制作過程を紹介編。

一日中宴会をしているわけではありません。宴会は大抵夕方からなので、社会科見学が無い日は、もちろんみんなストイックに制作に励んでいました。
 今回の絵は、自分自身で描いてる過程が面白くて、特別な技法を使ってるわけでもないので公開。それにこの絵はスタリソンチに置いていくので、若干過剰説明します。

 僕はキャンバスを渡されてから間もなく、スタリソンチの風景が良い!と野生の勘が働いたのでさっそく広場の写真をバシャバシャ撮り始め、絵の構成を決める事に。

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展示予定のギャラリーの入り口付近から見える風景がこんな感じで、絵を見たお客さんがその後すぐに同じ風景を目にするってのはなかなか良い。
 それに僕が最初にグッと来たのはこの広場。初日に行ったカフェマリシェンカや広場の雰囲気が目に入る。
街には教会など目立つ建物もあるけど、この街のノーマルっぽい見栄えのこの風景を絵画に変換しようと決定。


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キャンバスが何枚もあるので、直接絵具とキャンバスでエスキースを試みる。最初はモヤッと空気感のある感じにしてみようとしたけど、どうもピンと来ない。着いた日はもっとガンガン晴れててシャープな風景が飛び込んできたんだった。それにやっぱ筆がなかなかノッてこない。なにせ風景描くのは6年振りなので、イメージを絵具に変換する感覚をつかむのに若干時間が必要みたい。


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イメージを絵具に変換する腕ならしのため、単色で一枚習作。色は置いといて、筆遣いの勘を鍛えてみる。


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いつもの作風の作品も同時進行してます。でもこっちは滞在中に終わらなそうだから日本にもって帰って個展用に。


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本番。キャンバスに透明メディウムを塗っておいて、絵具がちょっと浮くように仕掛ける。描写については筆跡に緊迫感を与えるために、下描きなしで。最初のベンチの位置を決めるのがタイヘン。


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下の近景を描き終えて、次は広場を右側から少しずつ描写。


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周りは散らかっていきます。


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遠景も右側から順番に建設。Benに「You are painting machine! like a printer jijijiji」と言われて、なかなかイイ褒め言葉だなあと喜ぶ。でもねープリンターにそう簡単には勝てませんな。筆跡も、平筆をオージュンさんっぽく使ってみたいと意識するけど、誠に難しいよ。

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ここで一旦様子を見る。脳内の完成予想図では、空と広場は空白にしようと思ってたけど、どうも物足りない。絵としては成立しそうな気もするが…筆置きタイミングに悩むところ。


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おや、隣の部屋で描いてたアントニオは筆が早くてすっかり完成させている。持ってきた作品まで並べて余裕の仁王立ち。「まだ描いてるのかニヤリ!」とおそらくポルトガル語で言ってきた!むむむ。


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結局、地面にゴールドを薄くかけて、空を描きくわえる。空のバランス調整中。


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最後ニスがけして発色を良くして、完成!
総制作期間は約一週間くらい。
タイトル『時間よ止まれ(stary sacz)』
矢沢永吉なタイトルにしてみた。

うん、なんか、なぜか6年前の作品とちょっと、似てるな笑
(これが6年前の作品。当時住んでた寮の裏の雪山のある風景です)
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この時は筆触も薄ーくして、ネガティブな風景寄りにしていたけど、今回はもっと描写にポジティブなキモチを込めたつもり。少しは絵具と筆の扱いもマシになったかなあ。

しかし実際、この街と北海道の空気の感じはよく似ている。温度も湿度も、空気の霞み方も、山が見える眺めも、草の生え方なども。だから似たのだと思う事にしてみる。

どういう支持体に、どういうもので、どう絵具を乗っけるか。というのが、風景だろうがなんだろうが僕にとって一番の醍醐味で基本。
 風景ならば、その風景のイメージと絵画そのものの構造が入れ替わり見えてくるような画面が理想です。
 でも反省点は完成時点で山ほどあって、キャンバスに絵具を置く難しさを久々に痛感。

 そもそも僕は、絵がうまく描けないコンプレックスをバネに、絵画に取り組んでいる感を常に持っている。
 つーか、油彩とか、絵画を専門にする人にも上手い人はもちろんいるけど、割合として上手いマンガ家やアニメ描く人のほうが絵が描けるような気がするのに、その上で画家とはなんぞや?という疑問がある。なんとなくその答えはわかっている気もするが、明確ではない。
 
 制作しながら、宴会しながら、その合間にしっかり村上隆のニコニコ動画チェックもしてたら、「絵の勉強して、才能あるやつは漫画家やアニメーターやイラストレーターになって、残りの才能ない頭の悪いヤツがアーチストになる」みたいなことをバッサリ言い切った。おお、すっきり納得!

 僕の場合は絵がヘタな分、絵画だけが持つ特有の技術や魅力をどうにか発見して、発酵させて、悪あがきで太刀打ちしようと思ってる部分がある。

 風景の中にも絵画を発酵させることができたら画家としてもう言う事なし!なのだけど、まだまだそうもいかないようだ。

次は搬入〜展覧会の様子の予定。

リアルタイムの僕は、明日スタリソンチを経ち、クラクフ(日本でいう京都のような存在)に向かうのです。