昼に突然地元の母からメールが届いた。
ラーメン屋に並んでいるという報告と、
その長蛇の列を撮った写メールだった。

おもしろいのは、
ゴールデンウィーク中に全く同じメールが、
友人のM君からも届いたこと。

なぜラーメン屋の行列に並んでいるだけで写真付きメールが次々と送られてくるのか。
それには理由があるのだ。

この地元帯広市で有名なラーメン屋・寶來(宝来 ほうらい)は異色なラーメン店。

何が異色かと言うと、まず麺が手打ちで、うどんのように太い。
そしてスープがぬるくて若干すっぱくて、臭い。
創業以来スープを注ぎ足しながらここまできたという噂があり、
底の方は若干腐っているのではという説すらある笑
そんな発酵系スープなのになぜかあっさり。
そもそも食べる以前に、臭みを含んだ蒸気が暖簾の横にある排気口から排出されているので、
店内に入る時点で勇気がいる。

水のおかわりを頼むと、
おばちゃんが2リットルのペットボトルの空容器の中に水を入れて、
少し凍らせたものをドンって持ってきてくれる。

要素を並べただけでは信じられないかもしれないけれど、とにかくものすごい人気なのだ。

親子3代でファンだという人もいれば、
週一で食べなきゃ禁断症状がでる人もいるらしい。
麻薬が入っているのか!?

店の客の8割は、メニュー表に載っていない「シナチクラーメン」を頼む。

僕は高校時代に噂を聞いて初チャレンジするも、当然のように違和感を覚えた。
しかし浪人時代に、すでに家族で寶来の虜になっていたM君に何度も連れて行かれ、
3度目あたりで「あれ…わかってきた」という感覚に陥り、
以降は行くたびに倍くらいの美味さ感じるという事態に陥った。
今では世界一うまいラーメン屋だと確信している。

うちの家族も皆、あそこはさすがにキツい的な拒否反応を最初示していたが、
そのおいしさを熱弁し続けたら、
親父を除いてみな同様に何度目かで虜になった。
親父はどうしても受け付けないらしい。
何度食べてもあのクセのある味に耐えられない、アンチ寶来ももちろん一定数存在するのだ。

M君とある日店内で、なぜこんなラーメンがうまいのかという話をしていたら、
相席のサラリーマンが突然会話に入ってきて
「…ですよね?僕も帯広に赴任してすぐに、行列が気になって食べてみたら、
本当にマズすぎて吐きましたよ!
でもどうしても行列ができていることを解明したくて、
果敢にチャレンジしたら、何度目かでわかってくるんですよね」
と熱く語ってくれた。
僕らの話に共感するあまり話したくて我慢できなかったんだろう、やっぱみんなそうなんだ!!
肯定派も否定派も寶来を体験してる人は、
寶来話になったとたんに楽しそうに盛り上がるのもまたおもしろい。

ラーメンの概念を崩し、特別な価値を再構成するラーメン屋と、
それについてくる帯広市民。ハイコンテクストすぎる。
サブカルとも言えるが、世代幅の広さと実際の味のクオリティが突き抜けている。
この地元の事実に僕はささやかな誇りをもっている笑

ところがこの寶来、
店主がもう結構なお年で病気になってしまい、
この5月で閉店することが決まっている。

それで街中のファンが連日詰めかけているらしく、
ものすごい長蛇の列(2時間待ち!)になっているらしい。
それを自慢げに報告してくる友人や家族。というわけなのでした。

僕は実家に帰る暇がなくて、
閉店までにはもう食べる事ができずとても悲しい。
機会があれば多くの人に体験してほしいなあ。


<追記>
2016年夏にまさかの続報が。
http://yamamotograyzone.ldblog.jp/archives/52247666.html