南ヨーロッパ鑑賞旅最後の街マドリッド。

宿を出てすぐのマクドナルドで朝食。
イケメン系店員がカプチーノにスマイル顔を描いて、
Y子にニコヤカにウインクで決めて来た。
さすがラテンの血はイケてるなあ。

まずはプラド美術館へ。宿から徒歩10分だ。
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絵を描く者なら一度は見ておきたい、
ベラスケスの「ラス・メニーナス」がついに拝めるのだ…! 

期待通りさすがの巨大美術館な上にそのラインナップが独特。
ここも撮影禁止なので残念。なのでサラッと書く。

ベタだけどグレコが並ぶ部屋とか変すぎる。
でもグレコはファーストインパクトから慣れてくると物足りなくなってくるかも。

ベラスケス。
まとまっていろいろなベラスケス絵画を拝める贅沢さ。
まず、おそらくベラスケスの肖像画は飛び抜けて似ていると思われる。
なぜそう思うかと言えば、
どんな画家も顔を描くときって独特の表情クセがでてるものだけど、
ベラスケスにおいては、どの顔も表情まで完璧に描きわけているから。
ベラスケス絵画は総じてタッチが荒くてバサバサしてるのだが、
顔だけは筆跡もボカし気味にしてデリケートに扱っているし。
とにかく、人物の顔の描写は異常に丁寧で上手い。

ラス・メニーナスを実物の大画面で目の前で見ると
絵とのやりとりができる感がハンパ無い。
この絵は近づいて見るとかなりタッチが荒いので、
その描かれた空間には入っていきづらく描写の細部に目が行く。
ある程度離れたところで明らかに適正距離があって、
そこからの眺めは不思議でしょうがない。
絵の中のいろんな地点からこっちを見てくる。
こっちから絵の方を見て、遠い鏡から跳ね返ってくる視線は国王夫妻のもの。

はぁ〜 この今自分が立っている適正距離は、
絵の表面にあたる地点から後ろの鏡までの距離に等しいんだろうな。
絵の表面にあたる地点というのはいったい何なのか…
そんな絵画の不思議がとってもわかりやすく深く現れてるなあ。

ラスメニーナスでもやはり
王女から、美人の女官、奇妙な道化師、画家本人、
と並ぶ顔の存在感が凄い。
まさに傑作。

そして、さらに総合的に圧倒された画家は何と言ってもゴヤ!
コレクションがかなり豊富で、全時代のゴヤを一挙に浴びる事ができる。
初期の日傘もあれば、カルロス4世の肖像画もあるし、キリスト磔刑画もあるし、
マハも並んでる。 1808年5月3日の銃殺も。
…ずっと前に初めてNYのメトロポリタン美術館で見た時の印象は、
ちょっとヘタでファニーでおもしろい画家だな、
程度しか思ってなかったが、それは大間違いだった。

昨年の東京のゴヤ展で気付き始めたが、
ゴヤの上手さは単純な意味の正確なデッサン力というよりは、
人の表情やポーズ、動き、精神性、
それに絵画そのものに対する深い愛情みたいなことまで感じさせる演出力にある。
加えて大事なのはユーモア。 

ゴヤで一番衝撃だったのは、晩年の部屋。
ブラックペインティングと呼ばれる連作が並んでいて、
とてつもなく暗いというか怖い。トラウマになるが凄い。
「我が子を喰らうサトゥルヌス」もこのシリーズの1枚だった。
「砂に埋もれる犬」の不穏で謎な画面も素晴らしい。 

ボッシュの「快楽の園」も拝めた。
描写自体は高解像度の画集等でかなりいいところまで鑑賞できるので
実物を見ても想像範囲内だけど、三面開かれている佇まいと淡いグリーンの
画面のキレイさには、おお〜ってなる。

他にも有名作揃いで、
しかもこうなんというかパワータイプな感じの作品がズラリと並び、
結局丸一日プラドに費やしてクタクタになってしまった。

ホントは近くのもう1つの有名コレクションが集まる
ボルネミッサ美術館にも行きたかったのだが、無理だった。 

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雨もあがって青空の下のベラスケス像。

せめてスペインらしさをと、
宿の向かいの怪しいレストランでパエリアを食べて見たら
ものすごく不味かった。店のチョイスを間違えたようだ。
どうもスペインからツイてねえな。