やまもとのグレーゾーン

札幌の絵描き山本雄基のきまぐれ雑感と日常。

カテゴリ:海外美術鑑賞記 > 2013冬ベルギー

ゲント翌朝。
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宿の部屋からの眺め…もしや夢ではという光景の昨夜の彷徨いはやはり現実だったか。
改めてなんなんだこの景色は。
宿のwifiで無事友人サム君と連絡がつく。
サム君はコロンビアへ彼氏のユアン君に会いにいってるので、
ゲントの友人に部屋の鍵を預けてるとのこと。

その友人アンドリュー君と連絡を取り、
お昼に街の中心部のスタバで待ち合わせ。
それまで周辺をブラブラ。
雪の降る白いゲント、またたまらん風景だ。
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あ〜この街歩いてるだけでめちゃ楽しいんですけど。
さすがの僕でも風景にたくさんカメラを向けちゃう。
しかも、こんな城まであった!! 石でできた古い城。
ハッキリ言って、ドラクエの世界観だよ。
こんな中世観ってドラクエやFFなどゲームの世界でしか体験したことなかったわ。
きっとこういう場所を取材して作られてるんだな…。

城の中に入ってみたら、博物館みたいになってた。
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剣や弓やヨロイにくさりかたびらなど武器防具、
やっぱりゲームの世界に入り込んだ感。
ギロチン台の複製まで。

その後アンドリュー君と会えまして、無事鍵ゲット!
サムのアパートまで案内してもらう。
サムの部屋はめっちゃ広かった。
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かなりボロいコンクリのアパートを、
自分でリノベーションしながら住んでる感じでカッコ良い。さすが建築士だ。

 さて一段落したので本腰ゲント視察へ。
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この街の真ん中にあるデッカいセントバーフ大聖堂で、
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目的その1ファンアイク兄弟の「神秘の子羊((ヘントの祭壇画)」を見る。
中は撮影不可。やはり荘厳な内部に、この作品専用の小部屋があって別料金で入場する。
一部修復中で印刷パネルにすり替わっていたけれど、十分すぎる見応え。
ものすごい描写の質だ。
それに教会で観音開きの宗教画を見られるという体験。
美術館で宗教画を鑑賞するのとエラい違いだ。

キリスト教のことをほとんど知らんかった自分にとってこのような宗教画は、
描かれているテーマが何なのかをある程度でも知らないと中身がさっぱりわからんわけなのだが、
ここにもなんと日本語の音声ガイドと解説文が!これはありがたい…
真ん中の、血がピューッと出ているのがキリストではなくて子羊だったり、
各パネルの配列や描かれた人物もわかってただただ勉強になる。
作品の裏側にも、パトロンの肖像画が一緒に描かれていた。

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聖堂の裏側には、ファン・アイク兄弟の銅像があった。

トラムに乗って中央駅方面へ向かう。
途中で降りて大きな公園を横切っていく。
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ソリ滑り。冬の光景もいいが夏も見てみたい街だ…
通行人に道を尋ねつつ、

目的その2 ゲント現代美術館S.M.A.Kも見る。
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あまり見た事がない現代美術作家の作品がたくさん見れておもしろい。
また一部だけ。
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Panamarenko パナマレンコ、名前だけ聞いた事がある。
キャプションの下のほうに、
ツイートのハッシュタグを指定しててノリがイケてる美術館だな。

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これ、なんかめっちゃ良かった。

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Mark Manders マーク・マンダースというオランダの作家だって。

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お、やっぱりありましたミヒャエル・ボレマンス。
実はヨコトリで見た時などあんまピンと来てなかったのだが、

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この不思議な家を巡る一連の物語的な作品群はおもしろかったな。

映像作品もあったし、

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ちょっと暗くて見づらいけど立体作品まで。これはイマイチよくわかんね。

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タイマンスもゆったり一部屋。

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Francois Morellet 初見の幾何学系抽象作家。

結局絵画ばっかり注目してみてしまうが、
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ラウル・デ・カイザーもしっかり締めとして展示。
大きい作品でも絶妙な抜けてる感は変わらない。
ベルギー現代絵画、アツいな。
フランシスアリスの絵画もそうだけど、
緩めにキャンバスを貼って、ボソっとしたグレイシュな気品塗りって感じの
ベルジャンペインティングの系譜ってのがあるのかな。

良質なオルタナ感に好感が持てるいい美術館だった。

隣のゲント市立美術館は古典絵画館。
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規模の割には地味なコレクションで
ドイツやフランスで見た様な大御所が並んでいない。
どこにでもあると思われたお隣の国のレンブラントも無いのは不思議だった。

ジェームズアンソールなんかが並んでたり
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ちょっと奇特な無名作家の作品等が目立ってた。
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なるほど。 
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こっちにもデ・カイザーか。すごいリスペクトされてるのかな。
いや〜見るたびに微妙に変化があっておもしろいな。

ゲント、良い!!!
サムのアパートに戻りひと息。
お風呂に浴槽があるので、超ひさしぶりに湯に浸かる。
自分のレジデンスもシャワーしか無かったし
今まで泊まり歩いたとこも全部シャワーのみだったので
これは嬉しすぎる。 

本日月曜は美術館が休みDAYなので、
アントワープの聖母マリア大聖堂を見に行く事に。
本当はアントワープの現代美術館にも行きたかったけど仕方が無い。

ちなみに電車の駅チェックや時刻調べ等は
各国の鉄道会社のサイト(日本で言うJR的な)でだいたいなんとかなる。
わからなければチケット買う時に駅員さんに聞く。

ゲントから電車で1時間ちょいの大きな街だった。
ベルギーで2番目の人口のようだ。
着いてさっそく地下鉄に乗ってみる。ベルギー初地下鉄。わりとキレイ。
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市街地の西側の駅で降り…、
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すぐに現れたまたしてもデカいデカい聖母マリア大聖堂の前には、
ルーベンス像が頭にハトを乗っけて堂々としていた。
ルーベンスの出身地なんだもんね。

ある意味それ以上に驚いたのは、
聖堂の前にフランダースの犬の石碑が日本語でドーン。
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以前ここを訪れた鈴木君も言っていたけど、
現物をみるとやはりヘンだ。

そんなわけでここにはネロが最後に見たという設定の
「キリスト降架」というルーベンスの代表作があるのだ。
さらにキリスト昇架もある、マリア被昇天もある、キリストの復活もある、ルーベンス祭な教会。
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内部はこんな感じでずいぶんと絵画が全面に押し出された展開だ。
 
奥まで歩くとありましたキリスト昇架。
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うわ〜…とただただ圧倒されてしまった。
3面の絵画になっていて、
向かって右パネルの左上部に日食の描写があった。
福音書の記述の絵画化とのことだったけれど、
この劇的なシーンと一緒に宇宙の現象が描かれていたのは興味深い点だった。

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ここにも日本語解説が詳細に。ありがたいわ。
いやあやっぱり教会の中で宗教画を鑑賞するというのは体験として全然別物だ。
京都の寺院で国宝画を見るような感覚に近いっちゃ近いけど、
あれ以上にすいませんオジャマします…なちょっと後ろめたい気持ちを持ちながら、
ひんやりした、天井の高い荘厳な空間演出の中で、
未だ慣れない残酷な内容の絵を前にするのだから
何とも言いがたい感覚になる。 

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中央の祭壇前にはマリア被昇天。

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キリストの復活は残念ながら修復中だった。

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キリスト降架。

両面がそれぞれ、キリストがマリアのお腹の中にいる場面と、生まれたばかりの場面になっていて、真ん中のキリストとがっつり生死の対比がされていて強烈。
こういう構図は他の宗教画でも見覚えあるけど、ルーベンスの濃厚な表現だと一層参るし、
これでもかという程至る所で見てきたルーベンスの中でもこれらの出来は突出してるように見えた。 
苦手苦手と言ってきたルーベンスだったが、
数多く見ていくうちに慣れて来て、ついに完敗だ。この画家すげえよ…

ネロはこの絵の前で息絶えたので、こんな解説まで。
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日本人に質問されすぎてアントワープの人が調べたのか笑
このエピソード、丁寧に他国語に翻訳されてまで説明されていた。 

聖堂のショップ前にまで…
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これはだいぶニュアンスが違う!

帰りは歩いて駅まで行ってみる。
アントワープも街並が良い感じ。
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20分くらい歩いて駅。駅もカッコいい。

時間が余ったので帰りにブリュッセルに寄ることに。
これまた電車で1時間ちょい。
美術館以外のプチ観光を済ます。
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小便小僧と小便小娘がいたので、おそらくここは放尿の聖地なんだろう。

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いろんなとこで甘いお菓子の香りが漂うので
せっかくだしベルギーワッフルを食べてみた。おそらくうまかった。 

ゲントに帰って来る。2日連続して教会での宗教画に圧倒されたので、
もう少し基礎知識が欲しいところ。
どれ、iPhoneのアプリで何かいい聖書アプリでも無いかなあと探してみたところ、
「マンガ聖書」なるアプリを発見!
これなら敷居が低いし読めるはずと購入してみる。
よ、読める…これで今後の教会でも少しはマシな鑑賞ができるかもしれぬ。

サムの鍵を友人に渡してさらば美しいゲント。ブリュッセルへ向かう。
国が小さいので、主要都市も列車一本で一時間ちょいで回れてしまう不思議。

ブリュッセルには現代美術系のアートセンターもあるのだけど火曜も休みだったりして
残念ながら見れず。中央駅から徒歩10分程の王立美術館へ。
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古典はルーベンスやメムリンク、少しのブリューゲルなどがあるけれど
全体的にはやはり渋めなコレクション。
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さすがのルーベンスの大作は、なぜか壁掛けじゃなく足付きの展示。壁が弱いんだろうか。
これはこれでキチッと垂直に立っててなかなかカッコ良いけど。

もうひとつ目玉作品は、ダヴィッドの「マラーの死」。
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ドラマティックな作品ではあるけれど、
僕どうもダヴィッドってしっくり来ないなあ。
ルーブルで見たダヴィッドも、この絵も、サクサクっと上手く描き上げてる感じで、
執拗な描写エネルギーや絵画変態性をあまり感じないんだよな。
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優等生的な仕上がり。
マラーってダビッドの友人で革命家で、
きっとダビッド自身ももの凄くショックだったのだろうし、
右下のサインの存在からしても特別な思いで描いたと想像できるし、
光の当て方や構図は最大限カッコ良く描かれているのだけど、
形式的な演出力で感情的な部分はどうも外側にあるような感覚。
それは今で言うThe Big Pictureのような劇的な写真報道のような役割もあっただろうし、
モニュメントっぽいのがお得意だからなんだろうけど。

でも、今現在までに蓄積されたあらゆる絵画の魅力が出揃った目線から古典に遡っても
やっぱり同じようにグッとくる絵画ってあるので、そういうのが好みだ。
ダビッドで良かったのは、NYのメトロポリタン美術館で見た「ソクラテスの死」かなあ。

ちなみにこの王立美術館、現代美術の広大な地下ブースを現在増築中らしく、
それを見せて欲しい!って感じだ。
ベルギーは現代美術の整備を進めてる感がヒシヒシ伝わってくる。 

横にマグリット美術館が繋がっているのでこちらも駆け足で鑑賞。
撮影不可。
中期の妙にカラフルな色使いの見た事無い作品群が有名な時期の作品よりもずっとおもしろかった。
個人美術館はこういう、有名画家の定着したイメージの絵、じゃない絵が
1人の画家の人生の流れの中で見られるのが良い。
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これは美術館入り口にあった、マグリットの作品を元にしたオマージュ立体。
ほぼ同じ印象の作品があったのだ。

美術館前にちょうどバス停があったので、
ブリュッセルMidi駅まで行きそうなバスに乗り、
無事に辿り着き、今度はオランダへ移動する。
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ちなみにこれがベルギーの電車で、

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こっちがオランダの電車。
デザインと色彩感覚がそれぞれの国で違っておもろい。

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電車で2時間くらい、ロッテルダムに到着。
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駅の天井がカッコ良さげ、でも大部分が改装中状態。

サムに、ロッテルダムに行くならといくつかのオススメ美術スポットを
教えてもらっていたのでそれらに向かう。

美術館閉館まで時間が全然ないので何もわからず市電に乗り込むも
チケットの買い方がわからず、そのまま美術館前まで着いちゃった。
チェックマンに当たってたらやばかったな。
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街並にじっくり目を向ける余裕も無く、

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これまた駆け足でBoymans Van Beuningen美術館を鑑賞。

おおここも古典から現代まで、一通り揃っている。。。
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ブリューゲルのバベルの塔、有名じゃない方のバージョンがあった。
小振りで、塔の造形バランスがけっこう違う。
有名な方はウィーンにあるので本物見た事無いが、あっちの方が良さそうだ。
でも細部の描写はこちらでも十分見応え。
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デーハーなキャプション…

もう少しじっくり見たかったけど閉館ギリギリだったので仕方が無い。
ハデさは無いけどデザイン部門まで一通り揃ってる良い美術館でした。

近くのWitte de Withという現代美術のアートスペースにも立ち寄るも、
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こっちは展示替え中で入れず。うーむ今日は現代系に恵まれねえな。

もうちょっと歩いて、キューブハウスをチラ見。周辺にも不思議な建物が多い。
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すぐそこの駅からさらにデン・ハーグまで電車で移動する。
わずか3時間滞在のロッテルダムだった…。

陸路での移動は移動自体が楽しいので良いな。

デンハーグに着いたら夜。
着いてすぐのとこにあった適当な店でレーズンパンの詰め合わせを買ったら、
石鹸みたいな味がしてキモチわるい!
ヨーロッパでここまでマズいパンは初めて食べたな。失敗した。
大きめのユースホステル泊。 

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