アートフェアが終わってVOCAが始まるまでの数日間は当初
東京をぶらぶらしようと思っていたが、
運良くちょうど空いたこの時期に板室温泉大黒屋さんで毎年行われている、
現代アート公募展の受賞式に招待して頂く。
なんという完璧なタイミングなんだ。我ながらこういう運には恵まれている… 
過去の大賞受賞者は毎回声をかけてもらえるのです。
参加するたびに書くけれど、受賞後もこんなに気を遣ってくれるコンペはそうそう無い。
前回はベルリンにいたので2年ぶりの参加だ。 

節約のために新幹線には乗らず鈍行で3時間、那須塩原駅に到着。
ロンドンでお世話になった、現在大黒屋さんで秘書中のK君が迎えに来てくれて
大黒屋さんへ。さっそく展示中の公募展を見る。

今の大黒屋さんにはK君含め、美術作家修行を兼ねて従業員として働いているI君やM君など、
20代後半のアートでヤングなメンズの皆さんが揃っており、
美術オタクな話にも花が咲いて楽しい。
若旦那のK君は、wifi整備や、図書室へ洋書追加、さらなる倉庫の整備など
コツコツ革命を起こしているようで頼もしい。 

12日受賞式当日。
入選者の参加率が多くて賑わう。
大黒屋さんも、毎年式のフォーマットを少しずつ変えており
いかにコミュニケーションが生まれる場になるかを調整しているように見えた。
今年は、審査員さんの挨拶→入選者挨拶→社長挨拶と続き、
その後に展示サロンで全員揃って夕食会&ご歓談。
大賞のタナカさんは、絵画!
手数を増やし過ぎないように、
モノクロな痕跡によって画面が決まる瞬間を探っているような作品だった。
ご本人は一見、今までのオッツい受賞者の顔ぶれと比べると爽やかな青年だが
挨拶でのスピーチからは、内に燃えるものを感じる。

皆さんの作品ファイルを見せて貰いながら色々話す。
間に作品があると、色々話しやすい。おもろいな。

ある入選者さんには、
「ガブリエルオロスコで検索したら偶然ヤマモトさんのブログにヒットして、
ご本人とここで会えるとは!ラジオのDJに会ったような気分です!」
と思いがけないリアクションをされたので、
いやあそんな風に遠くの人も読んでくれたりすんのね〜と調子に乗る。

過去の大賞者が揃うとさらに美術話が盛り上がる。
去年の大賞の坪井康宏さんと初めてまともな絵画話。
坪井さんの絵画との距離のとり方に、やり方は違えど深く共感。

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夕食会の様子。写真は大黒屋さんのFacebookページより拝借しました。

夜はもう毎年恒例になりつつある、天野さんの部屋で2次会。
今や一番核心的な美術の情報は常に美術作家同士が情報共有しているわけで、
そんな中で学芸員、キュレーターがどう動くかって話を
学芸員さん自らが話す姿をみて逆に信頼感。
ヨコトリのリアルタイム情報もチラリ。

そんなような話を毎年聞きに来れるこの環境。
旬も旬、海外での話もたくさん聞ける美術作家の菅さんに、
作品を売る視点を持つギャラリストの小山さん、
作品価値付けをしていう立場学芸員の天野さん、
こういう3名の審査員さんを呼んでいる意味がどれだけ大切か。
社長は、自分は美術においては素人だからと審査には一切関わらず、
そして大黒屋さんで展示できる美術作家は菅さん以外には、
原則的にこのコンペに通った作家さん、あるいは美術作家志望で社員として3年間修行してOKがでた場合に限っているんだって。
そういうことを徹底することで展示内容の質が下がらないように工夫しているとのこと。

僕が2次的に言ったところでうまく言えないのだが、
受賞以来ここでいろんな話を聞いていくことで、
美術作家としての自覚や覚悟を強めることができたのは間違いない。
自分のように作家ももちろんだけど、

美術の場を作る、若いギャラリストやキュレーター側の人たちも
学べることがタンマリある場所なので、
特に、まさに今エネルギッシュに場をつくろうとしてる
札幌の人たちにもぜひ一度来館して欲しいなあっていつも思ってるのです。