札幌のギャラリー門馬&ANNEXのオーナー大井さんにお誘いを受け、
アートフェア東京に初参加してきた。projectという若手ブース。
お越しいただいた皆さん、ありがとうございました。


出展前の気持ちを振り返っておくと、以前バーゼルに行った時に思ったんだけど、
アートフェアというものは、どちらかと言えば悶々とする印象があった。
即売会という性格上、美術館のような落ち着いた雰囲気がないし。
もちろんそれでも、アートバーゼルくらいの高レベルなものは見応えある。
膨大にあるそれ以外のフェアに対する思いというのが、複雑だったんだよな。
そこには山ほどの作家、作品、ギャラリーがあって、買われたり買われなかったり=食えたり食えなかったり。それが必ずしもクオリティや美術の歴史に残るということにつながるわけでもなく、
美術というのはごく少数の優れた作家作品ギャラリーと、その他膨大な周辺の雑多な作家作品ギャラリーで構成されているような現実が見えた気がしたから。自分もこの先、雑多な一人に過ぎないままになるのではないか、と。

それに、記事にはしていなかったが
昨年札幌でも、アートフェア札幌が開催された。
お客さんが楽しむことに一切問題はないし、開催しないよりした方がそりゃあ良い、
と先に言っておくけれど、
あくまで、作品を作る側としての実感としては正直言ってフェアに対する悶々度はさらに増しちゃって、
辛いところがある。なぜならやはり質があまりにもバラバラだから。その他詳細は省くけどこれでは、
ここ札幌でのマーケットにおいてアートの強い信用など作れないのでは…
というのが実感(とか書いていいんだろうか?)。ホテルの部屋形式のフェアだと作品もごちゃごちゃで見づらいし。繰り返すけど、作品を作る者としての実感です。

さて、そういう気持ちの前程があって、
日本最大のアートフェア東京では、当事者として一体どんな印象を抱くのかと、
参加者としても観客としても興味深かったのです。


搬入前日に雨の東京入り、しばらく滞在することになる。
宿は一泊2000円と破格の某ドミトリー。外人だらけ!
英語の勉強になるのでむしろ良い。

搬入を終えたその日の夕方から、招待客のみが入場できるプレビューが始まった。
Photo 2014-03-06 14 22 51
僕らのブースはこんな感じ。久野志乃さんと2人展形式で、
自作は2点。2点だけなのはこの後の個展もあって2点が限界だったからなんだけれど、
結果的に良かったかも。

予想を超える人の量で、用意していた名刺がガンガン無くなる。
チラホラ見たことのある某有名美術関係者の皆さんの姿も見えたり、
外国からのお客さんも、特にアジア圏からの方々が沢山。
人もブースも多いし
ブースの位置は一番奥の角だったので、
素通りしてしまうお客さんもいたけれども、
かなり多くのお客さんに鑑賞してもらえている感。
自分も隙をみて会場をグルっと一周してみると、
各ブースは見やすく、古美術と現代美術がゾーンでわかれているので
回りやすい。
また、去年までのG-Tokyo参加の著名ギャラリー群がG-Plusというエリアにまとまっていたので、
簡単にいえばレベルの高いギャラリーはここですよっていうのもわかりやすい。


売れているものと作品の質は必ずしも一致するわけではなさそうで、
人気作家ステータスだったり、パフォーマンス戦略や、コスプレ美女によるファン作戦や、
動物イラスト人気などまで、売れるための色んな引っ掛かりなんかも見え…
う〜ん、、、色んな思惑が渦巻いている!という感じ。

実際あたふたしてるうちにプレビュー終了。
規模の大きさはわかったし、
レベルの高低のレンジが広くて色々おもしろい。

やはりバーゼルの印象からの延長になるけど
一言で「美術」と言っても、それは多層構造に分かれており、
今回もとても明快にその雰囲気が出ていたように見えた。
このカオスの中では、じゃあ自分はどの層にめがけていくのかってのを
ハッキリ意識していなければならんな、と。

趣味的なギャラリーだってたくさんあるわけだし、
お客さんだって、美術はよくわからんっていう方から、超専門ですっていう方までいるわけで。

自作においては、たとえばわからない人にも、
色や手法から、キレイ!とかどうやって作ってんの?
って思われるだけでも良いし、
そこからもう一段階踏み込んだ興味を持ってもらえるとなお嬉しいし、
その上でやはり美術オタクな厳しい目を持つ人に絵画的な云々やら思考云々なところでヒットしてほしいと思っているものの、結局すべて作品でバレるので大変なのよね。


連日次から次へとお客さんが。

この後VOCA展と大黒屋さんでの個展が続くので、その宣伝もどんどん。
3つの展示が連続したことは、北海道からも攻めてまっせ!
っていう印象与えるためのビッグチャンス。
ギャラリストの大井さんは、初参加の気合いでDMを手配り。すごいな。感謝。
チラシもリーフレットも超スピードで無くなってしまった。
このゴチャゴチャな中けっこう長い時間絵の前でじっくり見てくれるお客さんも
沢山いて嬉しい。
どこかでも書いたかもしれないけど、
誰かがじーっと絵の前に立って長い時間鑑賞しているっていう光景がとても好き。

夜には近くのホテルでイベントがあったりで、それにも顔出してみるが、
なんだかこう東京グルーブ感とハイカルチャー感がどうも馴染めずぼんやり退散。

2日目の夕方くらいに、
2人組の若い男性お客さんが、某著名ギャラリストさんとやってくる。
北京のコレクターさんとのことで、そのギャラリストさんのところでも作品を買ったりしており
今回は流れで通訳や説明に入ってもらうことに。
1人が小さい方の自作を購入。話を聞くと彼は美術作家兼コレクターとのこと。

もう1人のかたは、もっと作品を見たいとのことで次々に作品に質問してくる。
質問内容のレベルも高く、答えるの必死。
2日間連続で来てもらい、その後これから展示予定のVOCAの大作含む3点を予約してもらうことに。
びっくりというか、呆然。どうなってんの。
いや意識が飛んでる場合じゃない、こっちが質問だらけだよ。
いろいろ聞いたら、まだ若干26歳で、ロンドンでデザインを勉強していたなど
かなりのエリートさん。自分のコレクションをiPadで見せてくれたのだが、
奈良さん、草間さん、加藤泉さんなど日本の超有名ドコロの良作がズラリ…
中国のセンスの良さそうな作家の作品もズラリ…他にも膨大な量。
美術界にもたくさん知り合いがいるので、紹介すると言ってくれている。
突然スケールが大きな話すぎて、全然ついていけん。
とりあえず今後もコンタクトしていこうとのことで握手。
予約の前金を払いたいとなり、彼のポケットから見たこと無い厚さの札束が…
目玉飛び出そうになったわ。

軽いパニックに陥るが、
どうやらVOCAの大作を制作したために発生したカード借金地獄から、
これで開放されそうだということが何より先に浮かんだ。
大作を作り終わったときは開放感と共に、
かかった制作費と今後の保管はどうすりゃいいんだ…という悩みも発生して
後回しにしていたのだが、う〜ん…賭けてみるものだ。

翌日、今度は台湾のコレクターさんが中型の作品を購入してくれる。
これまた若い方で、何かの会社の社長で、さらにギャラリーも立ち上げるそうで、
またiPadでコレクションを見せてもらったら昨日のデジャブかってくらいの
著名作家作品のラインナップ。
これまた細かい通訳に入ってくれたのは某日本の画家さんで、
彼は作品で自活できており、この後も台湾で個展をするらしい。

いやあ、、、現場って、こんなことが起こるのね。
どちらのお客さんも今回はこのアートフェア目的で日本に来てるんだって。

しかし…これだけの数のブースの中からよくぞまあ
自作を見つけてくれたものだと ありがたや ありがたや。
ある程度の会話はできたけれども、やっぱりもっと英語必要だ。
皆、当たり前のように英語でやりとりできる。

しかししかし…これが今現在のアジア圏の勢いか。
どっかで、日本の主要ギャラリーも国内は売上全体の3割程度で残りは海外だと聞いた。
ちょっと怖い気もするのは、
日本人としてバブルの失敗が身に染み付いているからだろか。
これは一度台湾及び北京に行って
現地で何が起こっているのか直接確かめてきたほうが良さそうだ。
アジアはまだ韓国しか行ったことないからな。

その後も最終日までずーっとお客さんたくさん。
何人かの他のお客さんも購入を考えてくれていたようで、嬉しい。

4日間で約5万人の入場者数だったそうで。 すごい。
東京のマーケットの空気もなんとなく体感できたし、
良い出会いも沢山あり。春の展示ラッシュなかなか幸先良いスタート。

搬出は、バングラディシュから帰ってきたばかりの東方くんが手伝ってくれて
近所の餃子屋で打ち上げたのでした。

というわけで、初アートフェア参加が終わってみて。
最初に書いた悶々は引き続き考えておきたいところだけど、
作家自身が強い意志でちゃんとした作品を見せていれば、フェアの会場でもしっかり見てくれる人がいる可能性はあるし、チャンスも生まれるんだよね。
膨大なブースとお客さんの量の中で、それは僅かなチャンスかもしれないけど、自分で出展を引き受けた以上やれることは最大限やること。
それに、明確に作品を買いに来ているお客さんがたくさんいるんだということを実感した。国外からも。
作品を買ってくれるということは、作品持っていてくれるということだし、
さらにお金が入ることで制作時間も画材購入も増える、つまり研究に没頭する時間を与えてくれるということ。雑多な中から自分の作品を見つけ、決して安くはない金額まで出してもらった事実を忘れないこと。