やまもとのグレーゾーン

札幌の絵描き山本雄基のきまぐれ雑感と日常。

カテゴリ:海外美術鑑賞記 > 2013冬フランス

ケルンから深夜バスに乗り8時間、早朝のパリに到着。寒い。
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昔東京〜大阪まで深夜バスに乗ったけど、感覚的にはそんな変わりがないな。
興奮のせいか3時間くらいしか眠れず。

大学の先輩のみっちゃんがパリ在住で、
けんさんや大島さんに、パリに行くならみっちゃんが泊めてくれるよという
アドバイスを聞きfacebookでみっちゃん発見、連絡。
そして無事お世話になることになっていたのだった。

教えてもらった通りに地下鉄に乗る。
改札があって気付いた、国が変わるとルールも変わる。
チケットの買い方を調べるのを忘れてあたふたしてたら、
後ろの親切な人に教えてもらった。
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すでに色彩センスがドイツと少し違う感じがする。
聞こえて来るのはフランス語だ。フランスに来たんだねえ。。。

降りたらそこはまだ日が出ていないパリの街並だった。
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パリにも木が落ちている…

いやしかし、パリに憧れはそんなに無い僕ですら
街並み歩くだけでここはパリじゃあああ!!って気分にさせてくるのがパリなのね。
NYに初めて行ってここはNYじゃあああって思った時のことを思い出す。

無事みっちゃんち到着。
そのアパートの場所が、なんとルーブル徒歩5分、オルセーにおいては隣のブロック徒歩2分っていう
奇跡のロケーションだ。
屋根裏系のワンルームで湿気に悩まされていたけれど笑、
住むには十分だなあ。

朝食の激ウマパンをいきなり頂きながら、久々のマシンガントーク。
みっちゃんは僕が今まで出会って来た人達の中で圧倒的に一番よく喋る人だ。
さんまさんかみっちゃんか、くらいの量だ。
めっちゃおもろい。

さて、歩いてルーブルへ向かう。
すぐにセーヌ川!オルセーも見えれば遠くにかすんでるのはグラン・パレ。
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川を渡った先にはもうルーブル!
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マジで近い。
そしてルーブル、デケええええええ!!
…ヨーロッパに来てから何回、「デケええええ」って言ったかな。
デカさで当時の国力を表してるといってもアホ程でかいから参る。

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まだ朝方の逆光、開館とほぼ同時に到着。
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月曜の朝一でまだそれほど混んでいない。
例のアーティストカードで、並ばずに各エリアをパスできる。
これホント便利だな!
何カ所か使えないところor学割って場合もあったけど、
とりあえず提示してみる価値はある。

看板頼りにとりあえずモナリザまでダッシュ。
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人が集まりだしてたけど正面キープもできた。
小さいし、遠いし、がっつり防弾ガラスに守られてるけど、
それがまた演出になってんのか神聖感がハンパねえ。
まさに人類の至宝って感じだ。
実物だとやはり絵画としても強度があるなあ周りの名画とも他のレオナルドの絵とも
なんか違う。と言っても、やっぱり遠いんだけどね…。
視力悪い人は全然わからないのでは。


絵画ゾーンの目玉、巨大絵画の部屋にはあれもこれも。
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ジェリコーのメデュース号の筏→画面の大きさや劇的な感じはもうハリウッド映画みたい。

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デカすぎるので、自分の視点に近くてじっくり観察できるのは
下部分のグレイな体の死臭がプンプンするゾーンばかり。


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ダヴィッドのナポレオンの戴冠式→巨大な報道写真か舞台っぽい。
ダヴィッドって、画面デカいししっかり構築してるし優等生タイプって感じでも
これといって絵画的なワクワクをなぜか感じないな。

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ドラクロワのサルダナパールの死→会田誠さんばりの裸の女殺しっぷりっていう画題に加え、
デカさも色も構図も絵画としておもしろいから巨大絵画ではこれが一番グッときた。


アングルのグランドオダリスク→表面がちょっとヒビ入ってる。
これは巨大ではないけど、
ヌメッヌメな質感が人の質感を超えていて人体のファンタジーに突入してる。
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肌の質感オタク。ここまで来ると美の狂気っぽくてヤバい。

地味な展示場所にこっそりまぎれてる現代美術。
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ブラックの天井画→ブラックらしからぬ装飾性。

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トゥオンブリの天井画→めっちゃ面積広い。
広大な青と星のような円、古代文字。美しい。
マティスの切り絵の世界に近い。

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キーファー→補修中。数年前に出来たばっかりなのに早すぎねえか。

超見たかったプッサンのアルカディアの牧人達が貸し出し中で見れず…!
これはショックだ。
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プッサンの中でもこの作品はどうしても見ておきたかったんだけど。
セザンヌやマティスの造形思考の骨組み(ってつまり近代絵画のベース)
の重要なソースの1つになってる作品だと思う。
例えばマティスの「金魚」の配置なんかだって
この作品から如実に持って来ていてそこからのアップグレードに違いない。
それだけに実物見れないのは本当に残念。

その他18、19世紀のフランス絵画ゾーンも改装中。シャルダンなど一切見れぬ。
だから日本でシャルダン展やってたのか。
フランドル絵画の一部も改装中。ヤンファンアイクのロランの聖母子も改装中でみれず。
結構、堂々といろんなところ封鎖してんのだね…しかも長期間。
一度来ただけではオイシイとこ全部は見せてやらんぜグヘヘって感じだよ。

以下膨大すぎてキリが無いのでここでも適当にアップ。
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館内のオーディオガイドは3DSで任天堂が開発してんのよね。
めっちゃ気になってたんだけど、
5ユーロかかるしガイドをじっくり聞いてまわる余裕がないので泣く泣く断念。

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あっ、マルスの全身像。
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無駄にニケの裏側から。

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昔からおっぱいのチラリズムは存在する。

エジプトとか遺跡系はかなり流し見したし実際飛ばした部屋もあるが
それでも丸一日。
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レッドブルを飲みながら休憩しても途中何度か仮眠した。
両足が痛ええええ。

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昼過ぎ以降のモナリザ前はもうめっちゃくちゃ。
鑑賞するというより、記念撮影所だ。
数年前は撮影禁止だったと聞くがそっちのほうがいいんじゃねえか。

と人の振り見て我がふりなおせ、
自分のこの詰め込み式の鑑賞の仕方だってきっと間違っているんだけど
しょうがないんだよなあ。
見たい絵を優先的にその日の前半に持ってくればギリ大丈夫だ。
余裕があればまた来よう、タダだし!! 

疲れのせいか1時間寝坊。
さすがにベルリンからぶっ続けで鑑賞旅の久々暖かい布団で寝たのでつい。
まあいいや。

朝近所のパン屋で買った1ユーロのクロワッサンが美味い。
みっちゃん曰く、フランスのクロワッサンとヨーグルトの質の高さは異常とのこと。
パリ滞在中は腹へったらクロワッサンで十分だな。

さて今日はオランジェリーとモロー美術館に行くぞと出かけたら
しまったどっちも休館日!事前リサーチのアラが出始めたなあ。
とぼとぼ無目的に歩いてみる。
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なんか…ゴージャス。

グランパレはホッパーで前ホイットニーで見たし、これまた休館日だし
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市立美術館に入ってみるも渋いし、
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あ、でもこんなあぶないクールベの絵があってさすがだなと思ったり。

ぼんやりとお昼になってみっちゃんと街中で待ち合わせ。
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パリ市内北西のほうの物騒なエリアを案内してもらう。
パリらしからぬベルリンっぽさ。移民の多いエリアなのだとか。

インド料理屋でカレー昼食を取った後に、
さあ、どうしようと調べ直したら
パリ近代美術館のコレクションが良さそう。
さっそく近代美術館へ。この選択が当たり。

マティスのダンスの下絵と完成絵が両方展示されてたー!
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これは感動。たしかバーンズ財団にあるやつのバージョン違いのやつ。
下絵も同じサイズでためしているのだな。
群像のバランスの取り方の葛藤と、最終的に黒とピンクのラインを追加して
だいぶシャープなリズムになっとる。
人のラインからちょっとはみ出たグレーなんかもたまりません。

マティスの対面には、
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あらダニエルビュランのこんなタブローっぽい作品が。シャレオツだな。

ここ、コレクションが実は充実している。
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デュフィの巨大な壁画とか。

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ボルタンスキーの部屋とか。

途中からSDカードの残量が無くなって撮影は封印されたが、
他にもいつもの近代の巨匠どころが一通り。
藤田嗣治の良い作品等もちゃんとあった。

その後近くのエッフェル塔へ。
ラッシュアワー3が見たくなるほどにエッフェル塔だった。
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塔の足下にエッフェルさんがいた。

あ〜、疲れた!!!
無駄に歩いてしまったな。
ところでパリの地下鉄構内は、なんとなく人の尿のかほりがするんだ。

3日目は歩いてポンピドゥーへ向かう。
セーヌ川沿いにはポンヌフからのノートルダム大聖堂。
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ああああクリストが包んでるの画像で見た事あるわあ

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ああああここも、いろんな絵の中で見た事あるわあ…
マティスもこの並びのアトリエから見ていた風景というわけだ。

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大聖堂。ケルンの巨大さから見れば穏やか。
でもやっぱりデカくて気品がある。


さらに歩くと、一本間違ってポンピドゥの裏側に出た。
こんな感じなのねえ。
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辺りをぐるっとまわりこんで、近所のゲームショップで
SDカードを買って正面から突撃だ。
ポンピドゥ、堂々とした佇まいでカッコ良い。
ダリの顔がドーンと。企画展はダリの回顧展だって。
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中はいきなり美術館ではなく、複合施設のようになっていた。
アートセンターってやつだ。

美術館はだいぶ上の階なのでエスカレーターを上がって行く。
ちなみにアーティストカード、ここでは使えず!!
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まず常設から。
60年代以降の現代美術の入り口、
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トゥオンブリがいきなり。

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ブライスマーデンのこのシリーズ初見。
マットで粘土っぽい質感はワックスが混ざっているからだろう。
T字が並んだ様な意味深な構成と、各色面が別パネル、
鈍い色彩がイケてる。

同じ部屋にはライマンとケリーもあり。

そこから、長い通路の両脇に展示室があって、
時系列+国毎+系統毎にゆるやかにカテゴライズされてるような展示構成。
本格的な入り口はこんな感じ。
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モノクロのウォーホルの向かいにこのスーラージュが向かい合わせに展示されてる。
こういう組み合わせの時点でちょっと不思議な感じがする。

ちょっとランダムに写真をアップしていく。
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一番奥にネト。
で、回廊になってないのでまた折り返して展示入り口まで戻っていく。
独特だな…

展示全体の印象だけ記しておくが、
何というか、さすがのパリプライドを感じる展示の並びというか。
ユーロ圏ゴリ押しなラインナップでこれは新鮮。
ボエッティやペノーネなどイタリア現代ゾーンや、アンリサラやピエールユイグなど
ドクメンタで目立ってた作家もポツポツ重要っぽいポジションに置かれてるので
ドクメンタ見た後で良かったわ、自分も馴染みを持って流れを追う事ができたような。

メイン通路にはリヒターやポルケ、ライリーやドイグが並ぶ。
それらも、色彩の感じがパリチョイスっぽく感じるのはオレの先入観や偏見なんだろーか。
カタリーナグロッセの壁にスプレーじゃないキャンバス絵画なんかも。
なんとなくポップと言うよりは、
高貴な感じ華やかなビビッドさを持った色彩の作品チョイス。

アメリカ美術の比重が少なめな感じがすごーくした。
たまたまではないと思うんだけど。これも偏見なんだろうか。

上階に登って今度は近代ゾーンへ。
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ミロ。いつもは微妙に自分の琴線とズレる作家だが、この作品群はけっこうイケてる。

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下階と同じような展示構成。オエー同じボリュームがあんのか。
しかも間違いなく近代の方が点数が多い。

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さすが近代芸術の中心地だけあって、
序盤からマティスとピカソの重要な作品でがんがん攻めて来る。
クプカやドローネーなど、いぶし銀なポジションもしっかり並んでて見応えがある。

しかし!一番見たかったマティスの「コリウールのフランス窓」がやはり貸し出し中で見れず!
見逃したんじゃないかと思ってインフォメーションの人に泣きついたけど
やっぱり無いようだ。なんてこったい。。

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見覚えのない抽象達がたくさん。

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マレーヴィッチの大理石ペインティング。イイっすわあ。

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デュシャンも沢山あった。

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ベルメールの球体人形なんかも初めてみたが、
想像以上に手作り感や塗り感が強くてそれがけっこうイイ。意外。

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ベルメールからのバルテュス、とか。

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この構成にもけっこうビックリ。
ポロックとロスコの割と微妙な作品をポツンと単体で置いてる通路の奥に、
マティス晩年の切り絵の大作。
少なくともアメリカやドイツでこのような展示構成は見た事がない。

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このピカソに衝撃を受けた。
超晩年の作品たぶん80歳くらいらへん。
海辺で裸の女の人が放尿してんの。
空にはくにゃくにゃしたラインが浮遊している。
高齢の死に際でこんな表現できるかね。
ピカソの凄みを感じざるを得ない。
各時代のピカソが充実しているので、
所々でこの人まだこんなこともやってんの!?ってのが突然現れる。
正しいピカソの楽しみ方が出来てきた気がする。


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ジャスパージョーンズとラウシェンバーグは欧州でもどこの美術館にも人気なのかな。
かならずセットで置かれている。
上の作品はラウシェンバーグ、、、にしてはやや微妙なライン。
奥にジムダインも並んで。

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ポップアート辺りまで来るとこんな微妙な作品も…

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続・見慣れない抽象。


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アルマンやド・スタールも並んでくるのか。

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幾何学抽象まとめの部屋、モンドリアンを挟むこの謎の並び。

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後半はやっぱりアンフォルメルとかフォンタナとかイブクライン、
あとは妙なオップ系構成抽象、加えて堂々とヴァザルリがあったり、
妙なキネティックアートで締めるってのもおもしろい。

この何倍もの膨大な量があるので、目眩が…。

しかし自分の美術史の捉え方はニューヨークMOMA基準だったのねと
思い知らされた。
近代も現代も同時代の切り取り方がMOMAと全然違う!!!
アメリカ抽象表現主義をすっぽ抜いてる感が寂しいのだが、
そこが一番おもしろいっつーか。
フランスの現代美術の城がここ基準になってるのであれば、
アメリカとは全然美術観が違いそうだ。

ドイツだとそこまでの偏りはあまり感じない。

映像アーカイブの部屋もあって、かなりの量の有名映像作品を自由に見る事ができた。
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さすがに数作品チラ見で終えてしまったけどこれは良い。

もうすっかり疲れてしまって、さらに上階の企画は渋めでダリ。
ダリは結構見てるしさすが混んでたから、もうイマイチ気乗りしない。
でもせっかくだからと、いざ見てみると企画の厚みが今まで見て来たものと
格段に違ってとてもおもしろかった…!撮影は禁止なので残念。
小さい画面の絵画に持参の虫メガネを向けて観察するおじーちゃんにまで遭遇。

特に後半、ポップアートのようなドット絵画とかドリッピングとかを
積極的に取り入れててダリの印象からズレた作品がたくさん。
ホログラムの仕掛けを使った立体作品や、点滅するライトを仕込んだ絵画なども。
それらを見れたのが一番良かったな。

このエリアだけ、撮影OK。賑わってる中自分も行ってみる。
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真ん中の人は、僕です。
セットに座って、向かいのスクリーンに映った映像を記念撮影…

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展示エリアを出ればパリの街を俯瞰できる。
森美術館みたいな展望スポットとしての役割もあんのだね。
うおお、夕暮れのモンマルトルの丘だー。

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午前中から行って日も暮れかけるまでいたにも関わらず、
さらにもう1つ。
ポンピドゥのすぐ目の前にブランクーシのアトリエがあるので
こっちも。
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半分死にながら見てたのでもったいないが
必見だと思います。


夜はみっちゃんが厨房で働いてるレストランで食べた。
めっちゃ働いてた。Nanashiっていうお店で、
オシャレな客層でずいぶん繁盛してたしとてもウマかったです。
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癒しのおにぎり。

今日はまず2日前に休館日だったオランジェリーの再訪問からの、
オルセーへという流れ。
ちなみにどちらも撮影禁止。
オルセーは以前は撮影OKと聞いていたのだけど改装後NGになったのかな。

みっちゃんちから歩いて5分のオランジェリー。
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ご来場ありがとうございました さようなら

オランジェリーはモネの睡蓮をパノラマで見る為の美術館で、
それはそれは素晴らしい楕円形の部屋が2つもある。
沢山見て来たモネの中でも、これらはモネが最も力を注いだ1つで間違いない。
部屋の真ん中の椅子に座り絵を見渡すと絵具の色彩の揺れにうっとりするばかり。
湾曲した巨大絵画群、近くによるとボソボソとしたタッチが無数にあって、
ものすごい量の色彩が置かれているわけで、チューブから出した原色だけではもちろんない。
庭の水面から感知した色彩をここまで絵具化できるものなのか。
ずーっと見てると恐ろしくなってくるわ。
たまにポロックのオールオーバーとモネを比較するような言説が見られるが
あんなのは嘘っぱちだろう。

実は地下の展示もマティスとピカソの良作がある。
マティスのニース時代の作品がいっぱい、あんま見れてなかったので
うれしい。
小振りながら印象派の良作もあり、コンパクトなので見やすい。



そして川を挟んですぐのオルセー。
もうここは印象派代表作祭。名作っつーか教科書で見た作品しかねえだろ!
っていう、これでもか感。
数年前に国立新美術館でオルセー展を見た時も
十分豪華に感じたが、これだけ何でも持ってれば納得だ。

たださすがに、印象派はすでに胸焼けする程見て来たので
名作ばっかりなのにちょっとオエってなっちゃって勿体ない…。
厚塗りの最初期のセザンヌなんかが見れて良かった。

それでも脳裏に焼き付いたのはやはり、
マネのオランピア、草上の食卓、
クールベのオルナンの埋葬、世界の起源。
これらの作品の、
何を描くかという知的な選択とそれを元にした絵作りの巧みさは、
実物を改めて目の前にしてみると強烈なインパクトがある。
今見ても。とても現代美術的。
あと、オルナンの埋葬においてはめっちゃデカくてそれもビックリした。

オルセーの印象派ラインナップを見ちゃうと
今まで見て来た印象派ものの半分かそれ以上は
割と凡庸なものだったんじゃないか、と思えてくる。

まあしかし、特に印象派近辺の作家の作品は
本当にどこに行っても沢山あるわけで、
驚くのはその生産総量だ。
ピカソは別格としても、一体どんなペースで描けば
これだけ各国に十分に散らばせられるくらいの枚数が揃うんだろ。
モネやルノワールは後期キャリアではもう勝ち組売れっ子だし
実際考え抜いて描く絵と自分の発明した手法で割とサクサク描く絵を
意識的に分けていたんだろう。

貸し出しで見れず残念賞は、
アングルの泉とマネの笛吹き少年、ミレーの落ち穂拾い。

あと、ルドンの装飾的な大作がとても良い。

ところで全体を通して冷静に考えると、
この人達どんだけ女性の裸体が好きなんじゃってくらい裸の絵が多く感じた。
彫刻だって裸ん坊だらけ。
写真発明初期の写真もあり、それにもたくさん裸が写ってた。
江戸時代っぽい日本人女性の入浴写真まであった。  

こんなに裸集合してる美術館あっただろうか。
マネとクールベも、
裸の女性を母体にどうやってスキャンダラスに持っていくかっていう
アプローチが目立つ。
…というか、それらの作品が強い印象過ぎて裸イメージを植え付けられたのかもしれないが。
そしてこの裸祭りに乗っかれていないゴッホに切なさを感じる。

あと吉岡徳仁のクリスタルなイスが印象派部屋とセットでした。



ちょっと時間が余ったので地下鉄に乗ってギャラリー巡りを少しだけ。
まとまってるエリアを数件まわってみると、
ギャラリーペロタンのクオリティがやっぱ飛び抜けて高い。
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 帰りの地下鉄。
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先頭に座ると、運転席が無い!自動制御なのかな。
トンネルの中が丸見えだ。

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駅のポスターでTamasaburo発見。
やっぱジャポニズム精神があんだな。 

まずはギュスターヴモロー美術館へ向かう。

午前の地下鉄内、ハンチング帽の皮ジャンおっさんが、
マイク片手にカラオケのような機械から音を出して歌いだした。
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これは新しい陽気なパターンだな!パリ流なのか?…みんな笑っとる。
手前のおっさんはなんでばっちりカメラ目線なの笑

到着。
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扉を押して下さい

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モローの家をそのまま美術館にしているので作品以外のあれこれも拝見できる。
部屋数たくさんの中にいろんな物だらけだ。

さらに上階に登るとそこからが本番。
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モローはオルセー美術館にもいくつかの代表作はあるけれど、
圧倒的にここで見るのがヤバかった。

壁中がモローの油彩で埋め尽くされている。大作も多い。
画面の中も描写の密度がギッシリ…!
装飾の散りばめられた描写が、装飾を超えて狂気になっとる。
1枚だけでも頭がクラクラしそうな絵なのに、それが壁中だよ!

未完のままサインを入れてる作品がいっぱいあって、
塗りかけの色彩と緻密で職人的な下絵の正確なラインの掛け合わせが
むちゃくちゃカッコいい。
画題も、神話をベースにしてるためか
だいぶ危ない非現実感がプンプンしてて
やたらアウトローだよ…!!

これはまた自分が積み上げて来た絵画感のカタストロフが…
オエエエエエエ気絶しそう!

神話の世界は全然わからないが、
ちゃんと日本語での画題の解説手引きも用意されていて
ありがたい。
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しかも、もの凄く大量のスケッチも見る事ができるので、
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そのアウトローっぷりを存分に体感できる。

僕は学生時代マティスの勉強をしていた時に、
マティスの先生がモローだったことを知ってから
興味があったのだけど、まさかここまでとは…衝撃。
これだけ作風が個性的で濃かった作家なのに、
真逆のような表現のマティスが生徒だったと考えると
先生としても優れていたんだろうなと思う。
ルオーも生徒だもんな。


その後、モンパルナス方面へ。
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全然撮ってなかった街並もたまに…

ブールデル美術館、
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カルティエ財団美術館でYue Minjunの個展
近作の展開はもがいている感じがした。撮影不可。
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マイヨール美術館、
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最後ルーブルで締める。閉館間際のモナリザ前…
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モナリザ独占の瞬間!
なんて落ち着いて鑑賞できるんだ…閉館間際はオススメです。
しかし完全独占は本当に一瞬で、同じ事を考えてる猛者達が数人おり、
みな長時間鑑賞をしていてた。ヤバいね。

パリ美術館巡り、これにてフィニッシュ!!
パリでは8割の美術館で例のユネスコのアーティストカードが使えたので、
入館料が殆どタダ。奇跡だ。

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雪のパリ街並み。

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近所のスーパーのスシはほぼ売り切れ。

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ちなみにパリに着いた頃から気になってたけど
この辺のエリアには、こんな骨董美術商ギャラリーがたくさんある。
いったい誰が買っていて、どういう風に商売成り立っているんだろうか。


みっちゃんちに戻って一息。
あ〜明日からまた移動だ。ちょっと緊張がよみがえる。
ルーブル新館からブリュッセルへの行き方を入念に調べる(調べてもらう)。
先輩のみっちゃんとも話し納め。毎晩多岐に渡ったもの凄い量の話をしました。
お陰さまで強烈ながら超充実できました。メルシー!!

さて最近ランスという町にルーブルの別館が完成したとのことで、
建築がSANAA、
開館記念展でドラクロワの「民衆を率いる自由の女神」は
そちらに移動しているらしい。

せっかくなので、次の国ベルギーに移動する前に立ち寄ることに。
カタカナで「ランス」と認識しているとアブねえ、
Reimsというもう1つのランスがあって間違うところだった。
Lensの方が目的地です。
行き方は、パリの北駅からLensに行きたい!と窓口に言ったら
サクッと教えてくれた。
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北駅の掲示板。さらばパリよ。
ランスへはTGV一本で行けた。
約1時間20分の40ユーロくらい。

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ランスは元炭坑の街で三角の山が何個もある所だと
途中隣に座ってたお姉ちゃんが教えてくれた。
言われたとおり三角の山が見えて来た。

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ランス駅を出るとちゃんと看板がある。
バスもあるみたいだったけど、試しに看板通りに歩いてみる。 
ちょこちょこ小さい方向指示があるので迷いはしなかったけど
どこまで歩くのかは不安にはなった。
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おお、遠くに炭坑山が2つ並んでる。

途中から歩行者通路みたいになって、ずーっとまっすぐ。
駅から結局20分ちょいかかった。

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雪の原っぱにメタリックで平たい建物が見えてくる。ルーブルランス到着だ。

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ガラスで区切られたコミュニティスペースや図書室、ミュージアムショップ、
その奥にカフェがあってオープンスペースみたいな感じ。
このスペースを中心に手前と奥に展示室。
手前の展示室がメインの常設って感じになっていた。

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地下にはクロックと何やらプレゼンテーション。

開館記念バージョンの常設展示に入ってみる。
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だだっ広くて長ーい空間の壁に西暦メーターが付いてて、
奥に進むと時間軸も進むような展示になっていた。
各地域の文化が並列的に展示されている仕組み。

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絵画作品はひと作品ひと壁ってな感じで展示されていたので、
本館に比べるとなんとなく安っぽくも見えたり。

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天球儀おもしろい。

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アングル作の肖像画とイラクあたりの王族の肖像画が並んでたり。

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一番奥にデーンと自由の女神が。

さらに奥の別部屋は時間をテーマにした小さな企画展。
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北フランスのお祭りに使われる大きな人形と、それを描いた昔の絵画を並列してたりして
おもしろい。

河原温の作品など現代美術もチラホラ混ざってた。
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温、箱とセット!

もう1つの展示室は企画展でルネサンスやってた。
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誰かのドローイング。複写の穴跡がいい。

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さすがに疲れたのでダビンチくらいはしっかり見とく。

土曜日だったからなのか、思ったよりたくさんの人が来場していた。
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カフェで休んでみる。なかなかうまくて10ユーロ以下。

遠くの方の三角山、
三角山どっかで見覚えがあると思ったら、畠山直哉さんの写真作品に
この山がモチーフになってるシリーズがあったんだ。
ミュージアムショップにその写真集も売ってて気付いた。


帰りも駅まで歩く。
途中、不安そうなおばさんが「ルーブルランスはどっち!?」て聞いて来た。
やっぱり不安になるよな〜ここ真っすぐだよ!って教えてあげた。

駅でブリュッセル行きの電車のチケットを買って、
少し時間が余ったので街を散策する。
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小さな田舎町で、パリとは全然違う雰囲気。
大都市ばかりではなくこういう場所も体験できるのはラッキー。
ルーブル別館をこんなところに建てたのもそういう意図があるからだろう。

さあベルギーへ向かう。
まずはもうちょっと北の街Lilleまで電車に乗る。
着いた駅はLille Flandres駅。まずは腹ごしらえ。
駅のマクドナルドに入って適当にセットを頼んだら、
ハッピーセットだったらしくピカチュウメガネをゲットした。。。
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そこから5分歩いたLille Europa駅からベルギー行きに乗り換える。
歩いていると、
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手塚治虫のマンガ展のチラシが貼ってたり、駅前に草間弥生の作品があったり、
あらあらLilleも大きな街でちょっとおもしろそうだけど今回は見送り。

Lille Europa駅では人がたくさんいた。
どうも雪でダイヤが遅れているらしい。大丈夫か。
一時間半くらい寒いホームで待ってようやく電車が来た。
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待っている間、大きな犬のぬいぐるみを持ったファンキーなニイちゃんが
チョコレートをわけてくれた。

2時間くらい乗って初ベルギーだぜブリュッセルMIDI駅。
フランスとはやや駅の空気も違って夜だしちょっと怖ええ。
ブリュッセルからさらにゲントまで乗り継ぐ。 

何とかゲントまで着いた。
レジデンスで仲良くなったゲント在住の友人の家を借りる予定でいたけど、
23時半。すでにスタバが閉まっててwifiが使えない!
これでは友人に連絡ができず、
どうやって鍵をもらったら良いのかわからなくてめちゃピンチになる。

ついにオレもここまでなのか…今までの旅路はしょせん奇跡だったのか…
いやおや何か良い方法は無いかと街を彷徨っていると、
中世の街並が目に飛び込んで来てピンチな気持ちがすっ飛んでしまった。
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なんなのこの街は!?めちゃくちゃ美しいんですけど!!!

そして地図アプリ(地図だけはオフラインで使えるアプリを入れているのだMaps with meってやつ)
を眺めながら、
前日なんとなく保険の気持ちで見てたホステルの位置を思い出し、
これがうまいこと見つかって、駆け込みで宿泊させてくれた。
時刻は1時近く。いや〜奇跡すぎる。助かった… !

イタリアからスペインの間にわざわざニースに寄った理由はもちろん、
マティスのロザリオ礼拝堂を見るためだ。
 
正確にはロザリオ礼拝堂はニースからバスで1時間くらいの
ヴァンスという小さな町にある。

そんで事前に行き方をいろいろ検索してたわけだが、
どうも今はニースのバスターミナルをリニューアルしてる最中で
乗り場がバラバラになっているらしい。

結局正しい最新情報が全然わからんまま着いてしまった。 
持ってるガイドブックも古い情報しか載ってないのでやばい。
夕方にはバルセロナ行きのバス(ユーロライン)にも乗らなきゃならんのだが、
その乗り場もわからんのでまだ予約もしていない。う〜ん不安だ。

なので親切なホステルのお兄さんに必要なバス情報を
できる限り検索してもらって、
あとはデタトコ勝負。いざ出発。
 
朝一で動いてもかなりギリギリの予定なので
あまり写真を撮ったり街に感動してる余裕も無い事をご了承ください。

まずはニース市内にあるマティス美術館へ。
教えてもらったバス停が宿から歩いてすぐだったのでここは問題無く来れた。

割とコンパクトな美術館で入場はなんと無料。撮影は禁止。
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初期から晩年までの作品が、ちょうどよいボリュームで展示されていて見やすい。
特にブルーヌードやスイミングプールの切り絵作品を見る事ができて良かった。
切り絵もやはりその大きさに驚いてしまう。
礼拝堂のプランドローイングや模型等もあるので、期待が高まる。

ホントは近くにシャガール美術館もあるのだが時間がないので断念する。
そのままヴァンス行きのバス停へ向かう。
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トラムに乗りつつ、街の少し東側の何の変哲も無いバス停に着く。
がしかし。
教えてもらったバス停にはヴァンス行きのバス表示はなかった。
さあ困ったぜ。
こんなこともあろうかと早めの行動を取っていたものの
ホントのバス停はどこだ?

事前にいくつか調べてた情報で一番信憑性の高そうなのに賭けてみることに。
街の南側に横断している長い公園の南端、ビーチの目の前だ。
トラムで少し西まで戻り、歩く。
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この公園を大規模工事してるから、バス停の混乱が起きてるんだろうか。
まいっちゃうなあ。

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お祭りの時期なのか、ちょっとグロい顔のヤツを横切り、

ヴァンス行きバス「400番」の表示発見!でもここは到着バス停ではないか?
目の前のレストランの店員に聞いて見たら、
めっちゃメンドクサそうに「ここじゃなくてあっち側」と言われる。
きっと何回も聞かれててウザいんだろうな…
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公園の端っこをぐるっと反対側へ回ると、
マクドナルドの前にあったバス停!

でも停まってるバスは400番じゃなくて94番 ヴァンスって書いてるけど。
運転手さんに聞いて見たら、400番でも94番でもヴァンスに行くから大丈夫とのこと。
出発5分前、ギリッギリなんとかなった…
 
3月初めだというのに日差しは強くて、地中海が青い。
これがニースの光か。

確かに老後に訪れて長期間過ごしたくなるような雰囲気だ。 

バスは海岸線から山の方へ登って行く。
途中、山の上に作られた町が見えた。
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サン・ポール・ド・ヴァンスかな?

何とも素晴らしい田舎の眺めが続き、ヴァンスに到着。
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バス停から10分ちょい歩く。
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「チャペル マティス」っていう看板がぽつぽつ立っているので、
気をつけていれば迷う事はなさそうだ。
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いい眺め。穏やかな山奥って感じの町だな。

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アンリ・マティス通りを登るとついにロザリオ礼拝堂が見えて来た。
開館5分前に到着。何人か並んでる。うお、日本人も。
日本人の海外旅行情熱ってすさまじいな…。

礼拝堂は開館時間が限られてるので、これもサイトで要事前チェック。
 
いや〜…いつの日か訪れたいと思っていた場所だけど
いざホントに着いてみると、ここまで来れてしまうもんなんだね。
まだ入ってもいないのに感慨深くなってくる。

白い壁に青い屋根。屋根の上には装飾的な大きく美しい十字架。
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今まで見て来た巨大で豪華な教会にくらべると
ずいぶん小さくて素朴な存在感だ。

そしてついに開館。
中に入って階段を下りる。撮影はやっぱり不可。
チケットを買うと、フランス語で何やら説明された。
?という顔すると、入って来た入り口の横の窓を指差して
「Fish、Fish」と。あ、窓がステンドグラスになってて、
かわいい魚の絵になってたんだ。
これをちゃんと見逃さないでねってことだったのね。 

礼拝堂に入る。うわ〜…
これまた昨日の最後の晩餐と同じ様な、
立ちすくんでしまう感の共有。

と思ったら、おばあちゃんが、客を全員座らせてフランス語で解説を始めた。
英語しかわからないからと去ろうとした客がいたけど、
いいからまず座って聞きなさい!と強引に座らせてられていた。
おばあちゃんのフランス語は20%くらいだけ英語が混ざっていた。
ところどころ説明がわかる。
この人は牧師さんなんだろうか。
地元の方なら子供の頃にマティス本人に会ってるかもしれんよな。
今思えば聞いてみりゃよかった。
 
解説が終わり、空間に浸る。

ローマからミラノまでで喰らいまくった教会って
どこも特有のちょっと怖い感じの仰々しさというか
すいませんオジャマします…ていう居心地の悪さってのがあって、
それは自分がキリスト教じゃなくて馴染みがないから感じるのだろうけど、
ロザリオ礼拝堂にはその感じが無かった。 
むしろ居心地が良くなるような美しさ。

青、緑、黄色の植物の葉のイメージのステンドグラスから
入ってくる光。黄色の部分だけ曇りガラスになっていて、
床まで届く光は青と緑の部分だけ。
細かい光の調整をしているんだな〜。

壁も天井も床も真っ白なのだけど、
礼拝堂内に入ってくる光はステンドグラスを通過してくるので、
実はその空間全体は淡い緑色を帯びていることになる。
光が入ってくる量と、礼拝堂のサイズのバランスも心地が良い。
決して広くはない空間なのだけど、ゆったりした気持ちになる。
このスケールの感覚、マティスの絵画と一緒だ。包容力すごい。

そのことを利用した仕掛けがあって、
礼拝堂の横に小さな部屋がくっ付いており、
装飾が施されたドアで仕切られている。
装飾越しに部屋の向こうが見えるようになっていて
ここから漏れてくる光が目の錯覚で淡いピンクに見えるのだった。
これがまた美しいこと。タレルの作品に通じる光のコントロールだ。

白いタイルの壁には黒線の大きなドローイングが描かれていて、
それは聖書に描かれたキリストの生涯だ。
どの教会にもキリストの生涯がわかるような絵画や彫刻があるわけだが、
それらを散々見て来た後で、この極限にシンプルになった宗教画ドローイングを見ると
マティスの開放的な感覚がなお伝わって来る様な気がする。
コママンガのようだけどその境界線は無くて
各場面の並列と、場面毎に番号が振られている不思議なドローイングは
他のマティス作品とひと味違う。

向かいに位置するステンドグラスからの光とこのドローイングの掛け合わせ、
光の揺らぎと線のゆらぎが感動的。

祭壇はガサガサしたマチエールの黄土色の石壇で、
これはパンがモチーフになっているとのこと。
キリスト教ではパンが重要なモチーフらしく、
それを祭壇に当てることでどんな意味になるのかはわからなかった…
祭壇の上に置かれている十字架もキリストが線になっているシンプルさで、
テーブルクロスや燭台もデザインされている。

は〜…クリーンだ。心がクリーンになる!
人間なんてドロドロしてて、よって芸術もまたドロドロしてるはずなのに、
芸術を保ったままここまでクリーンな表現に到達してるのは
1つの奇跡だろう!!何なんだよこれは… 

ジーンと堪能して出口の方に移動すると司祭の祭服も展示されている。
これもマティスのデザインで、切り絵から起こしたものだがとってもカラフル。
祭服がこんなにカラフル…不思議だ。

名残惜しいけどニースへ戻る。正に夢のような体験ではないか。
ニースに戻ってからは現実が待っている。
果たしてバルセロナ行きのバスには乗れるのか。 

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ニースの地中海も夕日モードに突入。

バスの終着から歩ける距離にある
宿のニイちゃんに教えてもらったユーロラインの事務所に行くと、
チケットはここで買えるけど、
バス乗り場はなんと郊外のコートダジュール空港の近くだと説明される。
ここじゃないの!?

バス出発の時間までは1時間程。
電車に乗ればギリギリとか言われたけど
不慣れな街でギリギリ移動はキケン過ぎるので、
仕方なくタクシーに乗って、解決。 

検索しても辿り着けなかったので同じ境遇の人へ…
ニース(Nice)のユーロライン(Eurolines)乗り場のアンサーは、ここでした!(2012現在)
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ホントに一歩間違えたら乗れなかったレベルだな。アブねえ〜…。

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どこかから23番のバスに乗ってくれば、
ユーロライン乗り場のすぐ近くで止まるようだ。

これが乗り場だ!
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すげー適当な乗り場な上に、バスの運ちゃんには全く英語通じねえ。
スペイン語!手続きはユーロラインだったけど乗るバス自体はユーロラインのバスじゃないし、
自分ら入れて5人しか乗ってないけど大丈夫なんだろか。 

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行き先も紙っぺら1枚をテキトーに貼ってるだけだ笑

夕日に向かってバスは出発した。
ちなみにもちろん深夜バスだ。バルセロナ到着は朝6時の予定。
途中運ちゃんの自作CD-Rを爆音で流される。すごいセンスだ。

そして、今度はだんだん自分の調子が悪化していった。
パーキングエリアで夕食食べてた時はもうフラフラでだるくて
無意味にイライラしてくる。
あ〜これは絶対Y子の風邪がうつったなあ。
あってはいけない事態だ。
 
車内で相当具合悪くなっちゃって、まともに眠れない。
困ったな。
Y子もまだ本調子じゃないし、バルセロナどうなっちゃうわけ。 

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