこと 。
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全館撮影不可。
トータルで1時間ちょいしか無かったのでホント駆け足で無念だった。
それにしてもゴッホの作品ばかりに囲まれると色感覚がヘンになりそう。
ちゃんとゴッホ美術館の改装後を改めて見に来たいものです。

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美術館近くの光景。絵に描いた様なオランダっぽさ。

夜、けんさんと待ち合わせ。
今回の移動ラストは、ここからさらに北のレーウワルデンで
けんさんの巨大パブリックワークを見に行くことで、
ちょうど今夜はお互いアムスに居るので夕食しましょうという話に。

しかし待ち合わせの電話中にプリペイドの残高が切れるという超絶アホをやらかしてしまい
冷や汗を書いたが、少しだけ話した内容で中央駅の入り口でダメもとで待っていたら
けんさんに見つけて貰えた奇跡のテレパシー!
そしてご家族のみなさんに夕食をごちそうになってしまう。 
けんさんの甥っ子君にちょっかい出して遊ぶ。

皆さんお酒が強くて自分はヘロヘロ。
吐き気を我慢しながらトラムに乗って、
国立美術館近くのホステル泊。
アムスは美術館が駅からちょっと距離あるのだね。

しかしさすがアムスだ。
ドラッグを決めた同室のニイちゃんがめちゃハイテンションで会話してきた。

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