やまもとのグレーゾーン

札幌の絵描き山本雄基のきまぐれ雑感と日常。

2012年03月

昨年の地元帯広の個展のとき、ほとんど会場にはいられなかったのだけど、
後で芳名帳を見ると懐かしい方々がたくさん見に来てくれていてうれしかった。

その中でも、中学時代の音楽の先生の名前があったことが一番感激だった。
お世話になってから15年。若い女性の先生でサバサバしてとても良い先生だった。

僕は中学時代、体育の成績がめっぽう悪く、
文化系で通信簿の数値を稼がなければならなかった。

美術はそこそこだったが、むしろ音楽の歌テストを堂々とやって好成績を収めたので、
ある日その先生から
「どうしても混声合唱をやりたいので、ピンチヒッターで男子合唱部になってほしい!」
とお願いされた笑
そして、女の子に囲まれながら、変に波長の合う体育会系からオタク系まで様々な男子達が集合して、
もともと歌うの好きだし(今も家にいる時は絵を描いている時も含め、ひとりで何かしら歌を歌っている)、
結果、緊急男子合唱部員時代がやたら心に残る思い出になっている。

先生も、どうしよもない下ネタなどにきっちり対応してくれたりビートルズを教えてくれたり、
夜遅くまでアホな男子達をまとめながら発声の特訓をしてくれた。
今思えば本当にありがたい。

そんなわけで無性に懐かしくなり、次の展示のチラシとお手紙でお礼を書いたら、
なんとその展示にも足を運んでくれた!!しかし残念また会えず。
またお手紙でお礼を書いた。

そして先日、長いお手紙がその先生から届いた。
丁寧でユーモアがあり、泣けてくる!
15年も前の生徒なのになあ。懐かしくて会いたい人からの直筆の手紙ってうれしいものだなー。
今はあの頃の先生の年齢より年上になってしまった自分が不思議だ。

大地讃頌のテノールパートでも、熱唱するか!!!

疲れがとれないままトークイベント。
想像以上にお客さんに来場頂いた。
皆様ありがとうございました。

各作家が塚崎さんと対談形式で自作について語るという流れに落ち着いたけれど、
やっぱり一人一人の尺が長くなって後半はしんどくなってしまった。
予定してた作家同士のトークも無くなってしまったし、
改善の余地はありそうな内容だった。
個人的に聞いていておもしろかったのは、小林麻美さんの話だったな。

自分のトークを録音して、家に帰って来てから自分が何を話したのか分析してみた。
これぞナルシズムスピリッツ。
まーしかし疲れている割には、早口でベラベラ話すオッサンだこと…しかも無駄が多い。
整理すれば3分の1に抑えられるトーク内容だ。がっくり。
言いたい事はそれなりに言ってるけれど、理想にはほど遠いな!

後日もう少しこのトーク内容をまとめた形でブログ化する予定です。
写真は疲れてガイコツのようになりながら早口で話すキモい自分。

baaitalk

baaitalk02
撮影:川村魚実

17日は5次会深夜3時まで飲んだ後に、18日朝一の飛行機で東京へ。
離陸直後に爆睡したので飛行機に乗っていた記憶が全く無い。

今回の目的は、板室温泉大黒屋公募展の授賞式に出席すること。
大賞受賞者は招待して頂けるという、年一回の贅沢なお楽しみ。
5ヶ月前の個展滞在でお世話になった皆さんに再会できるし、
入選作品を見られるし作家さんとも交流できるし、オイシイご飯も食べられるし、
審査員さんとも交流できる。こりゃ行かない理由が無い。北海道からでも飛びます。

せっかく飛ぶので貪欲精神、東京で出来る限りの展示も見ることに。海の向こうのローカル道民の意地。
羽田着いてすぐにVOCA展へ。

桑久保さんの大作はとても良かった(ほぼこれ見るのが目的)けど、うーん、ムズムズする。いっつもボカはムズムズする。
若手絵画作家の登竜門なのでは?桑久保さんはすでに登竜門レベルを超えてる作家さんだし、
選考委員の方々はもしや絵画LOVEではないのか…?と思ってしまう。もっと見たい絵画が他にあるような。。
トドメは北海道から選ばれてる作品 が、どストレートに時代遅れ感だったところ…これマズイよ。
ムズムズしたので、売店で「組立 作品を登る」購入。

むしろ隣のギャラリーの方でやってた東島さんの展示がとってもおもしろかった。床から天井までのデカい絵画、油絵の具のこってり感がゾクッとする。
一体、何が違うのだろう。何かが違う。

その後新幹線やら何やらで急いで大黒屋さんへ。
入選者さんもたくさん参加してたし、今年は過去受賞者さんも僕含め4人。並んでみると濃いメンズだ。
作品展、全体の印象は絵画作品より立体作品の方が粘りある感じ。
授賞式後の交流タイムは皆ギラギラしている。
各審査員さんの前に行列ができて、作品ファイルプレゼン合戦だ。このギラギラ感がたまらない。
プレゼン光景を横から覗く。菅さんはアーティスト、天野さんは学芸員、小山さんはギャラリスト、という立ち位置の違う3人なので、
それぞれの視点が違って本当におもしろい。

僕も負けじと隙を見てお話。見て来たばかりのVOCA話題で、同意見をたくさん聞いた。
その後従業員の皆さんとお食事しながら、カメラマン鈴木さんと恒例晩酌。

夜は去年の受賞者の坂井田君、2年連続入選の大間君と共に、天野さんと晩酌。
坂井田君の修了制作展示写真を見て、僕は作品の強さに圧倒されたのだけど、
天野さんは、展示構成や撮影などトータル要素に対してものすごい厳しい意見。。プロの見方を学ぶ。
晩酌はいろんなトピックで盛り上がり深夜2時まで続いた。天野さん毎度翌朝早いのにすんません。

翌日東京に戻る。もっとゆっくりしたいのだけど、翌日また札幌で展示イベントがあるためトンボ帰り。
帰る前に、3331→ポロック→イ・ブル。

ポロック展は見なきゃならんと構えてただけに特にグッと来た。
ポロックの絵画に対する繊細真面目なアプローチが解りやすく構成されてて、
ポロック愛を感じる展示だった。
メインの大作は素晴らしかったし、後期のモノクロのステイニング作品が意外に良くて新発見だ。

オチは売店に売ってた石井竜也のポロック展テーマソング「Where is Heaven」。
ポロックよりこの人が正気の沙汰ではない。米米に帰ってくれ!

そして僕は札幌に帰って来た。さすがにぐったり。翌日はトークイベント…。

林道郎さんの文章は、2004年川村記念美術館のロバートライマン展のカタログで初めて意識的に読んだ。大学4年のとき。
展覧会にどうしても行けず、泣く泣くカタログだけ購入したのだった。
このカタログの出来が良くて、絵画それ自体をどのように存在させるか考えるようになったり、とても勉強になった。

何年か後、国立国際美術館のポルケ展で発売されてた小冊子がポルケと林さん達の対談「ジグマーポルケ 自作を語る」。
初めて拝める大作群と共に、ポルケの真面目なのかとぼけてるのか絶妙なトーク内容に感動したものだ。
ポルケについての日本語本は少なめなので貴重な冊子だと思う。

その後に「絵画は二度死ぬ、あるいは死なない」シリーズを読んだ。
シリーズ全部にはまだ目を通せていないのだけど、作家チョイスが好みで、
講義録なので読みやすいし作品分析のアプローチの仕方がリアルに伝わる内容だ。

その他「組立」の対談や、岡崎幹二郎さんの小作品集のテキストも林さんだった。

以上のように絵画の勉強してたら知らぬうちに何度も林さんの文章に触れてきていたんだよな。
そのため、目の前でしかも札幌で講演会が聞ける、しかもイベント主催側に作家として関われる、
というのはたまらないわけです。

27_large
撮影:川村魚実

林さんは、フワッとスマートで穏やかで熱い印象。
トーク内容は書ききれないけど、
少し抜粋メモ。

・まず80年代西武の流れから絵の事を考え始めたのでフォーマリストではないという前提からの、
グリーンバーグの問題点、グリーンバーグが日本で一般化するタイミングの遅さの話、批評言語で語れないものに出会う期待感。
形式と内容の対立というのがニセだと思う。定義の不可能性。

・大阪の国立国際美術館で開かれた「絵画の庭」について。
現代の美術の展覧会にしては例外的に観客が6、7万入った。
9割具象だったが、(具象/抽象 というのはあまり有効なカテゴリわけではない)、
何点か気になるのもあったがほとんどぴんと来ない。 だからいまの日本の絵画のはやりものとはすごく距離がある。

・吉本隆明の話。
転向論で「関係の絶対性」ということを言った。一貫性は、まわりの社会情勢との関係で変わってしまう。
昭和が終わったというセンチメンタリズムではなく、いい批評はいつ読んでもいい。

・絵画の定義は、数学的な意味の定義は不可能。 社会の中で、変容しながら使われている語。
20世紀以降は、一般に流通している絵画概念を超えて絵画がつくられていることの繰り返し。
定義が更新されていくことの繰り返し。ただ彫刻に比べると、ある種の中心性は考えられるかもしれない。


・マチス『人生の喜び』やピカソ『アビニョンの娘たち』などは特異性を孕んだ、
沈黙の理論としての作品と言っていいかもしれない。
野球でいえば永久欠番みたいなもので、様式史のなかでも交換不可能な存在。歴史を支えるのはそこ。
いつもそこに戻らざるを得ない。
「他の現在」「他の時間」とむすびつくような、あらわな時間性をはらんでいるかもしれない。

スライド画像から、様々な時代の絵画に対するアプローチの説明。
視界を包む大きなインスタレーションに近いものではモネやロスコやムンクの共通性。
触知性の話ではフォートリエのアプローチ、岡崎幹二郎のサムホール作品。

・水平垂直、重力の話から70年代以降の話。

・説明し尽くしたらいい作品ではない。だから批評というのは最初から負けるようなもの。一言。

…批評家さんの言葉からこの一言が出てくることに笠見君も驚いていたな。故に信じられるなあ。

その後の質疑応答で僕は、
アメリカから帰国して、いわゆるJポップ文化と、同時に発生している日本現代美術はどう見えたか?
国立国際美術館の「絵画の庭」展で気になった作品はどんな感覚なのか?
日本の流行にただ回収されたくない思いがある。
Jポップ化、サブカル、そういうのを超えた絵画的な視点はどんなものか?
というようなごちゃごちゃしたことを聞いた。
回答は梁井朗さんの書いてくれた講義録を一部抜粋。

・Jポップという一般化するのは2000年ぐらいか。帰国後、宇多田ヒカルや椎名林檎がすごいと驚いた。
・Jという言い方には抵抗がある。カレン・キルムニックはある意味、Jポップ的。日本特有ではなくてグローバルに必然性に出てこざるを得ないだろうと思っている。
・近代で「いい場所」なんてない。みんな「遅れ」の感覚を持っていて、外国や、前の世代のものが進んで見える。
・ある種のコンプレックスの中で仕事を始めるのは、普通。誰だって育ってきたコンテキストを抱えてるわけで、すべてを見渡して作るしかない。

「メーンストリームに対してサブカルという戦略がある。サブカルは往々にしてメーンストリームのイメージを取り入れてスキャンダラスに操作していくと。
両方のコードにあてはまらないわけのわからないものが結晶することがあって。
たとえばセザンヌの水浴。アカデミズムでも通俗的ヌードでもない。なぜかああいうものが出てきちゃう。
バルト的に言うと第三の意味、領域というのがある。
破壊的なものを持ちえる、生み出せるのが美術の意味だと思う。 」

その後小室さんが、西武と絡めたポップについての質問を。ネオポップ、マイクロポップという呼称もひっかかると。

「70〜80年代、西武が日本の消費文化で果たした役割はすごく大きくて、
西武美術館だけじゃなくて、シードホールとか文化活動、CM、六本木WAVEなどを通じてリードしていた。
宮沢章夫が面白い本を書いています。ポップカルチャーに歴然たるヒエラルキーがあった。
オシャレな西武とオタクのあいだには格差があった。90年代以降、オタク的なものがメインストリームに出てきた、と。
僕はハイアートという言葉はあまり使わないけど、もうすっかり格差がなくなって、
美術はポピュラーカルチャーの中で細々とやってる。サブがサブじゃなくなった。
美術が持っている「第三の意味」的なポジションがますます重要になってるかもしれないと思う。
それと、ポピュラーカルチャーにはもちろん可能性がある。
大衆文化とかいうと、ひとくくりにすると、単一的に見えるけど、そんなことはなく。
自 分ではあまり垣根を設けずに、ひっかかったものについて考えるという姿勢。
社会学やってるわけじゃないので書くのはできないけれど。
松浦寿夫さんと創刊した雑誌に連載している「ポロックの余白に」では、
ゆるくて、ジャズについて書き始めています。
ゆるい気持ちは持ち続けたいと思っています。」

うーん、なんというか、励まされた。。。
こんな濃い内容の絵画トークは札幌じゃなかなか機会が無いのでは。
お客さんもたくさん来場されていて、良い形で終える事ができた。
その後のオープニング、林さんと打ち上げ2次会。
林さんに作品や展示の感想をいただく。

さらにその後笠見西田、CAIの端さんとうさぎちゃん、我らが山本先生と遅く迄飲む。

グループ展に参加します。

jpg


「絵画の場合 2012 ―最終章―」

日程: 2012年3月14日〜2012年4月1日
時間: 11:00〜19:00(最終日は17:00まで)
場所: 北翔大学北方圏学術情報センター PORTO ポルトギャラリーA・B
住所: 札幌市中央区南1条西22丁目1番1号
    ※一般来場者用の駐車場はありません。公共の交通機関でお越しください。
主催: 絵画の場合実行委員会
お問合せ: E-mai: lthayashi(アットマーク)hokusho-u.ac.jp

参加作家・協力:

 大井敏恭 笠見康大 小林麻美 澁谷俊彦 武田浩志 谷口明志
 末次弘明 西田卓司 林亨 山本雄基 梁井朗 塚崎美歩 

■林道郎氏 講演会
 3月17日(土) 午後2時〜

■オープニングパーティ
 3月17日(土) 午後5時〜

■アーティストトーク
 3月20日(火・祝) 午後1時〜


フライヤーデザイン:武田浩志
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

久々のブログ更新になります。

2月はほぼこの展示のための制作に没頭しており書く余裕がなかったのでした。
余裕が無いと、心身硬直しちゃうので気をつけなければ。

本日自分は搬入を終えてようやく一段落。
とても見応えのある絵画展になりそうです。

今回はちょっといつも以上に気を張って制作してました。
いろいろな思いはありますが、
その理由の一つとして、
大学時代にものすごく影響を受けたり、いろいろ引っ張ってくれた先輩達がいることと、
いつもつるんでは絵画話をしている後輩達がいるので、
こりゃバトルだなー負けられねえ!と鼻息荒くなってるのです。
しかし搬入光景をみた限り、手強いバトルだな。。

僕はどっかで一番をとらなきゃイカンという意識のもと、
出品者の中で一番デカイだろう作品と、一番絵具の盛りが厚いだろう作品の
2点を出品します。
過剰に、過剰に、と唱えながらやってきましたが、度を超えて間に合わなくなりそうになったので、
同居人を犠牲者にしてヤスリをかけさせる始末に。
ちょうど大きな仕事を終わらせてオフに入った瞬間を見計らって土下座。
僕より基本的に造形能力が高いのでシメたもん、ギリギリ間に合いました。
なんかやっぱり、この一年いろいろあったし、過剰にいきたいのです。


今展は、展示の他にイベントも充実しています。

17日の林道郎さんの講演会は、絵画をやっている人達は必聴です!
北海道ではなかなかこのような機会はないかも。
林さんは美術批評家であり、「絵画は二度死ぬ、あるいは死なない」シリーズの著者さんです。
僕もそのシリーズの他いろいろな図録などで何度も林さんの文章に触れてきていたので、とても楽しみにしています。
同日講演会後にはオープニングパーティがあります。

また20日春分の日には参加作家によるギャラリートークがあります。
展示作品および絵画をより深く考察できるきっかけになるような機会になると思います。
話すことが無くなると困るので、ブログに作品の事をつらつら並べるのはこのトーク後にとっておきます。


展示にイベントも盛りだくさんですので、
ぜひ皆様お越し下さいませ!!よろしくお願い致します。


このページのトップヘ