やまもとのグレーゾーン

札幌の絵描き山本雄基のきまぐれ雑感と日常。

2010年08月


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山本雄基 個展『プレインバブル』

2010.9.11(sat)~25(sat)
13:00~23:00
注意:日祝日は休館日です!
入場無料

オープニングパーティ9.11(sat) 19:30~
アーティストトーク 9.18(sat)20:00~

+急遽ポーランド報告会!! 9.18(sat)18:00~
アーティストトークの前に行います。

CAI02 raum1
北海道札幌市中央区大通り西5丁目昭和ビルB2
(地下鉄大通駅1番出口より直通)
tel 011-802-6438 fax 011-802-6538
主催:CAI現代芸術研究所



…気付いたら展覧会2週間前なので、焦って告知です。

約4年半ぶりの個展です。
20代最後の年に、パーッとやります。

今回は、ここ2年くらいで地道に貯めていた作品を発表します。
去年札幌駅に展示した作品も出しちゃおうかなという予定です。これが一番昔の作品になります。
コンペで受賞した絵も出します。
もちろん新作も出します。
大小15~20作品くらいになりそうな予感です。

テーマは札駅の時に掲げたものとほぼ変わっていません。以下はその時に掲げたコンセプト文です。

 『日常は、目に見える・簡単に感じられることと、目に見えない・感じにくいことが複雑に絡み合い形成されているように思います。知らないうちに、みえることにばかり多くの意識を向けていたりみえないことが大きく動いていたり。

また、うそやほんと、リアルなこととそうではないことなどが当たり前のように交ざり合い、確かな判断や選択ができているのすらわからない気がします。僕はそのように感じる状況をそれなりに受け入れ、そこから肯定的な何かを見つけるために、「みえないみえる」シリーズを制作しています。

 「みえないみえる」では、自分を取り巻く普遍的な世界を表そうとしています。画面の中で、日常で感じた要素をカラフルなまると透明のまるに置きかえ、重層的な透明層の中に包み交錯させて不思議な空間を作り上げます。

何を見ているのかわからなくなってくるような不安さと、色彩と交錯のリズムの心地よさが同時に訪れるような感覚を狙い、それを絵画として成り立たせるせることで自分にとって現実的な「モノ」になり、確かな存在感を強調させます。』


…最近はさらにまるの組み合わせ方にバリエーションが出て来て、画面が複雑になったり単純になったりしてきました。

今回の個展のタイトル『プレインバブル』ですが、

plain
→明らかな, 明白な;平易

bubble
→泡、(泡のように)確実性[実体, 恒久性]のないもの;幻想, 妄想.

てな感じで、明白かつ確実じゃないもの、みたいな意味のつもりでそんなタイトルにしてみました。
plainて平らという意味もあるので平面作品にはちょうどいいなと。


現在制作中の中型作品も6層目まで来てます。さあどんな展示になるやら。自分の近作を並べて一気に見るのはホントに久しぶりなので、プレッシャーとともにキモチが高揚してます。

DMもそろそろ印刷が上がって来ますが、今回のデザインはなんと大学の大先輩、中尾峰さんにお願いしました。
以前中尾さんが自身の個展の時に作ったDMがあまりにカッコ良くて、いつかお願いできたらいいなと思っていたのですが、今回実現して感涙!宛名面の画像はここでは出し惜しみ。
とてもとても気に入っています。

オープニングパーティも入場無料です。
みなさん是非お越し下さいませ。

これでポーランド記もようやくラストまできました。
クラコフ3日目。

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朝から旧市街の南端にあるヴァヴェル城へ。


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城は想像以上に広く、ここだけで一日必要なんじゃないかというほど見所がたくさんある。ここは大聖堂の入り口。中は撮影禁止だったけど、豪華で壮大な装飾やらタペストリーやら宗教画やらに圧倒される。

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城から見たクラコフ市街。


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塔を昇ったらこんなデカい鐘がある。


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城の中の広場もデカい。ここは博物館があったけど、人が大勢並んでいて残念ながら時間の都合で中を見る事ができなかった。

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城の敷地。


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川の対岸から見たヴァヴェル城。このくらい離れないと全体像がわからんデカさ。

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さて、その対岸にはこんな建物が。「マンガ」というこの場所は、日本美術研究センター。マンガという名前なのでマンガが紹介されてるのを期待したが、違った!
あくまで建物の名前が「マンガ」で、日本美術コレクターのコレクションを展示する美術館でした。企画展で沢山の日本刀がきっちりと展示されていて、妙なキモチになりました。しかし日本刀はカッコ良い!
ちなみに建築は磯崎新。
城巡りと暑さでバテたので中のカフェでゆっくり川を眺めました。


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そんなこんなでワルシャワに戻る時間が近づいてくる。
大黒さんと中央広場でランチを食べて、クラコフ駅でお別れをする。大黒さんはこの後チェコのプラハに向かった。
がっちり握手をした瞬間に、空に稲妻が走ってなんとも劇的な別れだった。ドラクエ5のレヌール城か!!


そんなこんなでワルシャワに戻りユースホステルに一泊した後、朝一で空港に向かいポーランドを後にしたのでした。

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帰りもモスクワ経由。連日ニュースになっていたロシアの猛暑だったが、ホントに暑い。しかも、空気がスモーク炊いたみたいになってて飛行機飛ぶのか不安になった。

荷物検査の時に止められたので何かと思えば、ヴェリチカで買った塩が怪しまれた笑 

これは何?みたいなニュアンスで聞かれたので、
「ソルト!ソルト!」「この袋に入ってるのは?」「ソルト!オールソルト!」こんなに必死に塩塩言って、僕は何でこんなに塩を買ったんだ…と冷静になる。
しまいには実際塩の容器までチェックされて、ガリッガリッってねじるもんだから、塩がパラパラでてくるんだもの。
ボディランゲージで、おかずに塩を振る仕草までやりました。どうやら通じたようで、最後は呆れ笑いでグッバイセンキュウ。

そして空港内でまたしても今度はロシアのティーンネイジャーに話しかけられる。日本人だと言ったら、「I like ナルト!ブリーチ!」
…アニメのグローバル展開ハンバないっすわ。

空港で5時間ほど待ち、飛行機は10時間ほどで成田へ。
成田から東京までの移動料金が高くて、日本って、金かかるね…て思った。せっかく東京経由なので、一つくらい展覧会見ちゃえ!というノリで、新美術館へ向かう。すんごい暑くて参った。セミがうるさすぎ。日本語が聞こえすぎて変な感じ。

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オルセー展30分待ち。人ごみでいきなり日本洗礼を浴びた。
時差ボケでフラフラになりながらの鑑賞だったが、セザンヌの静物やゴッホの星の絵にやたら感動した。

ポーランドで日本刀を見て、日本で西洋画を見る。

隣のマン・レイも見た。見た事ない晩年のカラーポジフィルムの作品などがおもしろい展示だった。

…そんなこんなで無事に札幌に帰って来たのでした。もう今日は26日なので、帰って来てから早3週間も経ってしまいました。
帰って来てからは、何度か飲み会もありましたが基本的に休むヒマ無く制作三昧。いよいよ個展が迫っているのです。9月11日〜CAI02でやります。次の更新で、個展詳細アップします。

以上、ポーランドはこんな感じでした!

そして、このレジデンス報告会もやります!9月18日(土)18時より、僕の個展の中日に合わせて個展会場でやりますので是非おこしくださーい。

クラコフ2日目。
行こうか迷っていたアウシュビッツ。(ちなみにアウシュビッツはドイツ語なので、ポーランド語ではオシフェンチム/O���wi���cimと言います。バス停の行き先もオシフェンチムです。)

 クラコフ滞在期間が予定より長く取れたので、思い切って行く事に決めた。アウシュビッツはクラコフからバスで一時間半くらいのところにあります。駅のバスターミナルに行けばなんとかなるだろうというノリで向かい、相変わらず人に聞きまくって、バスチケットを買う。すると、

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またミニバスかい!!ターミナルにも現れるのか。昨日は適当な公園みたいな広場が乗り場だったのに。とにかくこんなのがミニバスです。


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ミニバスは、トバしすぎ。100km/hくらいは出てたと思う。


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着いた。観光バスと観光客でいっぱい。そしてすんごい晴れてる。

ここもツアーチケットを買わなければならず、英語ツアー。さすがに有名な場所なせいか、日本人がチラホラいた。


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柵に囲まれた広い敷地には、バラックが並んでいる。

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バラックの中は博物館になっていて、いろいろ展示されているわけだけど、この内容が当然ツラい。下の写真はジオラマですが、建物の中に死体が山積みになっている…

写真展示では、番号を入れ墨された人たちが実験台にされていたり、ガリガリの子供が並ばされてたり、痛々しい。写真はリアリティありすぎる。

驚いた展示が、収容された人たちから略奪したものの展示。
なんだか、昔の川俣正の作品のようにモノが積み上げられてるんですが、
見せてる物量が半端じゃなくて、鳥肌が。
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毒ガスの缶。

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この山になってるのは髪の毛。
人の髪で布とか作ってたっていう話は聞いてたが、こんな量で見せられると愕然とする。三つ編みがたくさんあるのに泣けてくる。

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メガネ、義足、靴…他にも日用品やカバン等、とにかく積んで見せて来た。展示室が整備されていることもあり、これらの展示物が本物なのか何なのか頭がクラクラしてよくわからなくなってきたけど、これだけの物量が集まっちゃうほどの人が、人として扱われなかった現実がのしかかってくる。

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死の壁、銃殺の現場。この地下には毒殺実験の独房などもありました。

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ガス室。妙に整備されていたので、変な感じがした。
中がコンクリートの打ちっぱなしになっており、
あれ、今度個展をするギャラリーに似てるぞ。。


ツアーは続き、3km先にあるビルケナウ収容所にバスで移動。展示内容と暑さでヤラれたのに、ビルケナウに着いて愕然。
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ひ、広すぎる…限界!!ガイドさんは休み無しで説明までしていた。すげえ。
バラックがズラーっと並んでいて、半分以上はは撤去された後で煙突のみ残っていた。

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バラックの中には粗末なベッドやトイレ。

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証拠隠滅のために爆破したガス室の跡地だそうです。

しかしこう畳み掛けるように残忍さを食らうと、
人がやっちゃいけないことのラインが、どっかからプチって切れちゃって際限ない残酷さが当たり前になっちゃうっていう、そういうマヒの機能が人の中にプログラムされてる事実が怖ろしいと思いました。人だと思わなくなっちゃうのか。人だと思ってても、愛や慈悲のキモチって完全にゼロにできちゃうのか。自分も同じ、人なので、同じ機能が備わっていることでしょう。そんな自覚をした上で、それでも同じ過ちは犯すまい、と思えるようになる為の展示だったのではないかな。


あまりにヘトヘトでズッシリしてボーッっとしたので、飲み物でも飲みますかーって同じツアーにいた日本人2名と少しお話した。
 そのうちの一人が、美術やってる人だった笑 今回は偶然ビジュツ人に出会う確率高いなあ。九州で活動されている方で、コンペの副賞でヨーロッパ旅行に来れたとのこと。盛り上がった。

帰りはその方達に教えてもらい、ミニバスではないちゃんとしたバスでクラコフに帰って来れた。夜は、一日差でクラコフ入りした大黒さんと再会、オープンカフェでまたゆったり。

次は、クラコフのお城などを簡単に紹介して日本帰国へ。

さて、クラコフ編行きましょう。

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さっそく観光名所の旧市街に突入。入り口のかわいい門。
クラコフは古い街並が破壊されずに現存している、日本で言う京都のような場所で、旧市街地区が世界遺産です。


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すぐに、こんな風景。どこから集めて来たのか、絵画がズラリ。けっこう上手いのもあったり。

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なるほど、横にあるのがこのチャストリスキ美術館だった。今は改装中で中には入れない。ワルシャワで見たダビンチの絵は本来この美術館のモノで、改装期間だけ場所を移してるみたい。


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人がたくさん!!ヨーロッパでは人気のある観光地らしいです。風景は当然すばらしい。


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路地の演奏者たち。たくさんいた。


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中央広場がめっちゃくちゃ広い!!ワルシャワの旧市街の広場の5倍くらい?スタリソンチの広場の20倍くらい!?というくらい広い。後ろのでっかい建物は教会。


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とりあえずサラリと雰囲気を堪能し、一旦ユースホステルに戻る。部屋はこんな感じでけっこう清潔。

この日は郊外のヴェリチカ岩塩採掘坑に向かう。ホステルの美人お姉さんに行き方を聞いて出発。駅前からでてるミニバスっていう、ワゴン車のようなバスに不安ながら乗り込み、走る事20分…

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ここが、ヴェリチカ岩塩採掘坑。外観はけっこう地味!
ガイドブックによると、700年以上の歴史を誇る地底岩塩採掘坑で、世界遺産だそうな。
必ずツアーじゃなきゃ入れないので、英語のツアーに申し込む。同じツアーになった若いスウェーデン人達にからまれた。自分は日本人だと言うと、「おお、金持ち!!」だって!ノーノー!プアー!って連呼しておいた。

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中に入ると、小さなドアから入場で、いきなり延々と続く木製の階段を降りる。びっくりするほど延々と続いた。

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中の様子。こんな感じでごつごつした通路を歩きながら下っていく。途中途中で、なぜか岩塩で作られたモニュメントが…写真はコペルニクス。

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暗いからブレブレですが、ここなんかほら塩っぽいでしょ!


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目玉スポットは、地下101mまで潜ったところにあるこの広い礼拝堂。なんでもかんでも岩塩です。最後の晩餐のレリーフも、祭壇も、シャンデリアの装飾も、岩塩です。


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途中でなぜかギャラリーが。ワカモノの彫刻展をやってた。レストランや土産屋も洞窟内にある。僕はなぜか、おみやげには、塩がいい!と思ってしまい(観光地ハイ)、塩をたくさん買ったら、意外と重いのな。。。


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帰りは、恐怖のエレベーターで上まで昇る。狭いしまっくらだし、揺れるし落ちそうだし、どっかのアトラクションかと思う。

エレベーター係の美人お姉さんに帰り方を聞き、スウェーデン人に別れを告げてクラコフに戻ろうとするが、ミニバスの途中乗車の方法がわからない。バス停で待っていても素通りされるので、人に聞いたら手を挙げてタクシーのようにつかまえるのだった。

そして駅まで行ってくれるのかと思ったら、途中で終点になってしまったようで変なトコで降ろされた!ミニバス、わからん!!

しかし歩いてたら旧市街に戻れたので、日が暮れるまでウロウロする。
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どんな街にいっても、どっかこっか工事してます。

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クラコフには、お城がある。ここが入り口だけどもう閉館してたので、後日にまわす。

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日も暮れて歩き疲れたので、単独オープンカフェデビュー。ビールとステーキで満足。

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夜になっても人がたくさんいます。クラコフはにぎやかだ。

次回、アウシュビッツの巻!!やっと終わりが見えてきたー

 展覧会が終わって宴会も遅くまでみんなで満喫した次の日、作家の半数以上が自分の国に帰っていった。Ben&Guyは、作品のモチーフに使った恐竜のおもちゃを僕らにプレゼントしてくれた。代わりに日本のポップカルチャー的データをたくさんあげた。なんかとっても寂しい!

 いつもはしゃいでる時に写真を撮り忘れていたせいで、このブログでは作家とのからみがうまく伝えられてないけれど、本当に毎日とても仲良くしてました。パコやアントニオは英語話せてないのに平気で自国語とボディランゲージでガンガン攻めてきたし、クーさんに中国での自分の超巨大アトリエを写真で見せてもらったり、2週間毎日ご飯を共にしてたんだもの、そら寂しいわな。

 僕ら日本組は、展覧会が始まって一段落してから皆でいろんなところを見て回る予定で解散は少し後と聞いていたので、突然取り残されたさびしい人たちになってしまった。。。マリアンも「今年は皆帰るの早いなあ…」と少し寂しそう。

 そんなわけで、ギャラリーでお客さんと少し話したり、街を散歩したり、最後はのんびりした時間を過ごした。

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スタリソンチの街外れにある立派な建物。ヨハネパウロ2世(ポーランド出身です)がここを訪れた際に作った記念碑的な建物のようでした。

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その周辺。ほんと、北海道みたい。


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オープニングパーティで地元の日本文化好きなティーンネイジャーと盛り上がり、次の日その子達がスタリソンチの裏山を案内してくれた。こんな良い眺め。目の前の原っぱで一瞬羊が走ってった。


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毎日ご飯を食べたカフェにもありがとう。とっても美味しい料理ばかりでした。また食べたいなー。


というわけで、合宿のような初の海外レジデンス体験でした。
レジデンスってこういうものなんでしょうか?ちょっと異色なのかも?

 小さな街なので、美術を専門にやってる人とかキュレーターさんなどもおらず、展示に対する専門的なレスポンスはちょっと少なかったなあと思いました。
 その分カタログはハードカバーでしっかり作られて、説得力のあるものに仕上がっています。コンセプト等も書かれているし、なんとパーティ来場者全員に配布していたので、展示作品の鑑賞を楽しむための最高の資料になるはずだし、この企画がいろんな人の目に届くようなきっかけにもなるはず。
 今後、展示は隣町のノビソンチにも巡回すると聞いたので、反応が聞けたらいいなあ。

 毎日毎日現実離れした街の風景に囲まれながら、各国作家が15人も一堂に集まってやんややんや交流して制作するので、それがもうやたら刺激的で非常に良い経験となりました。
 英語がもっとできたらなあと常に思ってましたが、カタコトでも英語で話すのはなんだかキモチが良い気がしたなあ。。。

うまいもん食って、制作して、話して飲んで、夢のような毎日とはこの事!!

 それに何より、ベースが絵画の展示というレジデンスなので、僕にとってはありがたい内容でした。絵画の展示の中に、大黒さんの展示が効いており、作品の存在感や強さについて考えることがたくさんありました。

 実際今回で5年目5回目だったこのレジデンス。マリアンは大学教授、ヤチェックは副市長、街の富豪がスポンサー、そんな人たちが団結してプロジェクトを支えているってのが興味深い。
 作家と夜までウォッカ飲みながら歌ってる街の重要人物達ってすげー変な感じ。

International Plein-Air Meeting of Painters Symposium of Local Cultures
レジデンスの正式名称です。…Symposium of Local Cultures。そうだ渡航前に一番心配していたローカルカルチャーのシンポジウムはどうなったんだ?の件について。
 これはカタログ内容に毎年テーマを設けて、各作家がローカルカルチャーに対する文章と写真を載せているのですが、それがシンポジウム代わりのようなのでした。
 あとは自国の言葉で自国の文化を綴るノートが回覧され、僕は日本の普通感、めんどくさがり感、幸福感について、たどたどしく書きました。
 とくに、話合いのシンポジウムは無かったわけです。あれっ!?て感じで肩すかしでしたが、木彫りクマや札幌についてカタコトで語った文章をBenがちゃんと読んでくれてたのでキモチが浮かばれました。

さあ、来年も続くであろうこのレジデンスに今度はどんな作家が参加するのか楽しみだ。



 …そんなこんなで、僕も予定より一日早くスタリソンチを出発し、クラクフ周辺巡りをしてから帰国することにしました。

大黒さんは都合でもう一日スタリソンチに滞在するとのことで、一人でクラクフに向かう事に。
 隣町ノビソンチからバスに乗ろうとしたら、早速どれに乗ったらいいかさっぱりわからない。
 しばしうろたえて、さっそくエクスキューズミー作戦開始。

 近くに居たお姉さんに話しかけると、「わたしは にほんごを すこし はなせます」。
なにーっ!!驚きすぎて「どの バスに のれば いいですか?」ってこっちが逆にカタコトになってしまった。
ポーランドは親日家が多いようで、大学の授業で日本語があったりして結構人気らしいとどこかの情報で見たけど、ホントっぽい。感動した。。。ありがとうございます連発し、無事バスでクラクフに向け出発!

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峠を越え、2時間半。

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川に船。


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クラクフ駅にはデカいショッピングモール。さっきまでのスタリソンチとのギャップがありすぎる!


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スタリソンチ後半は曇りで涼しい日が多かったけど、さあクラコフに着いたら何だかまた暑いぞ。ハトが水浴びだ。


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ユースホステルに荷物を置いて、クラコフ観光スタートです。

続く。

 さて、日本に無事帰って来ました。今度は個展に向けての地味な毎日が待っています。こうやって写真をアップしてると、現実とのギャップに切なさを覚えます。

展覧会作品の細部編。全部アップすると膨大になるので、大体の雰囲気を。。。

まずは自分のから。
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新作の細部。色のイメージはいたって単純。春先の近所の公園のタンポポが元々だったりする。


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レジデンスのディレクター兼出品作家、Marian Nowinski(ポーランド)の作品。


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Piotr Nowinski(ポーランド)の作品。いい筆跡なだけに照明がもったいない。



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Antonio Carmo(ポルトガル)作品。仕事が丁寧。


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Pitor Siecinski(ポーランド)作品。


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Guy Pradel&Ben Quene(フランス)作品。デジタルフォトコラージュの作品。


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Jedrzej Skajster(ポーランド)作品。


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Paco Santana(スペイン)作品。むむ表面の透明版が反射してぜんぜんうまく撮影できなかった…



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Waclaw jagilski(ポーランド)作品。


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Qu Fengguo(中国)作品。


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Chen Qiang(中国)作品。この2作家は、半年前に札幌でも展示していて、見る事ができました。制作方法を見れておもしかった。


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Franco Tarantino(イタリア)作品。


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Roberta Musi(イタリア)作品。この作家さんだけ、本人が来れなかった。しかし、イタリア組の作品イメージはなかなかクレイジー。


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大黒淳一(日本)作品。大黒さんのは写真じゃなかなか伝わりにくいけど、黒いキャンバスの真ん中に特殊なスピーカーが仕込んであって、スタリソンチで録音した音がレーザー光線のように出力され、ギャラリー空間に乱反射していた。スピーカーをつり下げているほうは、音の周波数が糸に伝わって、規則的な波の振動が視覚化していた。絵画展の中に音の作品が一点でかつおもしろい展示なので、注目が集まる。
 うーむ、CAI02の展示の時興奮してた作品が、一緒に並んでいるのだ。テクノロジーを駆使した音を出す作品と同居。絵画なんて油断したら簡単に霞んでしまうぞ。
 

 全体的には、短い時間で現地制作した作品も多く、ギャラリーの設備も満足できるものではなかったので、展示の質についてはもっともっと上がる余地はありそうですが、一点一点みていくと興味深い。僕はアントニオのタブローやマリアンの絵やピーターの木の絵やパコさんの左の絵などが良いと思った。

 それと、なんとなく国民性とか、なんとなく世代のニオイとか、やっぱ背負ってるなあという感じ。
 皆、クレイジーな日本文化に興味津々だったけど、僕ら日本作家も日本っぽさを背負ってるかなー。

さて今後の流れはスタリソンチまとめ&クラクフ観光編へ。意外にまだある…いつ終われるんだ…

 さて現在の僕はクラクフを満喫後ワルシャワに戻ってきて、半日後に日本へ向かって飛ぶのです。
クラクフも後でじっくり紹介するとして、写真紹介は今から約一週間前まで遡ります。順調に遅れています。

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搬入前日。ベンとギーの部屋に行ったらこんな光景が。搬入の次の日に帰ってしまうので、その準備中。これレジデンスのカタログで、一作家にこんなにくれちゃって、皆の悩ましい問題に。ありがたいけど重すぎる!!郵送しようとしても重すぎてやたら高額に…。

 ベンとギーとは、ちょくちょく空いた時間に街を散歩したり、夜youtubeでお互いの興味のある音楽や映像を見て楽しんだ。彼らが住んでるフランスのクレモンフェラーでは映画祭が開催されていて、知ってる人も何人かその映画祭に出展してたりして、というかまず相棒Yが前回出品してて、なんたる共通項。クレモンフェラー、行きたい!


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搬入当日の朝。広場のギャラリーです。気合を入れて、作品をもっていく。


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ところが行ってみると、マリアンとバチェックがスタンバイしてて、「作家は作品を置いて、とりあえずコーヒーでも飲んでてね。ノープロブレム!」と言われた笑 
 なるほど、企画側で展示をするということらしい。自分でやらせてよと懇願したがコーヒーコーヒーゴーアウトの繰り返し。インスタレーションで機材関係のセッティングのある大黒さん以外は皆で広場でティータイムに。
 まあ確かに15作家の展示を全員にやらせたらタイヘンなことになるし、オープニングはこの日の夕方なので(!)、とりあえず納得してみた。

しかし、やはり不安!
ちょこちょこ覗くと、ヤバい、さっそく絵がワイヤーで吊られそうになってたので、まずはひたすら「ノーワイヤー!ノーワイヤー!」と叫ぶ。なぜ?と聞かれたので、「Painting lose gravity! No! Painting and wall んー いっしょ くっつき with 」などとカタコトもいいとこで、ジェスチャーで必死に説明。通じたのか通じなかったのかわからないが、希望を叶えてくれた…。伝えたいことくらいビシッと説明したいものです。

 ライトも近距離のスポットのみで、位置は変えられない。皆あまり気にしてないっぽい?
 光の向きだけはなんとか変えられるので、許せる範囲まではこれは自分でやった。ひー。
 
で、なんとか搬入は終わり、オープニングへ。
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アホなピーター。この格好でパーティに臨む。


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会場はこんなに人がたくさん!!


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こんな演奏もありつつ、まもなく作家はみなサイン攻めにあう。なんなんだ!写真撮るヒマもない!芸能人かと錯覚するほどw


落ち着いてから、
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英語教室の美人ハイテンション教師とパチリ。

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市長さんとパチリ。

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そして各作家さん達とパチリ。我ら日本組!

こう振り返ると僕はノンアルコールでしたが調子に乗ってますね。

お客さんは素直に作品を見てくれて、質問してくれたり、ちゃんと絵の側面も見てくれたりして安心。ただ質問にカタコト英語で答えるのがツライところ…

その後、夜遅くまで宴会は続き、キモチは一段落。
改めて撮った会場はこんな感じです。
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僕のはこんな感じに落ち着きました。
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右3点が日本から持ってきたいつもの作品群。上2つは一昨年の秋に発表した、割とお気に入り作品。下のが、渡航ギリギリまで作ってた新作です。

次は各作家作品のデティール編。ああ残りは日本戻ってから。ポーランドにいる間にフィニッシュしてしまいたかったなあ…
帰ったら、さらにいろいろ、busyだ!!

制作過程を紹介編。

一日中宴会をしているわけではありません。宴会は大抵夕方からなので、社会科見学が無い日は、もちろんみんなストイックに制作に励んでいました。
 今回の絵は、自分自身で描いてる過程が面白くて、特別な技法を使ってるわけでもないので公開。それにこの絵はスタリソンチに置いていくので、若干過剰説明します。

 僕はキャンバスを渡されてから間もなく、スタリソンチの風景が良い!と野生の勘が働いたのでさっそく広場の写真をバシャバシャ撮り始め、絵の構成を決める事に。

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展示予定のギャラリーの入り口付近から見える風景がこんな感じで、絵を見たお客さんがその後すぐに同じ風景を目にするってのはなかなか良い。
 それに僕が最初にグッと来たのはこの広場。初日に行ったカフェマリシェンカや広場の雰囲気が目に入る。
街には教会など目立つ建物もあるけど、この街のノーマルっぽい見栄えのこの風景を絵画に変換しようと決定。


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キャンバスが何枚もあるので、直接絵具とキャンバスでエスキースを試みる。最初はモヤッと空気感のある感じにしてみようとしたけど、どうもピンと来ない。着いた日はもっとガンガン晴れててシャープな風景が飛び込んできたんだった。それにやっぱ筆がなかなかノッてこない。なにせ風景描くのは6年振りなので、イメージを絵具に変換する感覚をつかむのに若干時間が必要みたい。


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イメージを絵具に変換する腕ならしのため、単色で一枚習作。色は置いといて、筆遣いの勘を鍛えてみる。


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いつもの作風の作品も同時進行してます。でもこっちは滞在中に終わらなそうだから日本にもって帰って個展用に。


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本番。キャンバスに透明メディウムを塗っておいて、絵具がちょっと浮くように仕掛ける。描写については筆跡に緊迫感を与えるために、下描きなしで。最初のベンチの位置を決めるのがタイヘン。


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下の近景を描き終えて、次は広場を右側から少しずつ描写。


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周りは散らかっていきます。


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遠景も右側から順番に建設。Benに「You are painting machine! like a printer jijijiji」と言われて、なかなかイイ褒め言葉だなあと喜ぶ。でもねープリンターにそう簡単には勝てませんな。筆跡も、平筆をオージュンさんっぽく使ってみたいと意識するけど、誠に難しいよ。

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ここで一旦様子を見る。脳内の完成予想図では、空と広場は空白にしようと思ってたけど、どうも物足りない。絵としては成立しそうな気もするが…筆置きタイミングに悩むところ。


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おや、隣の部屋で描いてたアントニオは筆が早くてすっかり完成させている。持ってきた作品まで並べて余裕の仁王立ち。「まだ描いてるのかニヤリ!」とおそらくポルトガル語で言ってきた!むむむ。


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結局、地面にゴールドを薄くかけて、空を描きくわえる。空のバランス調整中。


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最後ニスがけして発色を良くして、完成!
総制作期間は約一週間くらい。
タイトル『時間よ止まれ(stary sacz)』
矢沢永吉なタイトルにしてみた。

うん、なんか、なぜか6年前の作品とちょっと、似てるな笑
(これが6年前の作品。当時住んでた寮の裏の雪山のある風景です)
melt

この時は筆触も薄ーくして、ネガティブな風景寄りにしていたけど、今回はもっと描写にポジティブなキモチを込めたつもり。少しは絵具と筆の扱いもマシになったかなあ。

しかし実際、この街と北海道の空気の感じはよく似ている。温度も湿度も、空気の霞み方も、山が見える眺めも、草の生え方なども。だから似たのだと思う事にしてみる。

どういう支持体に、どういうもので、どう絵具を乗っけるか。というのが、風景だろうがなんだろうが僕にとって一番の醍醐味で基本。
 風景ならば、その風景のイメージと絵画そのものの構造が入れ替わり見えてくるような画面が理想です。
 でも反省点は完成時点で山ほどあって、キャンバスに絵具を置く難しさを久々に痛感。

 そもそも僕は、絵がうまく描けないコンプレックスをバネに、絵画に取り組んでいる感を常に持っている。
 つーか、油彩とか、絵画を専門にする人にも上手い人はもちろんいるけど、割合として上手いマンガ家やアニメ描く人のほうが絵が描けるような気がするのに、その上で画家とはなんぞや?という疑問がある。なんとなくその答えはわかっている気もするが、明確ではない。
 
 制作しながら、宴会しながら、その合間にしっかり村上隆のニコニコ動画チェックもしてたら、「絵の勉強して、才能あるやつは漫画家やアニメーターやイラストレーターになって、残りの才能ない頭の悪いヤツがアーチストになる」みたいなことをバッサリ言い切った。おお、すっきり納得!

 僕の場合は絵がヘタな分、絵画だけが持つ特有の技術や魅力をどうにか発見して、発酵させて、悪あがきで太刀打ちしようと思ってる部分がある。

 風景の中にも絵画を発酵させることができたら画家としてもう言う事なし!なのだけど、まだまだそうもいかないようだ。

次は搬入〜展覧会の様子の予定。

リアルタイムの僕は、明日スタリソンチを経ち、クラクフ(日本でいう京都のような存在)に向かうのです。
 

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