やまもとのグレーゾーン

札幌の絵描き山本雄基のきまぐれ雑感と日常。

2012年11月

ベルリンに帰ってきて、
さっそくクラウスにオススメされたJudisches Museum Berlin
(ベルリン・ユダヤ博物館)

に行ってみる。まだまだベルリンには見るところたくさん。
上に貼ったwikiのリンクが詳しいのでいろいろ省略するけれど
ホント建築がヤバい。
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こんな感じで歴史的資料がズラーっと並ぶ。
入り口から最初の通路や展示、それと建築そのものが
ホロコーストに関連するような重い展示もありつつ、
そこから階段を上がってからは、
いろんな物がズラッと並んだユダヤ人の歴史を追って行く構成。

うーむ歴史の知識不足のため、
入り込んで鑑賞ってのは難しかった。
いかんなあ。

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なぜか初期ディズニーのアニメも。
めっちゃ良かったけど。


別展示室で、R.B.キタイの回顧展。
こちらは残念ながら撮影禁止のために入り口だけ。
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キタイがユダヤ人だったというのも恥ずかしながら知らなかったし、
ボンヤリとブリテッュポップアート初期世代の1人ってくらいの印象だったが、
実際通して見てみると、色彩やモチーフ等一部ポップではありつつ、
全体的には憂いを帯びたハードな内容の絵が多かった。
時代毎に絵の構成の仕方や描き方の雰囲気もかなり変化している。
 
そんでなぜかわからないけど、師匠の山本先生の絵画を思い出した。
鮮やかな色の配置とか、抽象と具象のバランスとか、構成の仕方に
共通性を感じるなー 帰ったらキタイについて聞いてみよう。 

美術館を出ると、
すこぶる寒くて、ちょっと雪が降って来た。
日もずいぶん短くなってるし、冬だなあ。


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Photo: Roberto Kai Hegeler


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Photo: Roberto Kai Hegeler


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Photo: Roberto Kai Hegeler

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Photo: Roberto Kai Hegeler


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Photo: Roberto Kai Hegeler

ギャラリーの隣が美術館で、
http://www.akademie-der-kuenste.de/index.html

 ここのディレクターのクラウスさん(個展のテキストを書いてくれたクラウスさんとはまた別人)
に作品を見てもらえる。
クラウスさんは2008年のケンさんのカタログのテキストを書いている方だ。

じっくり見て頂き、
いろいろ意見をもらう。とにかく厳しい意見を下さい!!と懇願したけど、
つまらなかったらわざわざ会いに来ないんだから大丈夫だと言われる。

今回はこういうちょっとだけイレギュラーな配置を試した作品があった。
真ん中を真っ黒な点で押さえて、上下に大きな抜きを作ってるというやつ。
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cRoberto Kai Hegeler

これをみてクラウスさんは、
こういう視点の企みをやってる作品を見せてあげるよ、と
即座にググったのがこのリンク↓
http://fr.wikipedia.org/wiki/Fichier:La_gare_Saint-Lazare,_Les_signaux_1877_Claude_Monet.jpg 

モネ。
この作品も正面の中央に看板の円を配置して構図を組んで、
画面の奥行きに向かう視点をストップさせてるだろう、とのこと。
その他、マネやカイユボットの割とマニアックな
作品手前と奥を柵などで分離させてる、人物の視点と鉄骨の直線方向で画面に矛盾を与えてる、
などの作品を見せてもらう。印象派はそういう実験も積極的に画面に入れているけど、
君の作品はそういうことを円形だけ使って現代的にアプローチしているし、
日本らしい要素も感じられる、というようなコメントを貰う。
おもしろいありがたい。

さすが頭の中のアーカイブとの連結が早いなあ 。
そして、大丈夫だこのままがんばれ、とのこと…!
なんか皆さんやさしいな笑 
もっとボロカス言われて咀嚼したい気もするが…

それと、ベルリンに住んでるなら、今ジューイッシュミュージアムでやってる
R.B.キタイの回顧展を見に行くといいとおすすめしてもらった。

午前中にハンブルグ市立美術館で常設展示を見る。
現代美術の部屋が1部屋1作家、全13作家の見やすい常設。
http://www.hamburger-kunsthalle.de/index.php/15-years/articles/15-years-gdg.html


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おなじみリヒターはフォト系も抽象系も揃ってて質高い。
このカラーチャート絵画の筆跡が良かったな。



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 ポルケついにきた!!!!!
しかもこの透明支持体のデカいやつあり。 
これを望んでたんですよ〜なんでもっと早く見せてくれなかったの。

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透明部分はどうも透ける生地のようで、その上にニスっぽい何かで
下塗りして描写して、またニスっぽい何かを塗っているようだった。
よーく見ると、表面に小さな黒いツブツブがたくさんあって、
さらに凝視すると、これは虫の死骸だ!
マチエールになっちゃってる。キモい。

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 小振りだけど、これもめっちゃ良い。
こっちは真ん中上部に茶色いツブツブが。
これはどうも最後に塗ってるニスっぽい何かの滴りかけた痕で、
つまり最後の過程で、描写面を下に向けて吊るして乾かした可能性がある。

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描写の細部はこんな感じだった。

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これは透明素材じゃなくてプリント生地の布に描いてるやつ、デカい。

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額との関係がイイ感じ


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あとこれも見れました。
上のスイッチを押すと、下のイモが回るやつ。
どのお客さんも失笑してた!

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サインのところに24/30って書いてるので、
マルチプルなんだな。 


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 1990年近辺のクリストファーウールの作品も。
アルミの硬質な支持体にマットなホワイトとアルキド系のグロスペイント黒を使ってる。
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カメレオンって書いてるこの作品は、グリッドマス目の鉛筆下書きもうっすら見えた。

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てことは、文字は筆で描いてるかな。


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これすごく良かった。
落書きっぽく見えて、複雑な構成を持ってる。 
記号的な黒い描写はおそらく版で、
グレーがかってる部分はブラシで塗ってるのだが、
それがコンポジションを作ってるし、グレー層の前と後に
黒い記号の層があるので、消えたり消えてなかったり層が混ざったり。
十字の直線で画面中央をマスキングされてたり。
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あーなるほど自分の作品に欲しい構造がこの絵の中にガッツシ表現されてるから
気になったのか…

質感が硬質なせいもありでなんだか都会的な絵画だ。

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これらも微妙な版のズラしを表現していて、よーくみるとトリッキー。

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左の作品の拡大。ところどころ、柄がビョーンと伸びていて、
全体を見るとそのパターンが不揃いなので不思議だ。
興味深い。
これらの作風のあとにあのスプレーとストロークの抽象になるんだよな。



他にも、ブルースナウマンのネオン作品や、
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ローズマリートロッケルの作品群など、
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質の高いのが揃っていた。
ここの展示室の空間は正直そんな広くないし渋いんだけど、満足。


みきこさんのギャラリーの重要なお客さんであるBさんが作品を見に来てくれるというので、
再びハンブルグへ。
これまた重要なお客さんでみきこさんの友人さんの家にみんな集まりパーティ。 
みきこさん渾身の餃子と唐揚げがうまかった。

そんでこれまた家中作品だらけ。
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玄関には開発さんの作品、

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その向かいにはけんさんの作品、

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でかいリビングには広瀬さんの作品、

などなど
すべての部屋中作品だらけ。すげ。

初めての日本旅行から帰って来たばかりで、
東京大阪京都のトラベルスライドショーをみんなで見た。
外国の人の目を通して日本を見た不思議。


Bさん夫妻にもご挨拶した。
2月に小さい作品をすでに2点買ってもらっている。
今回の展示もとても気に入ってくれて、
100号くらいの大きさの作品購入に加え、
追加依頼で小品3点を クリスマスまでに欲しいとのことで、
おいおいすごいぞ急いで作らねば…!
お客さんの作品の買い方のスケール感に目が点になってばっかりだ。

GlogauAIRでお世話になって今はNYに戻って活動してる
田口一枝さんがベルリンのギャラリーでオープニング。
http://www.lorch-seidel.de/exhibition-current/is

GlogauAIRのオープンスタジオと被ってしまったので、
オープニングに一瞬だけ顔を出す。
人がめちゃたくさんいて光のインスタレーションがほとんど見えなかったので
後日改めて見に行こうと思う。
ご本人とも一瞬しか話せぬまま急いでGlogauAIRに戻る。

とはいえ、自分は始めたばっかりの作りかけ絵画しかないので
イマイチ気合いが入らない。。。
制作風景をみせて今回はおしまい。

しかし毎回、22時を過ぎるとオープンスタジオのお客さんは酔っぱらいが増えてくる。
作品鑑賞というよりは、酔っぱらいに来てるのでは…!?
終了後は、シャワーんとこにタバコの吸い殻が落ちてたりキッチンが
酒臭くなったりでガックリくるが、こんな感じが普通なんだろか。

ハンブルガーバンホーフ(名前がややこしいがベルリンの現代美術館)
の正面の展示が新しくなったと聞き、
行ってみる。前回は真っ暗なインスタレーションだったのでどんな空間か
わからなかったけれど、

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こんな空間だった!
展示は、Martin Honertのインスタレーション。

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こんな感じの彫刻というかジオラマチックな作品がいくつも並んでて、
それぞれ素材などを変えながら、
共通して違和感のある情景を作り出していた。おもしろい。


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常設のこのボイスの黒板作品は非常に良いのだけど、
何やら監視員3人が困った顔で集まってると思ったら、
視線の先にはベチャッと水滴が!!やべえええ
雨漏り?ツバ? 
僕も一緒に顔を見合わせてポカンとしてしまったが
これはマズいだろ。

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18日
ERNST BARLACH HAUSというハンブルグ郊外の美術館で、
Ernst Barlachっていうドイツ表現主義の彫刻家と
Emil Schumacherという渋いドイツの抽象画家の展示見た。

彫刻の方はドイツ表現主義らしくてなかなかおもしろかったな。
庭には金属のトニークラッグ彫刻が。春に個展ここでやってたようだ
むしろそっちが見たかった。

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帰りに中心街で降りて歩いてみる。
3回ハンブルグに来てるが、
中央駅とその半径1km以内の美術館とみきこさんのギャラリーにしか
行ってなかったので、まともに中心を歩くのは初めてだ。
都会だし湖があったりしてなんかキレイな街だ!



19日
噂で聞いたミニチュアワンダーランドに行ってみる。
観光っぽい。
港町なので運河があって、デカイいレンガな建物がズラリと並んでいて
そこにミニチュアワンダーランドがある。
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 こんな感じ。いくつかの街をところどころフィクションを加えながら再現してるらしい。
これはおもしれー!
一定時間毎に、昼と夜が切り替わるし、
車がちゃんと車線変更しながら走ってたりして芸が細かい。

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 スペースシャトルも飛ぶ。
ちなみにミニチュアはすげーけど、それに比べて背景の壁画だけは、、、 

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自分のひと差し指と比較。

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雪の地域も。

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牛も。

一番気合いを感じたのは空港のミニチュア。
駐車場も臨場感あり。建物の中にも人混みの再現。
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人だかりができてるとおもったら、なんと空港の滑走路では
飛行機が飛んじゃってる!! 
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スピード感もすごくリアル。


しばらく見てたら、ゲートからちゃんと飛行機が動き出して、
滑走路まで行って飛んでいた。着陸した飛行機もゲートまで戻って行った。
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後半では、職人さん達がミニチュアを制作してる風景を、
動物園のオリを覗くように観察できた。

観光、満足。

週末にレジデンスのオープンスタジオがあるので、ベルリンに戻る。
見せる物がない。

オープニングを無事に終えて安心するも、
昨日に続いて声がほとんど出ない。 

ずっと気になってたアンセルム・ライラ(レイラ?ライル?)の個展が
ギャラリーから徒歩5分の美術館やってるので、
http://www.deichtorhallen.de/index.php?id=275&L=1

やっと見に行ける。
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 多くの美術館がタダで入れるアーティストカードが通用しないのと、
 写真撮るのに2ユーロ取られて、それもプライベート使用に限ると言われる。
なんだよそのケチくさい仕様は、なんか権利関係なのかな。
…と一瞬思ったのだけど、そもそもそれが普通だったはずなのに
すでに感覚がマヒしてるから恐ろしい。
入り口だけ載せる。

しかし展示は大規模で質も高い!
バーゼルで中型の作品見た時はピンと来なかったけど
今回は数年間の軌跡を追える展示だったこともあって
興味津々。
個人的には5年くらい前の割とオーソドックスな抽象絵画が
めっちゃ良かった。ストライプのシリーズと、直線と曲線で構成された色面の抽象。
この時点で、鏡とかホイルを一部マテリアルとして使ってる。

近年になればなるほどスペクタクル度が上がってくるのが
ハッキリわかるので面白い。稼いでんのね…

デッカいアクリルボックスの額にホイルがクシャっと構成されている、
メインで押し出されていた作品のシリーズ名は、
「Foil Painting」って…Oil paintingのギャグか!?
つーかpaintingって言い切ってるんだな。
 
反射のマテリアルとかハデな感じは
パッと見クーンズを彷彿とさせるけど、
この人は絵描き脳な感じが強い。
だからなのか見てても興味が湧きやすい。
ただネオンを使ったインスタレーションとかはちょっとダサい。

フランツヴェストとのコラボレーション作品などもやってて
それもなかなか面白かった。

あとアメリカのポップアートに対するポルケとかリヒターの距離感、
ニューペインティングに対するバゼリッツとかの距離感に、
近いモノを感じた。 


鑑賞を終えて、
夜は大きな絵を買ってくれたGさん家のディナーに
みきこさんとご招待される。

家の近くまでくると
そこは街の中心から少し離れた閑静な住宅街に
広い庭付きのデカい一軒家が並ぶ光景…!
みなさんカーテンつけてないので家の中が丸見えなのだけど、
どの家もめちゃ広い部屋にデカい本棚と何らかの美術作品があった。

ははあーこうやって無数の美術作品の需要が発生しているのだな…と
いろいろシンキング。

そしてGさんのおうちはその中でもさらにデカい家で、
廊下が部屋みたいな広さ…!天井も高えええ
みきこさんと茫然としてしまった。
100年前の屋敷を、5年かけて自分たちでリノベーションしたとのこと。凄。

すべての部屋、廊下に大小様々な作品が飾ってある。
こんだけの壁面積があれば、
そりゃあ家族写真やポスターや本棚だけじゃ足りないだろうし
美術作品が有効なのもよくわかる。

日本人の旦那さんの人生観もぶっとんでいて話が盛り上がりながら
おいしいドイツ料理を楽しんだ。
声が出ねえしドイツ語は聞き取れなかったけれど…
ハンブルグに居る間はベルリンにいる時よりドイツ語に触れる率が高いので
こりゃ勉強せねばなという意識になる。

個展初日。
オープニングは夜からなので、
ギリギリまで展示の詰め。自分は照明を主に調整していたけど、
みきこさん親衛隊とも言えるお姉さん達の協力で
テキストのパネル張りや掃除、ドリンクやお菓子の用意をして頂く。

制作段階から設営まで、
いろんな方々に助けてもらってようやく展示は完成。

みきこさんもギリギリまであれこれ準備、
お客さんがどれだけ来るか全然予想できないとのことだけれど、
広報はもう最大限していただいているので後は待つのみ。

って話してたら、スタート30分前からソロソロとお客さんが
入ってくる。 おおおイイ感じ。
その流れでどんどんお客さんが増えて来て、
質問に答えるやら、お客さんを紹介してもらうやらで
あらら一気にてんてこまいになる。
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ちょっとひといきついてやっとカメラで1枚。エントランスです。
奥の青いチェックの方がギャラリストのみきこさん。

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全然撮ってるヒマなかったのでみきこさん撮影のを拝借。
混んでる風な写真。
実際、最初の2時間くらいですごい沢山のお客さんが来場してくれた。
ギャラリー内はずっと混雑。
昼間からずいぶん寒かったのに、わざわざ足を運んでもらえてうれしいです。

2時間過ぎたら、一気に落ち着いた。
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テキストを書いて頂いたクラウスさんと挨拶。背がめちゃ高い。

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DMとリーフレットのデザインをやってくれたジェシカと、
近くのバーの名物店長リロ。


 昨日4点購入してくれたGさんが今日も見に来てくれる。
今度は旦那様もご一緒に。旦那さんは日本人で、バイオリン職人さん。
そして作品の事など話しているうち、一番大きな作品も持って頂く事になった。
びっくり…! 

ベルリンから鈴木君や、
偶然ドイツに来ている日本からの知人さんもはるばる来てくれたり。
前回の堀田さんの個展の時に知り合ったお客さんからは帽子の
プレゼントまで頂く。ありがたや。
 
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プレゼントの帽子でセルフポートレイト。
ビビッドピンクでアンテナ付!!
これはベルリンで被ったら目立つ!!冬はこれでいこう。

無事にオープニングを終えて、
リロのレストランで打ち上げ。
リロは店長なのに店で一番テンションが高い陽気なイタリアンで、
今回小さい作品も買ってくれた!
ありがとうと言ったらものすごい力で握手とハグされたのちに
頭グシャグシャーからガッ!と肩組んで一緒に飛び跳ねた。
すげえ店長だ…

店内はものすごい爆音でもりあがっており、
病み上がりで喉が痛い自分は声を限界まで出して話したため、
帰りにまったく声がでなくなった。

さてこれから1ヶ月、どうなることやら。
財産フル投入の滞在と制作だったが、
とりあえず破産は間逃れた…笑
 
展示風景はまた改めて。
ご来場いただいた皆様、ご協力いただいた皆様、ありがとうございました!

昼まで寝てしまうがみきこさんはまたも朝出動。。

僕がギャラリーに着いたら1人お客さんが来てて、
一番自然光がキレイに入る場所に作品10点くらいを並べて、
みきこさんと話している。
すんげー近づいて見たりしながら、
作品についての質問もされた。

この作品の支持体と素材は何を使っていて、10年もつか?という質問から、
作品毎にどういう意図でこの色とこの配置なのか?とか
この構図は私にはこうみえるけど、どうなの?とか、
うおお、これは答え甲斐のある質問でテンション上がる。
できるだけ、構想したときの狙いとか、
描いてる時の感覚に近い言葉になるように説明する。
私はあっちのシリーズはピンと来ないけど、
こっちのシリーズはすごく良く感じる、
みたく意見も好みもハッキリしていて、すごい。

そうしたら、4点の購入を決めてくれた…!
破産寸前まで来てたけど生き延びられる!

みきこさんに聞けば、この方は2月に初めてこのギャラリーで
小さい自作を展示したときに気に留めてくれて、
その時はもう売れてしまってたので今回まで待っててくれたらしい。
それで展示前日来場とのこと。
ははあ…なんとありがたいことか。
とても気品のある感じの良い奥様で、
ストールも作品に合わせてドット柄!

こりゃあやる気倍増。

小さい作品を奥のスペースに並べる。
数時間奮闘ののち、結局一列に間とって並べるベーシックな展示がベスト。

いくつかのはみ出した作品は展示しなくても良かったのだけど、
そこはみきこさんの主張で、展示していた方が売りやすいってことで、
空いててメイン展示の邪魔にならないスペースを作り
とりあえず持って来た作品22点は全部見える形にした。

途中抜けて散髪に。
昨日のお姉さんの1人ひろこさんは美容師さんで、
オープニングに向けてボッサボサの髪を切ってもらう。

みきこさんのとこの作家さんは皆オープニング前にひろこさんに
切ってもらってるらしく、
「ワックスとかつけたくないでしょ?みきこさんとこのアーティストはみんなそう言うんだよね〜」
と…わかっていらっしゃる!!あんなメンドクサイものはつけたくない。
ナチュラルでキレイに整えてくれました。

その後ギャラリーにも駆けつけてくれて、
掃除を手伝ってもらう。ありがたや。

そして照明。ここの照明は高い天井からの蛍光灯が基本で
そんなに明るいものではないし、スポット照明のレールがほぼ無い。
でも自作は透明部分が多いので、
光を強めに当てればそれだけ絵の中に光が入って
いい効果を出せる。
ここでもけっこうワガママ聞いてもらい、
ネジで取り付けるスポット照明の数を無理矢理追加したり、取り付け直したり
これも夜遅くまで何回もやり直す。

深夜にさすがにみきこさんも明らかに限界に達している状態だったけれど、
ギリギリまで粘らせてもらう。

一番シリアスな価格の相談の時も、
ワガママ生意気言いすぎてすいません…だったけど
後悔もしたくないので今のうちに言える事は言っておいて
後から誰かに愚痴ってもらえたら…と願う、搬入ハイな状態。

みきこさんは猪突猛進タイプで、
けっこうムチャクチャなことも言うけど笑
こっちもいつにも増してぶつかっていける。

僕は顔がヤギとかインパラとかガゼル系で、ひ弱体型なので
いわゆる草食タイプと思われがちだが、
頑固で性格が悪いということは
ちゃんと伝わったはず!?

明日の夜がオープニング。
展示の詰めもあと少し。
やはり帰りは3時。

昼過ぎまで寝たら、夜中よりは体調回復。
完治はしてないっぽいが十分動けるレベル。
やれやれこんなタイミングで情けない。

今日もみきこさんは朝から活動してて、
毎日ほとんど寝てない…!アスリートだ。

作品の場所決め。
2回空間を見に来ているので
それとなく展示のイメージは持っていたけど、
いざ並べてみるとやっぱりイメージとズレがでてくるし、
みきこさんの意見と擦り合わせながら、
今日も手伝ってくれてるフランクの意見まで聞きながら、
(フランク自身もオルタナ系ギャラリーをやってるようで、いい意見もくれる)
入れ替え入れ替え。

今回の展示は、メインの壁面2面で大きめの作品をとにかくゆったりと
余裕を持たせて見せ、ギャラリー奥のスペースに小さいのを置くってのは
絶対やりたいことだったのでそこは猛烈主張。

夕食はみきこさんとみきこさんの友人のお姉さん達と家鍋プチパーティに誘われる。
ギャラリーが忙しい時に助っ人に来てくれる頼もしいお姉さん達だそうな。
鍋とか超久しぶりでうまかった!
ハンブルグに来てからカロリー摂取が5倍くらいになってる。

しかし三十路にもなって、
優しくオシャレで正常な世界に生きるお姉さん達に囲まれると人見知りとプレッシャーで
どうにもこうにもアップアップ。自分の内弁慶っぷりを思い知る。
何か話題を…と考えたって、
(いや〜最近排尿の後の残尿感が気になって、、ははは!)
とかしか思いつかないので諦める。
こうして美術の世界に常に回帰する心を獲得し続けるのだ。


ギャラリーに戻って来て続き。
結局丸一日使って配置を決める。
メインゾーンはバッチリ決まった。

あとはチビ作品と照明。
余裕を持たせて搬入期間を取ってもらったつもりだったけど、
なんだかんだでギリギリか。

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ドイツ国内のアート展示情報誌。
自分の作品がカラーで入ってる!これはうれしい!
みきこさん気合いいれてくれてます。

ちなみに自作の下の画像は、
アンセルム・ライラ…うげー
近くの美術館で大規模な個展やってるためにこういう並びになったようだ。
なんというプレッシャーだよ。

この日も帰りは深夜3時過ぎ。毎日この時間。
のど飴大量摂取。

広瀬さんはこの日帰国。

さて本格的に搬入開始ってとこで、
喉の痛みが悪化して体がだるくなってくる…これはヤバい感じだ。

しかもギャラリーはフェア出品直後で間髪いれずに自分の個展なので、
まずはフェアの残骸を片付けるのを手伝うのを協力、肉体労働…!
この日もフランクがいろいろ運搬の手伝い。
みきこさんは睡眠3時間くらいなのにがんがん動いてる。

夕食は日本食屋さん。うめー!
フランクはしめさば食ってる…納豆も食えるらしい。
そしてこのおっさんは夜になればなるほど元気になる。
英語力は似たようなものなのでたどたどしいが、

下ネタの時だけは意思疎通能力がアップするから不思議だ。
日本語のエロ用語は積極的に学習しているらしく、
「Bukkake! Bukkake!」とうれしそうに言って来るので、
「フランクはそんなにブッカケがスキなのか?キモいな。」
と返すと「いや好きではない!」って…
単語言ってるだけかい中学生か!

しかし不思議なものでわずかな下ネタを交わすと妙に親近感が増す…
下劣な男子文化ってしょーもねえが、僕はけっこうそれで助かってきたこともある。
ただし年齢を重ねると、セクハラに一転する可能性が上がるので、
その部分の感覚は研ぎすませてならねばならん。

とか思いながらギャラリーとギャラリーの倉庫を行ったり来たりしてるうちに
どんどん体調が悪化。完全に発熱してるな。
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これは倉庫マンションのような建物。
開けようとしてる扉の奥がギャラリーの倉庫で中には
作品ぎっしり!

夜中にようやく運び出しが終わり、
ようやく自分の作品の位置決めを試すも、
フラフラすぎてもうダメ。

あらかじめ決まっていた大きい作品の位置を言うと、
フラフラな自分を見かねたのか
フランクがものすごいスピードできっちり展示してくれた。
突然頼りになるおっさん!

みきこさんも、普段はフランクの戯言を半分くらい無視しているが笑
この作業の迅速丁寧さとフレキシブルな行動力については信頼を寄せているとの事。
なるほど。

帰宅後、悪寒にやられる。
厚着かまして爆汗かいて明日の昼には復活しないとやばい。

搬入の日。

ベルリンからハンブルグへの作品移動は、
みきこさんが手配してくれたトラックで運んでもらう。
運転手はフランクというMIKIKO SATO Galleryをよく手伝ってくれている方で、
夕方過ぎに2人が僕のスタジオに到着する。

作品運ぶ際に表面側の扱いに気をつけてくれと言ったら、
フランクが 「ああん?」という態度を取って、
みきこさんとドイツ語でケンカしながら運んでいる…

何言ってるかさっぱりわからんのだが、
「オメーの梱包が甘えんだよ」と「気ぃ遣い過ぎ」
というのは何となく伝わってくるので謝りつつも、
見てるとエラく手際よくきれいに積んでくれる。
大丈夫そうだ。

そして夕飯を食べるとフランクの機嫌は上々になり、
3人トラックに乗ってアウトバーンを行くわけだが、
車内で放屁をかましたり、160kmのスピードをかましたり、
歌ったり、みきこさんはすっかり呆れている。
フランク…この鼻デカヒゲおっさんファーストインパクト強すぎ!

2時間半でハンブルグに到着、
ギャラリーの中ではハンブルグのフェアで展示を終えた
作家の広瀬敏史さんが作品の梱包をしていた。
ギャラリーのウェブサイトで作品が目に留まっていた作家さんだったので、
実物見れてよかったー
本人はマイペースでニコニコしつつも、
みきこさんを自分のペースに巻き込んじゃうような魔力を持っていた。

今自分が滞在してるレジデンス、もともと広瀬さんも滞在してたところなので、
話も通じやすかったみたい。感謝!

作品を置いて、搬入初日終了。
やや喉がいたい…嫌な予感。

出品予定の作品は思ったより早く揃った。
ラストスパートでは鈴木君が何度も手伝ってくれたし、
ドクメンタ期にもすばらしいアシスタントの皆さんがいてくれたおかげです。

財力があればマジで助手が欲しいと実感した。

そんなわけで余分にもう1つ作品を作って、それもギリ完成。
梱包を始める。

梱包はパネル作りの次に苦手な作業。
とにかく表面に梱包材の跡が付かないようにいつも苦戦してるのだけど、
modular(日本でいうハンズ)に、フワフワな綿のような梱包材が
1mあたり4ユーロで売っててこれはナイス発見!
これで巻いてユルくプチプチで巻けばなんとかなりそうだ。
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これがフワフワ。


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これ出展作品の中で一番チビな絵画。
石鹸ではないぜ。壁につければそれなりに絵画の佇まいになるのだぜ。

ベタニエンオープンスタジオ見る。
前回とあまり変わってない作家さんもいたが、
下のギャラリーのインスタレーションはいつも大規模。
それに、
手塚さんの作品は新作で、
日本人びいきでもなんでもなく、
個人的には今回のオープンスタジオで一番作品パワーがあるように見えた。
重力の作品への取り入れ方が繊細で上手いなあ。

カッコええ〜 とただ関心してばかりでもいられない。

昨日のけんさんのスタジオでも同じ事思ったけど、
こういう先輩作家のガチ生き様の鱗片を見れているのは貴重、
脳裏に叩きつけておく。

けんさん夫妻が、
個展の壮行会と題してカレーパーチーを開いてくれた。

人間が食べるべき上質な食べ物を久々に食べられる…!
ここまでしてもらって、個展がスベったら向ける顔が無いけれども
全力は尽くしたはずなので、あとは展示をビシッと決めるしかないのだ。

鈴木君にも声をかけ、先輩自慢する。
前々から紹介すると言ってたので、良かった〜。

けんさんのアトリエ風景と、作品クオリティ、
あやさんとのチームプレイは、
やっぱり何度来ても刺激的。

そして、ベルリンも雪が降りそうなくらい寒くなって来てて、
上着を買うヒマも金も無いので秋の格好してたら、
マフラーと暖かいフリースを頂く…!ゴッドだ。

そんなけんさんのウェブサイト!
http://kenichirotaniguchi.com/


先日わざわざスタジオに来て頂いて作品の話をしたクラウスが、
KURTUR PORT.DEというサイトにテキストを掲載してくれました。
全文ドイツ語なのでまだ自力で読む事ができないのだけど…
とりあえずGoogle翻訳のめちゃくちゃ翻訳から書いてあることを予想しつつ、
個展もろもろが落ち着いたらちゃんと訳してもらおうと思います。

http://www.kultur-port.de/index.php/kunst-kultur-blog/kunst-kultur-bildende-kunst/5821-yuki-yamamoto-parallel-circles.html

このテキストに加え、個展のリーフレット用にも書いてくれた。感謝!

MIKIKO SATO GALLERYは個展の際に
画像とテキストの入った三つ折りのリーフレットを作ってくれるので、
作家としてとてもありがたい。

  Yuki Yamamoto Solo Exhibition

「Parallel Circles」
 

 parallelcircles
     Parallel Circles   220×180cm    2012
  Photo : Roberto Kai Hegeler


 会期: 2012年11月20日~12月20日
    〜金 14時〜19時迄

    火


       オープニングレセプション 11月16日 19時~


 会場: MIKIKO SATO GALLERY

     

              Klosterwall 13

              20095 Hamburg Germany


             Tel :  0049 40 32901980



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ベルリン滞在も半年が経過。
こちらで制作した新作をメインとした個展になります。
 
タイトルに「パラレル(並列、平行の意味)」という言葉を使っていますが、
(札幌の某美術展タイトルをパクったわけではなく偶然です) 
上の作品が出来た際に浮かんだタイトルです。

レイヤー構造を持つ自作は、複数の平面が同一矩形に並んでるとも言えるし、
新作では同じ大きさの円にある程度の規則をもたせて並べた構造も追加、
かつ自身の今の立場が北海道とベルリンの両方の時間軸を意識してしまう状態、
これらの要素がパラレルという言葉と繋がったと考えています。

3月の「絵画の場合」展で発表したグリッド状の作品からの要素を、
従来の円だけで画面構成する作品にフィードバックさせたり、
パラレルという言葉から画面構造を作るアイデアを出してみたり、
今までとはまた少し違ったエッセンスを取り入れています。


展示風景等は展示が始まって落ち着いたらまた順次アップしていきます。 



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