11月2~4日に、相模原市で毎年開催されているスーパーオープンスタジオ(以下SOS)に、

http://superopenstudio.net

なえぼのアートスタジオとして運営5名で参加してきました。

参加スタジオのひとつであるスタジオ牛小屋さんで交流展示形式でメンバーの小作品も展示してもらった上に、
バスツアー参加、シンポジウム登壇、懇親会、牛小屋メンバーでペインターの大槻さん家連泊し朝まで会話、造形大訪問、、、
リアルタイム投稿する間が全くないほど、寝てる時間以外は常に色んな方と密に交流し続けてました。得るもの多し。

僕たちのなえぼのアートスタジオは、改めてなかなかデカいスタジオなんだなとも実感。

感覚的にはSOSの参加スタジオ4つ分くらいの人数と部屋数があり、自前でオープンスタジオやイベントをやってるので、 SOSの縮小版のような集まりとも言えます。
なので、個別のスタジオとの比較はもちろんのこと、 SOS実行委員会やディレクターの動きも含めた運動全体のコントロールにも関心を持てました。
 

なえぼのにはアーティスト以外にS-AIRやコジカのビューイングルームなど入居しているなどの特徴がありますが、
1番違う点はなえぼのは公的機関や公的資金とは関係のない運営形態ですが、
SOSは、本拠地である橋本エリアが、3つの美大が近隣にあること、リニアの発着駅が作られること、米軍基地関連による再開発計画があること、ゆえの特異な現象として、あれだけの数のアーティスト(参加スタジオは20超え、飲み会だけで40人くらい参加、全体では100人超えとのこと)と行政が協力関係となっているところ。
これは良い意味で、異様な光景でした。
そしてアーティスト側と行政側両者の架け橋になるアートラボはしもと学芸員、加藤さんの存在の大きさや、
特に議題や問題意識を引っ張る役を引き受けている山根くん(今回直接やりとりしてくれたディレクター)や
千葉さんや井出さん始め、運営に関わるアーティスト達の大人なコミュニケーションの態度には実践を踏んできた貫禄があり、感銘を受けました。
中でも前乗りして参加したSOS夜会は、僕が聞いてきた検閲の議論で最も真っ当な内容のひとつに思えました。
同世代のアーティストと学芸員がテンポラリーな問題意識と知識を共有し真摯に共闘する姿は、極めて健全で理想的な状況でしたし、
またアーティストの群れとのやりとりで蓄積された行政側の対応体験のトラブルシューティングは、
近未来の全国の芸術文化行政の貴重なマニュアルになるんじゃないか?とも思えました。

僕らが参加することで与えられた命題は、
「アーティストが作品制作以外のこと(この場合共同スタジオを運営すること)をやる意義」と「他地域の美術コミュニティと連携することで何ができるか」の2点が大きかったのだと思っています。僕が登壇したシンポジウムではうまく答えられなかったかもしれませんが、、、
前者においては、立ち上げて3年経った実感から、
・メンバーの知り合いがそれぞれ訪問することや、札幌を訪れた関係者がアートスポットとして訪ねてくるようになり、スタジオビジットが格段に増えた。
・美術に対して真摯に向き合っているメンバーが持つ違った技術や考え方が、それぞれを助けるケースが増えた。
・近くに異なる技術・知識を持った作家がいることで、よりよい作品制作のアイデアに幅が出せるようになること。
・大きな共有スペースなどもシェアできるようになり、周りがアーティストばかりなので精神的にものつくりに向かいやすい場になっている。
、、、といった具体的なメリットが浮かびます。
作品を作る、作品を見せる、作品について話す、興味関心を共有する、、、ひいては美術の事を考えるための場、
アーティストが集まったならではの場として機能していることが、意義と言えます。
札幌では、行政主導の国際芸術祭や新しくできたアートセンターの市民交流プラザが、広く市民に現代美術を親しんでもらうプログラムを先導してくれていたり、芸術祭から派生してできた天神山アートスタジオが外部のアーティストを受け入れる機能をもつことで世界中国内中アーティスト同士の交流が生まれてます。
そのぶん僕らは少数で、わかりづらい、オタク的なオルタナアプローチを大事に、ここに来ればエッジの効いた地元作家の美術観が確保されている、という棲み分けができつつあるのかな(まだまだやるべき実践は山ほどありますが)、と思います。
ただ、元々は物件情報がたまたま降ってきて、見に行ったらその空間に、皆がすっかり心が奪われてしまったから引き受けた面もあるし、意義以前のきっかけがスタートです。
運営で制作の時間が取られるという点に関しては、制作と同じくやりたくてやっている行為なので自身のためになっていますが、制作と運営の比重のバランスは常に考える必要があり、運営が無理の出ない範囲で収まるように気をつけています。

後者においては、
今回ずいぶん近い距離で、違う地域の方々と、作品作る人、観客との間をつなぐ人、ごちゃまぜになって直接密な交流をすることができ、それぞれの状況、問題意識を共有しました。例えば高知県美の塚本さんともたくさん話せて(翌日橋本からあざみ野の「しかくのなかのリアリティ展」クロージングに乱入した組)、高知への精神的距離が縮まったり、今度行ってみようかな、という候補になるだけで視界範囲が拡がります。どのエリアの人からも、ウチは閉塞感があるからそっちは羨ましい、とよく聞きます。隣の芝は青い、札幌も高知も、名古屋や京都や福岡も、僕らからは首都圏に見える相模原ですら、なんだなあと。
全国それぞれのエリアに、なんか面白いヤツらがいるらしい、と認識し合って適度に行き来することは、全てのエリアにとって健全なことであるはず。移動や異文化に触れること自体が、新しいアイデアへの刺激のひとつ。LCCで全国の移動もしやすくて、ネットで自分たちの活動を発信しやすい今らしい動き方を意識的にしていきたいです。
また、今回なえぼのは人だけでなく作品も送って展示してもらえたので、輸送や経費の問題はあれど、作品を含めた相互交流は大きな意味を持ちます。
嬉しかったことのひとつに、絵画教室に通っている小さなお子さんが、僕の絵を鉛筆で模写して「カラシャ」と愛称をつけた作品を見せてくれたことがありました。
「なんでカラシャなの?」「カラフルでシャボン玉みたいだから!」良い、そして地と図のニュアンスが理解できてる!
以前から知ってくれているお客さんも見に来てくれていたみたいで、嬉しいです。

言うまでもなく、沢山のアーティストの作品を一気に見ることができたので、刺激をもらうこともできました。
まずはSOSの皆さんの作品と人をなえぼので招聘し、相互交流が実現できるよう計画します。

僕らなえぼの運営メンバーもそれぞれ持ち帰ったことは様々だと思うので、そのうち改めてなえぼののウェブサイトに、 SOSレポートできればと思います。
連携を実現していただいたSOSの皆様、本当にありがとうございました!!!!!!