イタリアからスペインの間にわざわざニースに寄った理由はもちろん、
マティスのロザリオ礼拝堂を見るためだ。
 
正確にはロザリオ礼拝堂はニースからバスで1時間くらいの
ヴァンスという小さな町にある。

そんで事前に行き方をいろいろ検索してたわけだが、
どうも今はニースのバスターミナルをリニューアルしてる最中で
乗り場がバラバラになっているらしい。

結局正しい最新情報が全然わからんまま着いてしまった。 
持ってるガイドブックも古い情報しか載ってないのでやばい。
夕方にはバルセロナ行きのバス(ユーロライン)にも乗らなきゃならんのだが、
その乗り場もわからんのでまだ予約もしていない。う〜ん不安だ。

なので親切なホステルのお兄さんに必要なバス情報を
できる限り検索してもらって、
あとはデタトコ勝負。いざ出発。
 
朝一で動いてもかなりギリギリの予定なので
あまり写真を撮ったり街に感動してる余裕も無い事をご了承ください。

まずはニース市内にあるマティス美術館へ。
教えてもらったバス停が宿から歩いてすぐだったのでここは問題無く来れた。

割とコンパクトな美術館で入場はなんと無料。撮影は禁止。
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初期から晩年までの作品が、ちょうどよいボリュームで展示されていて見やすい。
特にブルーヌードやスイミングプールの切り絵作品を見る事ができて良かった。
切り絵もやはりその大きさに驚いてしまう。
礼拝堂のプランドローイングや模型等もあるので、期待が高まる。

ホントは近くにシャガール美術館もあるのだが時間がないので断念する。
そのままヴァンス行きのバス停へ向かう。
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トラムに乗りつつ、街の少し東側の何の変哲も無いバス停に着く。
がしかし。
教えてもらったバス停にはヴァンス行きのバス表示はなかった。
さあ困ったぜ。
こんなこともあろうかと早めの行動を取っていたものの
ホントのバス停はどこだ?

事前にいくつか調べてた情報で一番信憑性の高そうなのに賭けてみることに。
街の南側に横断している長い公園の南端、ビーチの目の前だ。
トラムで少し西まで戻り、歩く。
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この公園を大規模工事してるから、バス停の混乱が起きてるんだろうか。
まいっちゃうなあ。

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お祭りの時期なのか、ちょっとグロい顔のヤツを横切り、

ヴァンス行きバス「400番」の表示発見!でもここは到着バス停ではないか?
目の前のレストランの店員に聞いて見たら、
めっちゃメンドクサそうに「ここじゃなくてあっち側」と言われる。
きっと何回も聞かれててウザいんだろうな…
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公園の端っこをぐるっと反対側へ回ると、
マクドナルドの前にあったバス停!

でも停まってるバスは400番じゃなくて94番 ヴァンスって書いてるけど。
運転手さんに聞いて見たら、400番でも94番でもヴァンスに行くから大丈夫とのこと。
出発5分前、ギリッギリなんとかなった…
 
3月初めだというのに日差しは強くて、地中海が青い。
これがニースの光か。

確かに老後に訪れて長期間過ごしたくなるような雰囲気だ。 

バスは海岸線から山の方へ登って行く。
途中、山の上に作られた町が見えた。
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サン・ポール・ド・ヴァンスかな?

何とも素晴らしい田舎の眺めが続き、ヴァンスに到着。
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バス停から10分ちょい歩く。
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「チャペル マティス」っていう看板がぽつぽつ立っているので、
気をつけていれば迷う事はなさそうだ。
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いい眺め。穏やかな山奥って感じの町だな。

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アンリ・マティス通りを登るとついにロザリオ礼拝堂が見えて来た。
開館5分前に到着。何人か並んでる。うお、日本人も。
日本人の海外旅行情熱ってすさまじいな…。

礼拝堂は開館時間が限られてるので、これもサイトで要事前チェック。
 
いや〜…いつの日か訪れたいと思っていた場所だけど
いざホントに着いてみると、ここまで来れてしまうもんなんだね。
まだ入ってもいないのに感慨深くなってくる。

白い壁に青い屋根。屋根の上には装飾的な大きく美しい十字架。
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今まで見て来た巨大で豪華な教会にくらべると
ずいぶん小さくて素朴な存在感だ。

そしてついに開館。
中に入って階段を下りる。撮影はやっぱり不可。
チケットを買うと、フランス語で何やら説明された。
?という顔すると、入って来た入り口の横の窓を指差して
「Fish、Fish」と。あ、窓がステンドグラスになってて、
かわいい魚の絵になってたんだ。
これをちゃんと見逃さないでねってことだったのね。 

礼拝堂に入る。うわ〜…
これまた昨日の最後の晩餐と同じ様な、
立ちすくんでしまう感の共有。

と思ったら、おばあちゃんが、客を全員座らせてフランス語で解説を始めた。
英語しかわからないからと去ろうとした客がいたけど、
いいからまず座って聞きなさい!と強引に座らせてられていた。
おばあちゃんのフランス語は20%くらいだけ英語が混ざっていた。
ところどころ説明がわかる。
この人は牧師さんなんだろうか。
地元の方なら子供の頃にマティス本人に会ってるかもしれんよな。
今思えば聞いてみりゃよかった。
 
解説が終わり、空間に浸る。

ローマからミラノまでで喰らいまくった教会って
どこも特有のちょっと怖い感じの仰々しさというか
すいませんオジャマします…ていう居心地の悪さってのがあって、
それは自分がキリスト教じゃなくて馴染みがないから感じるのだろうけど、
ロザリオ礼拝堂にはその感じが無かった。 
むしろ居心地が良くなるような美しさ。

青、緑、黄色の植物の葉のイメージのステンドグラスから
入ってくる光。黄色の部分だけ曇りガラスになっていて、
床まで届く光は青と緑の部分だけ。
細かい光の調整をしているんだな〜。

壁も天井も床も真っ白なのだけど、
礼拝堂内に入ってくる光はステンドグラスを通過してくるので、
実はその空間全体は淡い緑色を帯びていることになる。
光が入ってくる量と、礼拝堂のサイズのバランスも心地が良い。
決して広くはない空間なのだけど、ゆったりした気持ちになる。
このスケールの感覚、マティスの絵画と一緒だ。包容力すごい。

そのことを利用した仕掛けがあって、
礼拝堂の横に小さな部屋がくっ付いており、
装飾が施されたドアで仕切られている。
装飾越しに部屋の向こうが見えるようになっていて
ここから漏れてくる光が目の錯覚で淡いピンクに見えるのだった。
これがまた美しいこと。タレルの作品に通じる光のコントロールだ。

白いタイルの壁には黒線の大きなドローイングが描かれていて、
それは聖書に描かれたキリストの生涯だ。
どの教会にもキリストの生涯がわかるような絵画や彫刻があるわけだが、
それらを散々見て来た後で、この極限にシンプルになった宗教画ドローイングを見ると
マティスの開放的な感覚がなお伝わって来る様な気がする。
コママンガのようだけどその境界線は無くて
各場面の並列と、場面毎に番号が振られている不思議なドローイングは
他のマティス作品とひと味違う。

向かいに位置するステンドグラスからの光とこのドローイングの掛け合わせ、
光の揺らぎと線のゆらぎが感動的。

祭壇はガサガサしたマチエールの黄土色の石壇で、
これはパンがモチーフになっているとのこと。
キリスト教ではパンが重要なモチーフらしく、
それを祭壇に当てることでどんな意味になるのかはわからなかった…
祭壇の上に置かれている十字架もキリストが線になっているシンプルさで、
テーブルクロスや燭台もデザインされている。

は〜…クリーンだ。心がクリーンになる!
人間なんてドロドロしてて、よって芸術もまたドロドロしてるはずなのに、
芸術を保ったままここまでクリーンな表現に到達してるのは
1つの奇跡だろう!!何なんだよこれは… 

ジーンと堪能して出口の方に移動すると司祭の祭服も展示されている。
これもマティスのデザインで、切り絵から起こしたものだがとってもカラフル。
祭服がこんなにカラフル…不思議だ。

名残惜しいけどニースへ戻る。正に夢のような体験ではないか。
ニースに戻ってからは現実が待っている。
果たしてバルセロナ行きのバスには乗れるのか。 

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ニースの地中海も夕日モードに突入。

バスの終着から歩ける距離にある
宿のニイちゃんに教えてもらったユーロラインの事務所に行くと、
チケットはここで買えるけど、
バス乗り場はなんと郊外のコートダジュール空港の近くだと説明される。
ここじゃないの!?

バス出発の時間までは1時間程。
電車に乗ればギリギリとか言われたけど
不慣れな街でギリギリ移動はキケン過ぎるので、
仕方なくタクシーに乗って、解決。 

検索しても辿り着けなかったので同じ境遇の人へ…
ニース(Nice)のユーロライン(Eurolines)乗り場のアンサーは、ここでした!(2012現在)
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ホントに一歩間違えたら乗れなかったレベルだな。アブねえ〜…。

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どこかから23番のバスに乗ってくれば、
ユーロライン乗り場のすぐ近くで止まるようだ。

これが乗り場だ!
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すげー適当な乗り場な上に、バスの運ちゃんには全く英語通じねえ。
スペイン語!手続きはユーロラインだったけど乗るバス自体はユーロラインのバスじゃないし、
自分ら入れて5人しか乗ってないけど大丈夫なんだろか。 

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行き先も紙っぺら1枚をテキトーに貼ってるだけだ笑

夕日に向かってバスは出発した。
ちなみにもちろん深夜バスだ。バルセロナ到着は朝6時の予定。
途中運ちゃんの自作CD-Rを爆音で流される。すごいセンスだ。

そして、今度はだんだん自分の調子が悪化していった。
パーキングエリアで夕食食べてた時はもうフラフラでだるくて
無意味にイライラしてくる。
あ〜これは絶対Y子の風邪がうつったなあ。
あってはいけない事態だ。
 
車内で相当具合悪くなっちゃって、まともに眠れない。
困ったな。
Y子もまだ本調子じゃないし、バルセロナどうなっちゃうわけ。