やまもとのグレーゾーン

札幌の絵描き山本雄基のきまぐれ雑感と日常。

2016年11月

札幌から台北までは関空経由の便だったので、帰りに大阪に寄る。

ちょうど今年ホルベインスカラシップ奨学生にも選ばれたり特注品をお願いしてたり何かとご縁のある、ホルベイン工業の絵具工場見学目的だ。

観光ではまず行かないだろうエリアに赴くと見えてきた工場。これはテンション上がりますわ!
初めて見る専門の機械が並ぶ中で、担当の方から説明を受ける。
顔料とエマルジョンを精細に混ぜるローラー、 混ぜた絵具から気泡を除去するための真空機、耐光性をチェックするための箱、粘度を調べる機械、、、次々に繰り出される色の品質安定や発色へのオタク的アプローチの数々。質疑応答はつい延長戦、授業状態となる。

以前、ドイツで大きな作品を購入してくれたお客さんから、とにかく耐久性のことを何度も聞かれたことがあった。この絵画は10年保つか?パネルはどんな素材か?絵具はどこのメーカーのどの種類か?などなど。その時の回答として、同じ素材と同じアプローチで作った7年前の作品は劣化していないことを確認しているので最低でも7年は大丈夫とか、使ったメーカーの画材は口頭で説明したのち素材を写メして後でギャラリーに送ったりした。
そんな質問は初めてだったが、そりゃそうだ、100万円レベルの買い物だもの確認人できることはしておきたいよね。。。
それ以来、素材に対する自意識を強めに持つようにしていたので、今回の訪問は悲願であった。
直接画材研究しているメーカーとの関係性を持てる強みよ。ありがたい。
 
絵具製造過程の中には想像以上に手作業感も多く、僕の特注絵具を混ぜてくれている技術者さんからは「これはじゃじゃ馬って呼んでるんですよ(笑)」と。混ぜ方を間違えると、ある粒子が摩擦で熱を持ってしまって均等な粘度にならず塊が発生するんだって。最近ようやくそのさじ加減がわかってきたんだとか。ふへ〜、頭が下がります。。。
化学実験室のようでありながら、町工場的なアナログ感もあって、絵具に対する愛着が全く変わってくる。アクリル絵具はいかにも工業的でそこが気に入っているんだけれども、それでいて絵具そのものに人の気配を意識することができるようになったのは大きいなあ。 

同じ日の僕が来る前にも、外国の絵描きさんが工場見学に来てたらしく定期的な見学需要があるようだ。
北海道からはなかなか遠いけど、今は飛行機も安いし画学生有志で団体見学ツアーとかオススメしたい。 

台湾ももう3度目だ。出張感があります。台北の街歩きも慣れてきた感じ。

今回は台湾で一番規模が大きくレベルも高いアート台北にAdmira Galleryより参加するのが目的だった。
会場に着いてみると、初対面、ギャラリーの通訳係としてL君が入ってくれていたので、言葉の問題がめちゃくちゃ楽!
L君は日本に2年滞在してたらしく、にしても信じられないくらい日本語が上手い。敬語とタメ口も完全に使い分けている。。。すげえっす。普段はフリーでデザインライターなど色々やってて、日本と台湾のデザイン他文化紹介のためのウェブサイト運営もしてる。(http://designsurfing.biz/about/) 頼もしい。

ブースの壁が高くてなかなか綺麗だ。会場もデカイし通路も広く、フェアにしては随分見やすい。
Liang galleryのHSU-Chia-Weiの映像作品や、日本から日動コンテンポラリーの坂本和也さんの大作などがざっと見て回った感じいいなあと思うなど。
自分のお向かいにはパトリシアピッチニーニの作品が!久しぶりに見た。
当時よりフィクション要素20パーセントくらい減らした感じ。

時間が少しあったので、台北ビエンナーレも鑑賞する。
うーん、前回の台北ビエンナーレがやたら面白かったので、
それと比べると印象が落ちてしまうな。ポリティカルでリベラルな側面が強めなんだけど、
飛行機でこっちに向かってる間にアメリカでトランプが大統領選に勝ったというタイミングだったので、
なんだか時代の方が先に行ってしまった感じもして。
ここでもフェアで面白かったHSU-Chia-Weiの映像が好印象。台湾イチオシの作家なのだろうか。

その他ギャラリー巡りも何件か。特に印象強かったのは、誠品画廊(ESLITE GALLERY)。
フェア会場からも近い市政府エリアにある誠品信義店というめちゃデカい本屋兼オシャレな雑貨屋さんもいっぱい入ってる面白いデパートがあるのだけど、なぜかその最上階にこのデカいギャラリーがある。日本のデパートのギャラリーのような類では全くなくて、明らかに国内有数の現代美術の企画ギャラリーだ。僕が見た時はマイケル・リンの新作展をやっていた。 
台北のギャラリー事情、次回来る時はもうちょっとリサーチしたいな。

ちょうど同じ時期に、けん先輩も台北国際芸術村でレジデンスに参加していたので現地で乾杯!
作家活動してて異国で再会なんて嬉しい話だ。
レジデンススタジオに入れてもらったけど、制作環境として充分なスペースでした。
レジデンスによくいるリサーチタイプではなくて、工具もがっつり持ってきてモノとしての作品をいつも通り作っていたけん先輩。レジデンスでもこういうアプローチは可能だということ。
けん先輩に、隣のスタジオの韓国のペインターYoon Jongseokさんを紹介してもらって盛り上がる。
絵の具を注射器に入れて、それでのみ描写をしているので極細なラインの集積でイメージが出来上がっていた。けん先輩と同じく、がっつしモノ作る系同士気が合うんだそう。いいなあ。
 
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