やまもとのグレーゾーン

札幌の絵描き山本雄基のきまぐれ雑感と日常。

カテゴリ:海外美術鑑賞記 > 2013冬NY周辺

今度はアメリカ東海岸視察だ。
オフシーズンのせいか、airberlinの航空券はなんと往復約450ユーロ。
円安になってきてても50000円以下ってとこだ。
日本からNYに行くのと比べたら半額くらいだし飛行時間も8時間。

NYの知合い作家さんも増えたし、
今回はフィラデルフィアとワシントンDCまで足を伸ばして
デュシャン巡礼もしてしまおう!
と年明けすぐに勢いで決めたのだった。

寝坊もせずに、ベルリン入りした時以来久々のテーゲル空港到着。
余裕をもって到着したが、窓口を間違えて並び30分程無駄にする。
そして正しい窓口に行ったら今度は、
「書類が足りないのでこれでは飛行機に乗れませんね」と言われた。
え??

わけがわからないので必死に質問すると、英語の説明が複雑になってきて
頭が混乱ひ汗。何度も聞き返してなんとかわかったことは、
ESTAが無いとアメリカに行けないということ。

ESTA?なにそれおいしいの?

どうもアメリカに入国するには観光ビザの代わりになるような
ESTAという証明をインターネットで取る必要があるらしい(15ユーロかかる)。
そしてそれを知らない僕の様なアホの為に、
空港内にESTAを発行できる窓口があると教えてもらう。
しかしさっき無駄にタイムロスしたせいでゲートクローズ時間が迫る。

空港内を超ダッシュでその窓口を探し、4回程窓口を間違えながらなんとか見つけるも
係のおっさんが英語全く話せないという新たなピンチに見舞われる。
 
イッヒ メヒテ ESTA!!!

と多分間違ってるけど多分通じそうなドイツ語を披露し、
おっさんも急いでくれる。が、なかなか何言ってるかわからん。
必死にボディランゲージと指差し連発してなんとかESTAの発行に成功。

猛ダッシュで窓口に戻ったけれど、結局10分オーバー!!
めっちゃ頼んだけれど完全にゲートクローズしたとのこと。
…ス、ストックホルムに次いで、またおれは飛行機に乗れないのか
しかし今回は損害のスケールが違うぞ…一体どうすれば。

頭真っ白になってると窓口のおばさんが
「airberlinではどうすることもできないけれど、
この便はデュッセルドルフで乗り換えの便だから、
デュッセルまでの飛行機が他の会社であればまだ間に合うかもしれない。
あっちのルフトハンザならあるかもよ。」
と奇跡の助言をくれた。こういうときは英語がすんなり耳に入って来るから不思議だよ。

ダンケダンケダンケシェーン!
超絶感謝をして、ルフトハンザの窓口へ行って汗だく半ベソで事情を説明すると
「あなたはラッキーですね。ちょうどぴったりの便がありますよ」だって!!
ダンケダンケダンケシェーン!!!!!
当日券の250ユーロ(痛い)を購入し、
無事にデュッセルで乗り換えることができたのでした。
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airberlinの機体!!!!泣けるわ!!!

ドイツの人の優しさに僕は感動した。
こんなアホな日本人に親切に教えてくれるんだねえ…。
いやあしかしハナからアメリカは敷居が高いわ。
機内でも入国の為のチェックシートを書かされたし。

ところで機内ではダークナイトライジングを見た。
映画が見れる程の英語力は到底ついてないのだけど、
なんとなく話の流れはわかった。
なぜ変な井戸の中で修行が始まるのかは解らなかったが、
きっと言葉がわかっても突っ込み所なんだろうなと思って最後までみた。
ダークナイトには到底及ばないが、
結局いつものハリウッドノリの集合で満足した。

さて奇跡的に到着できた6年ぶりのJFK空港に思わず笑みが…。
ボロい地下鉄も懐かしい。
うおーニューヨークのニオイがする。
マンハッタンのチャイナタウンから、
かずえさんに教えてもらったチャイナバスっていう格安バスに乗る。
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乗り場。
まずはそのままワシントンD.Cへ向かう。約4時間半で20ユーロ。安い! 
NYから出るってことにまずちょっと興奮、
遠ざかる摩天楼をバスの窓から眺める。

せっかくの長距離だが、NYを離れると景色も真っ暗。
何も見えなくて味気ない。昼だとどんな光景なのだろう。
そして特に問題もなくDCに着いたのが深夜11時。
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降り場もまたチャイナタウン。

ここから歩いて15分くらい、予約してたホステルに行ってみると、
おいおい!!10時半ですでにフロント終了してて、中に入れないじゃないか…!
 
なんで今日はこんなにピンチが続くんだ(理由は自分が馬鹿なことのみ…) 
仕方がないので深夜の街を徘徊しホステル探し…
深夜ウロウロしてて大丈夫なのか!?
…だめだ見つからねえっす。
その辺のホテルだと一泊200ドルとかだった〜無理です。
絶望しかけたその時、眼前にマクドナルドがぁー救いのMマーク!

腹ごしらえでセットを頼み、ドリンクを
「コカ・コーラ プリーズ!」と全力の発音でお願いするも
は?という顔される。コカコーラが通じねえ。完全に自信喪失させられた。
あ、「コーク」って言えばまだ通じるのね…。
横暴な態度の店員がアメリカっぽい。

店内で飛んでるフリーwifiを捕まえて、
無事に別のホステル発見。さらに歩いて15分で到着、ステイすることができた!!
つ、疲れた…
まだ何も始まってないのにアメリカは1日目から攻撃力高い。

午前中に本来予約してたホステルに移動、
荷物を置いてナショナルギャラリーへ。
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そういえば映画「ハーブ&ドロシー」でたくさん映ってた美術館だったな。
 見覚えのある場所もちらほら。

通路にやたら植物が茂っている。
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まずは古典美術巡り。
またしてもまたしてもビザンチン美術からの美術史の流れを
順に追える展示だ。
海を超えてもしっかり勉強できるレベルでなんでも持ってますね… 
それにここにもダビンチ作の小さな肖像画。
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背景の植物がいい。 

ヨーロッパ各地と違って、各国均等な分量で展開されてる流れで、バランスが良い。
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ルーベンス、ライオンを描く。

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ルーブルで見れなかったシャルダンもそこそこまとまってる。

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またフェルメーる。これはタッチを消してボカしを効かせてる。

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アングル、こんな画中画…というか
システィーナ礼拝堂の中のローマ教皇ってな作品も描いているのか。

当然1800年代から突然妙なアメリカブースが出現する。
畏怖の念があんましないようなロードオブザリング的な広大ロマン風景画とか、
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すでにちょっとアメリカンオリジナルなエレメントを感じる。

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印象派ゾーンでは、いつものメンツに紛れてメアリー・カサットがたくさんある。
良作が多いです。

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ピカソはこういう傑作をきっちり残してるから参る。

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ルドンはいつもこっそり気に入る。

地下通路で繋がってる別館は現代美術。
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チャッククロース細部。

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お、見た事ある夫妻が…

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おお〜スティルがどーんとあると、アメリカに来たなあって感じがします。 

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後期ポロックも、良い。

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これ小振りのマザウェル。やっぱマザウェル、かなりイイ。

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HOWARD HODGKIN 初見。イギリスの画家のようだ。

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撮影不可ゾーンの一番上の階のバーネットニューマンの企画、
晩年のシリーズ。これもとても良い。 

20世紀絵画のラインナップはやっぱヨーロッパとだいぶ違うな。
こっちの流れで勉強してきたので、しっくりくる。
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新館の建築、この感じはなんか知ってると思ったらは
ルーブルガラスのピラミッドとか、ドーハのイスラム美術館と同じ
イオ・ミン・ペイだって。

美術館を出てナショナルモール、どれ記念塔のふもとまで歩いてみるけれど
歩いてもなかなか近づかん…どれもこれも建物がデカいので距離感が狂ってるようだ。
結構遠い!!
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ホワイトハウスも遠目に眺めて、戻って来たらヘトヘトだ。
それにしても、どうしちゃったのというくらい暖かい。
なんと10℃以上あるようだ。春かと思うわ。汗だく。

夜は、大学の研修旅行でアメリカ滞在時期がかぶってる
(というかこっちがある程度合わせたんだけど)、
伊藤先生ご夫妻と久々に再会。旅行会社のM吉さんとも8年ぶりくらいに再会(笑) 
皆さんフライト直後でかなりお疲れのようだったけど、
いやあアメリカで顔合わせっつーのも不思議なもんだなあ。
OBOGをイジろうと思ったら近い年代のOBOGは居なかった…
自分よりかなり若い世代の見覚えのある子達3人のみを覚えた。
顔と作品がようやく一致した。 

DC2日目。またモールへ。
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博物館前に、倒れたまま放置された屋台が。

今日はハーシュホーン美術館からスタート。
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円形の広い回廊状の展示スペースが特徴的。
企画はアイウェイウェイの個展。
去年はまだ軟禁されてたはずなのに、この規模の個展か。 
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まとまった展示を見るのは初めてだ。
実際背景について詳しくないので深い鑑賞ができたとは思えないけれど、
中国の形に木を掘ってる割と有名な作品から、大きなインスタレーション、
映像作品まで幅広く、空間認識とユーモアのセンスがある。
監視カメラの彫刻家などおもしろいが、
全体的には、造形だけ見ると、そつなくこなせる器用な優等生って感じがする。
全活動を通してこそ重要な作家だと思う。
後にちょっと調べたら、アメリカ時代の大学の先生がショーン・スカリーで
そっからジャスパージョーンズ、デュシャンと系統を学んでいったとのこと。
なるほどねえ。

上階の常設は絵画が多くてうれしい。
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不気味なウォーホルを黒いベルベットの支持体に描いてるシュナーベルの絵画や、

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マークグロッチャンの厚塗りストライプの絵画。これは見応えがある。

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次はスミソニアン航空博物館へ。
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飛行機とか宇宙船の実物展示。子供でもかなり楽しめそうだ。
説明など読んでるヒマもなく割り切って駆け足でザーッと見る。

ナショナルギャラリーを一瞬再訪する。昨日閉まっていたマティス部屋を見に行く。
昼の数時間しか入れないようになってる。
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巨大な切り絵作品が額無しで見られる喜び。
だからこの部屋だけ時間絞ってるんだろうな。 

自然史博物館も覗いてみる。

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動物剥製ゾーンは、やけに動きを強調した展示。

鉱石&宝石ゾーンに思いのほか長居。
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透明の物質ってそれだけで興味をそそるんだけどそれはまあ自分の作品が
そういう傾向にあるからでもあり。。。

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展示もすごい綺麗!

何よりダイヤモンドの反射光に思いがけず見とれてしまった。
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ティアラとかすげー。
絞って反射光だけ撮ってみる。
宝石なんて無縁の世界と思っていたが、学術的なものとして見せられると
一気にハマる。博物館おもれーな。

あと虫ゾーンがやべえ。タランチュラを見た。
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それとイモ虫と戯れるオシャレお姉さんとちょっと引いてるその彼氏な光景を見た。
このような類いの女の人は、妙に魅力的に映るのだった。 

モールの博物館群は入場無料なのですばらしい。
満喫して、駅の上階から発車してる深夜バスを待つ。

さすがに気温も下がって来て冬に戻ったな、寒い。
バス到着。grayhoundというメジャーなバスだ。
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バスの中ではなんとフリーwifiが飛んでいる。
しかしまた夜間の移動だと風景が見れない。
真っ暗だなあ。 

次の行き先は伊藤先生におすすめされたピッツバーグ。 

早朝6時にピッツバーグ到着。
ピッツバーグの目的はアンディウォーホル美術館だ。
ここウォーホルの出身地なのだった。
 
しかしDCから一転、ものすごく寒い。
マイナス10度超えの寒さ。 
外を歩く気が起こらない寒さなので、
仕方なくそのまま美術館開館時間までgrayhoundバスターミナルで待機することに。
4時間もここでじっとしてるのか…まあフリーwifiも来ているし電源もちょうだいできる。 

やっと10時になり、徒歩で美術館へ移動。20分弱歩く。寒い!!!
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歩道に生えた煙突から白い煙が。

極寒なウォーホルブリッジを渡る。
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振り向けば、ピッツバーグ市街。

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到着。外見は地味だが、中に入ってみると
実は個人美術館なのに6フロアもあるデかい美術館だった! 
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入り口からテンション上がるも、中はまた撮影不可でした。

不運な事に、中期の巨大ペインティング部屋が丸ごと改装中だったのだけど
他の美術館でもその時期の絵画は結構見ているのでまあ良しとしよう…ガクっ!

それを差し引いても、見応えがある。
超ハイセンスな初期ドローイングから、
銀色のヘリウムバルーンや酸化絵画まで揃っている。
カッコいいし、とことん空虚。
タイムカプセルもあった。

しかもウォーホル以降の関連作家の巨匠レベル作品も実は結構展示されており、
リヒターやポルケもあるし、クーンズ、ウールや、
なぜかハンスフーケ、さらに村上隆2002年の作品なんかまで。
すげー豪華…そしてこれらもまたウォーホルをベースに並んでいるせいか、
他の美術館に比べると、
豪華な作品だらけなのにスカーっとしてて何だか奇妙に思えてくる。

映像も充実していて、
エンパイヤなどの有名な作品からインタビューのアーカイブまでズラリ。すっげー。
とても見きれる量ではないのでチラ見で終えてしまったけど、
ウォーホルがキャンバスに絵具を塗っている映像には
しばらく虜になってしまった。 
オシャレにシンプルなシャツを着たウォーホルがただ黙々と、
筆触を確かめながらペタペタと塗る映像…指なんかも使いながら塗る。
何か見えないアンテナが反応している様な、センスの場だ。
グッと来る…! 

平日の朝っぱらなのでお客さんが全然いないわけだが、
スタッフばっかりやたらいる。しかも若めのスタッフ多い。
大学の研究とかと連携でもしてんのかな。

ちょっと時間があったので、そのスタッフを捕まえて
ピッツバーグの他のアートスポットを聞く。
近くのいくつかのオルタナティブスペースがあるけど内容は微妙との事で
郊外のカーネギー美術館をレコメンドされた。バスでの行き方も教わる。 

まちなかのオルタナスペース2軒ほど回る。
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確かに微妙だけど規模はデカめ。
さてカーネギー美術館方面へ。バスで15分くらいか。

カーネギー工科大学(ウォーホルの出身大学)が近くにあるので
学生街っぽい街並だ。
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美術館はやはりデカい。

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ソル・ルウィットのウォールドローイングも、この一連の旅中で何度目撃したことか。
だいたいこんな感じで現代系の美術館のエントランス付近にでかでかと存在してて
良くも悪くもハイセンスな壁紙化しとる。

古典は弱め。近代はそこそこ見応えあり。
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ボナールに隠れがちなヴュイヤールもちょこちょこ気になる作品がある。

油断するとこんなのも…これもアメリカ初期のリアルか。
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こんなキワドいのが収蔵されちゃってるんだ。
自国の試行錯誤の上でのアメリカ絵画ってのはこういう展示見てるとわかるような。

以降だいぶ見慣れた光景。
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どうも最近のマイブームか、マザウェルばっか見ちゃう。


おもしろかったのはここからの現代ゾーンで、
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ジョン・カリンとエリザベス・ペイトンの間にトーマス・シュッテなど。
シュッテは好みじゃないからあんまピックアップしてないけど、
ヨーロッパでもかなりたくさん見た。

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杉戸洋の大きくて見応えのある作品も!

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この並びもヤベえ。左からトマ・アブツ、グロッチャン、
デ・カイザー、sergej jensen(セルジュ・ヤンセン?)。

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アブツの本物もようやく拝めたな。すっげー面倒くさそうな処理を割と丁寧に
工芸的に処理してる感じ。綿布の布地がわかる薄塗り部分が、
厚塗り部分と意識的に分かれてて、各々の色面やグラデーションが
その色と形で空間の矛盾を起こしてる。
サイズが小さいせいか図録とのギャップは思った程ではないにしろ、
塗ってる感、手仕事性を直接愛でられるサイズ、存在感。
隣には真っ赤で同じ放射構図つながりのグロッチャンだが
グロッチャンのほうが物質感や塗りの特殊テクがだいぶ強くてスペクタクル的。

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こっち側、デカイザーとヤンセンはもう少しささやかな存在感なので地味だ。
地味なままイケてる。アメリカまで来てこういうの見ると凄いヨーロッパの抽象!て感じがするのは
勝手な思い込みか。

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Vija Celmins ヴィヤ・セルミンズの星ペインティングも。

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これはクリストファー・ウール。ドリッピングでも硬質な表面か。
側面見ると、これは支持体は固めの木材だ。アルミやらキャンバスやら木材やら紙やら、
満遍なく試してるんだなあ。
…でもちょっとこれは微妙かな笑

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締めはマイク・ケリー。

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逆側のエントランスにもめっちゃデカいウール。
…などなど、いやあ思わずおおおと唸るラインナップだった。
絵画好きにはたまらんな。
ウールはどの現代系美術館に行ってもあるので食傷気味になってきたが。

駅の方までまたバスで戻る。
ピッツバーグに安いユースホステルを見つけられなかったので、
泊まらずにまたバスで移動する。せわしいな。
今度はフィラデルフィアに向かうんだけど、
事前に検索したら電車はちょうど良い時間のが無いので、またバス。
megabusってやつ。こっちはグレイハウンドより適当な感じ。
すべてネット上で手続きして、
専用のバスターミナルもないという格安都市間バスらしい。
大丈夫かなと不安になったが、サイトで指示された場所で待ってたら
ちゃんとバスが来て乗れた。日暮れ前に出発!
こちらもフリーwifiプラス電源までついてて素晴らしいなあ。
素晴らしいけど、なぜか途中の休憩所で3時間も動かず待たされたんだ。
理由は聞き取れなかった…。

そのせいで、フィラデルフィアに着いたのがなんと深夜1時半。
どうやらもう地下鉄も来てないし、
何回深夜の知らねえ街に放置されればいいんだよ…怖ええ。
仕方が無いので駅から恐る恐る宿まで30分以上歩く。寒いし遠いよ。
ただDCでの失敗を元に、
ちゃんと24時間フロントが空いてるホステルを取ったのでばっちりなんとかなった。

 

今回のアメリカのメイン目的の1つは、
フィラデルフィア美術館でのデュシャン巡礼だ。
ベニスやドクメンタに行く現代美術ファンの多さに比べて、
フィラデルフィアまでデュシャンをまとめて見にくる人は少ないのではないか。
現代美術のスタート地点として規定されることもあるのに、泉の写真だけみて判断するわけにはいかん。
情報拡散まで美術に取り入れてるデュシャンに惑わされないためには、
本人の遺志で作品を一堂に集めたここを体感するのが一番だ。

で、旅の直前に発覚したのだけど、
昨日まで展示替えのせいでそのデュシャンの部屋が閉鎖されていて
急遽都市巡りの順序を変更したり無理やり調整をしたのだった。

宿からすぐ近くのバスターミナルからバスでフィラデルフィア美術館へ。
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ワシントンD.Cもそうだったけど、広い。道幅も広いし、街のスペースの取り方が広い。

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見えて来た。う〜ん、デカい。茶色い。

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ロッキーで有名らしく(見てないけど)、ロッキー像があり、
客も階段でロッキーのポーズをしてるフィラデルフィア美術館。

最初にビビるのはどこか見覚えのある巨大シャガール…
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これは青森県立美術館のアレコホールの連作の残り1枚じゃないか。
ここにあったのかー良いですな。
しかしこのスペースにしか飾れなかった感が満載だ。
むしろ展示室に入りきってる青森が凄い。

目的はデュシャンと決めてるので、他でも沢山見た古典ブースはサラッと…
と覚悟して来たが、サラッと見るにしてもボリュームがありすぎる。
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こういった部屋もたくさんある。

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気になるティツィアーノ。顔半分、画面半分が透明のカーテンで覆われてる。
誰のどういう状況なのか調べなきゃわからんが、それ抜きにしてもこれはヤバいな。
見る枚数を重ねるほど、ティツィさんが好きになる。
絵画自体の構造を検証してるようなアプローチが多々見受けられるので。

だいぶ端折ったけどかなり充実しとる。

目玉作品の1つで、見たかったセザンヌの大水浴図があるはずの立派な専用壁では、
なんとルノアールの水浴絵画にすり替わっていた(笑)
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確かに同じ水浴ではあるけれどこの絵、かなり微妙じゃない!?
…いや、実際僕はルノアールに全然反応できてないのだ。
これはこれで描いた本人も傑作と言ってるような作品らしい。
あまたの国の印象派コーナーでも、ルノアールはガツンと入って来ない。

まあとにかくセザンヌは一体どこに貸しているんでしょう…がっくり。

ここも現代ブースが目立って良質だった。
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これはケリーの初期絵画の部屋。

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スカリーのデカい部屋、

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ちょっとギュウギュウだけどトゥオンブリの傑作部屋。

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ジョーンズもラウシェンバーグも中期のハイクオリティなのが普通にならんでる。

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マティスのオーラな絵画(画像は拡大図)もここだったのか。 


そしていよいよ、一番奥のほうにあるデュシャン部屋だ。
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ホントは2部屋あるのに今は片方しか空いておらず
しかも半分はジャスパージョーンズの作品っていう
イレギュラーバージョンの展示。
これはこれでレアだし比較もおもしろいのだけれど
レディメイドが少ない(便器も無い)、回転板も無い、
階段を下りる裸婦2まで無いのがちょっと残念!
だいたいのレディメイドは他の美術館でも見たからいいんだけど、
やっぱり一気に並んでる展示が見たかったな〜。

とは言え、真ん中で堂々としている大ガラスにすぐに心が奪われた。
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ストックホルムで見たレプリカと全然違うし!
あれはやっぱ微妙な出来だったのか。

細部をたくさん観察してみる。
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裏も。裏なんてまったくレプリカと違う。
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パーツ毎の質感も違うしフレームもメタリックでカッコ良い。
そもそも質感含めた全体の構成から、
デュシャンの造形センスレベルの高さをヒシヒシと感じる。

絵画として図像をみたら、下半分は透視図法を使って床面を意識させながら、
ガラスによって面を無効化させようとしている。
上半分は、タイトルと解説を素直に受け取れば「花嫁」となる物体が、
画面上部から吊り下げられた状態を描いてる。天井。つまり上半分と下半分で天地を設定。
が、「花嫁」は下半分にくらべて正面性が強く、ペラッと描かれていて下半分に比べボリュームが不明瞭だ。いや不明瞭というか、僕らの現実とリンクしたサイズ感といえばいいのか。下半分は、画面内で完結するスケール感を持っていて現実とのリンクが上半分ほどではない。
「花嫁」3箇所の四角部分はガラスのまんまで、よりペラッと感が強調されている。
ガラスと構図と自身の解説をうまく使って、上半分と下半分のちぐはぐな空間性を強引に結合させている感じがする。タイトルとグリーンボックスの情報に引っ張られ過ぎると、ついこういう要素を見忘れるので注意がいる。デュシャンはむしろそういう惑わせ方を積極的に取り入れているように思える。

そしてよくもまあうまいことヒビが入っちゃたこと。
後ろからの窓の光がヒビに反射していい感じ。
見れば見る程、異彩を放つ唯一無二の変なモノだ。。

そして奥の部屋に遺作。
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このそっけない奥部屋の怪しい存在感。
お客がいない間に撮っておけ!

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覗き穴。

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よ〜く見ると覗き穴と手前のレンガ壁の間に、
透明の保護ガラスが確認できる。
レンガ壁によるフレーミングがよく出来ている。

ポイントは、覗き穴がちゃんと2つ空いてて両目で見れること。
これは…ぜひニンテンドー3DSで遺作体感コンテンツを作っていただきたい。

片目でみるともう少し情報が限定されて見えて来るのだろうが両目でみるので、
目の前に「出来がいいんだか悪いんだかよく解らんけどめちゃ頑張って作った謎のジオラマ」
があるっていうリアリティがもの凄い(笑)
実はもっともっと幻想的に見えるのかと思っていたんだけれど、
手作り感がとても近くにリアルに感じられる。

もちろん、見える範囲や視点移動の限界値、照明の入念な設定、
それぞれのパーツに対する造形愛などは伝わってくる。
背景の描写の妙な質感、スプレー塗装のような空と雲のボケ感や
ちょっとエルンスト風にも見えるしコラージュぽいペラッと感にも見える森の感じ、
流れる滝の明らかにローテクなキラキラも想像以上に手作りっぽさが…。

これをコソコソ最期の10年以上も作ってたのかと思うと、
デュシャン、あんたは一体何なんだ!という感じ。
死後10年経ってこれが発表されたときの、
リアルタイムの「ええええ!?」感はどんな感じだったんだろう。

遺作の部屋の観客観察も、おもしろい。
覗き穴の存在を知らずに帰っちゃう人、
覗き穴に気付いて、Oh....!と苦笑いする人、
そうだよな覗いて見たらいきなり裸の女が股拡げてるんだからそのリアクションが正しいんだ。
カップルで来て、片方が知ってるようでもう片方の覗いたリアクションを楽しんでる人、
子供に覗かせて、周りの観客が笑ってる光景。など。

そして自分が絵描きだから余計に思うのだろうけれど、
大ガラスと遺作においてはやはり絵描き畑の人の造形物って感じがものすごくした。
それでいて安直に絵画なところには着地したくなかったんだろなあ、と。
大ガラスはまあ絵画と言っていいけど、絵画か否か?みたいな境界論は、じっさい意味無し。

ちなみに、
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同部屋にある最初期のデュシャンの風景画。

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階段を降りる裸婦その1。


今でいうDVD特典メイキング映像的という位置付けと考えれば良いのか、
大ガラスと遺作をベースにしたメイキング作品の残し方も上手い。
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それに、物として欲しくなる要素満載だし。
グリーンボックスだってまず箱の質感とかデザイン、一つ一つのメモなど存在そのものがアイテムとしてカッコ良いではないか…。

このように過剰に造形的な大ガラスと遺作という2作品を軸に、
デュシャンが残した作品全体の押し引きを
俯瞰して考えられるのがおもしろい。
レディメイドや、それこそ一連の便器作品のスキャンダラスな流れ等も
全体から俯瞰して見た方が味わいがあるように思える。
未来から見た自身の見え方を想定していたのか。

ステレオタイプな「ダダ」!っていうイメージよりは、
考え方を拡張させながら芸術ギリギリを常に提示してたような感じだなあ。
レディメイドっていう手法のイメージが先行しすぎて、
たくさんの誤解が生まれているようにすら思える。

ところでこのデュシャン部屋、一番奥のせいなのか人がまばらで、
監視員がやたら話しかけてくるのでなかなか集中するのがタイヘンだった。
こっちも脳に焼きつけようといつまでも部屋をウロウロしたり
何度もこの部屋に戻って来たりしたので、
向こうもヒマだし興味を持たれたんだろう。
そのうちお互いの自己紹介タイムにまで発展する。
推定60歳くらいの彼の名はブライアンという。
数年前にも日本人で2週間程毎日このデュシャン部屋を取材してた作家が居たという。誰だ。

せっかくフィラデルフィアにいるなら自由の鐘も見て来なさい!と言われた。
最後はガッチリ握手して終わる。何なんだ。

他の部屋の監視員も鼻歌歌うしケータイいじってるし、フリーダムすぎる。

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なぜかトランクの箱は別ブースにありました。
コーネルなどと並べたかったのか。

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日も暮れかけ。
ああ、念願のデュシャン巡礼を達成した。
展示が完全体の時にまた来ないと駄目だな。 

昨日ブライアンに教えてもらった自由の鐘、
実は泊まってるホステルのすぐ近くにあったので、
朝一で行ってみる。
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これがかの有名な。(全く知らなかった)
アメリカ史に精通してない人には
ピンと来ないモニュメントなのではなかろうか。
せっかく見たのであとで調べておこう…

さて、バーンズ財団コレクションへ。
フィラデルフィア美術館のすぐ近くだ。
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もともと郊外の邸宅だったらしく、
その邸宅ごと再現して最近リニューアルしてこの場所に移転したようだ。

本当は事前予約が必要な美術館なのだけど
本日第一日曜は、朝一で並べば予約無ししかも無料で入場できるとウェブサイトに書いてあった。
それならもちろん今日を狙って開館時間にゴー。 

受付にはすでに結構な人。入場時間は決められていて午後からのチケットを貰えたので、
それまで隣のロダン美術館をチラ見する。
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ロダンのエロい彫刻は良いな!


ロダン美術館はすぐ見終われる規模だったのでフィラデルフィア美術館も再チラ見。
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これ、ムンク。

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別館にはトゥオンブリの彫刻数点の展示。
それに今日はブライアンがいなかったので落ち着いてみれたデュシャンだった。
 

時間になったので再度バーンズコレクションへ。
撮影不可ですがひたすら後期印象派近辺の名作祭り!!素晴らしい。

最初の部屋からピカソマティスセザンヌスーラの傑作がドンドンドン。 
邸宅ってことで、名作が部屋の壁中にビッシリみたいなアメージングっぷり。
バーンズさん、度を超えて買い過ぎだし、しかも審美眼すごい。
誰かアドバイザーがいたのだろうか。
超一流コレクターって、どういう世界観の中で生きているのだ。

セザンヌのドクロ入り静物にも感動したが、
何よりここで見たかったのはやはりマティス。 
「生きる喜び」がここにある。
2階の真ん中にあるのだけど、ひたすら素晴らしくて泣けるよ。
同じ人間から、どうしてこんなタイプのユートピアな絵画が生み出されるのかと。
ユートピア絵画でありつつ空間は結構メチャメチャになっててわけわからん。
ところでゴーギャンの遺作を念頭に置いて制作したのだろうか。
画面構成は違えど、その舞台に共通性を感じるような。
真逆のオーラだけど。

「生きる喜び」と対面するように、吹き抜け越しに巨大な「ダンス」も配置されてるので
マティス好きには鳥肌もの!必見。
高い位置に設置された動感のある美しい作品。
マチスのタブローの中では相当ハードエッジな部類に入るが
固さは感じない。
パリでこれの別バージョンと下絵もみているが、
どれも人物と色彩のパターンを組み直していて、
このシンプルに見えるバランスの葛藤が感動するよなあ。

「ピアノレッスン」のより具象的なバージョンもあり。

お腹いっぱい。ここからさらにNYだ。
いや〜なんだかんだアメリカは強い。濃すぎる。

街の中のチャイナバス乗り場へ。旧乗り場は閉鎖されており焦ったが
すぐ近くに新しい複合バスターミナルがあった。
ここから約2時間、NYへ戻る。

NYでのホステルはチェルシーのガゴシアンから徒歩1分のナイスロケーション。
2人部屋が当たって、I♡NYのキャップを被ってる黒人のオッサンが相部屋だった。
そして弱々しく「オレ…いびき凄いんだゴメン。薬飲んだから。明日部屋移動するから」
と言われた。めちゃ良い人だけれども、不安だ。
先に言われたら、オッケーノープロブレムとしか言えん。

そしてこのイビキが過去最高に恐ろしい爆音で、グガーグガーっていうより、
ブオオオオオオオオ
ブオオオオオオオオ
ブオオ、ブッ!って、一瞬止まるのが怖い。 
おっさんが下のベッドなので下から突き上げてくる音でベッドが振動する。 
本当に薬飲んだのか!?寝れるわけねーだろ!

過去にも何度かホステルではイビキに悩まされたが
今回は戦闘力のケタが違う。
困り果てた挙げ句、iPodをカバンから取り出して、
音量最高にして大黒さんのアンビエントでイビキを誤摩化すのがファイナルアンサー。
奇跡的に寝れた。札幌の方角を向いて大黒さんに感謝した。 

チェルシーから歩いてとりあえずMOMAへ向かう。
なかなか寒い朝だけど、歩きたかったのマンハッタン。
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子供の頃、「ニューヨークに行きたいかー!」という
某巨大クイズ番組があった。毎回楽しみにしていた。
あれがNYに行きたいと思わせる初期衝動だったに違いない。
あれを見てたか否かでアメリカに対する意識はだいぶ変わるんでないか。
自由の女神には行ってないし今回も行かないけど…。

しかしまさか2回目、しかも美術目的で来る事になるとはな。 

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MOMA。

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あら、インフォメーションの上にクリストファー・ウールのイケてる抽象!
ウール作品もだいぶ見たなあ。やっぱりこの抽象シリーズがかなりいい。

6年前のMOMAは改築後まもなかったので
各方面からの展示構成の悪評を聞いたが、それでも初めてだったので驚きの連続だった。

あの時マティスの部屋に感動しすぎて自分の絵画観が変わって修論もマティスを書いて
今もマティス作品は1つでも多くみておこうといろいろ回ってるのだ。

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今回はそのマティス部屋に、ダンス1も移動していたし
(前回はハズレの階段のとこに高く架けられていてとても遠くて見ずらかった)、
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念願のピアノレッスンもあったので大満足。
しかも隣の部屋ではムンクの小企画をやっており、俺得ゾーン…。
マティスとムンクは同時代だし、薄塗り基本の装飾的バランスに共通したニオイがある。
でも表と裏みたいな。南と北、人格者と狂人、みたいな。

あとモンドリアンの部屋、モンドリアンも各地で見て来たが
MOMAだけがガラスに入れない剥き出し展示をしてて見やすい。
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ブロードウェイブギウギ、やっぱステキだ。

その他前回との比較で少し思った事をちらりとメモ。
全体的に前回よりも流れが良い気がする。
60年代以降は今も細かく並びを組み替えているんだな。
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ポップの後に、FRPとか新素材使った系のアメリカ西海岸ムーブメントの部屋があったり、
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ボイスからポルケあたりのドイツ部屋などがあったり。パレルモの作品も。
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ポルケはなんかスパイダーマンの微妙な作品が展示されててやや残念。

ただ、60年代以降は作品に必要なスペースもデカくなってるので、
すでにこの部屋数ではフォローしきれていないような感じもした。

2階が現代の部屋だけど、
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今回のラインナップはサーレ、ロンゴ、G&G、
など80年代つまみ食いと、ドイツ・ケルン周辺に限った部屋など。
わざわざドイツから来てドイツ部屋を見せられるとなんとなく損な気が。
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アルバート・オーレンのこれはなかなか。

あとはマシューバーニーの微妙な小作や、
すでにいろんなトコで同じ様なインスタレーションを見て
割と飽きちゃったティスマンスのいつものやつなどが並ぶ。うーん。 

小泉明郎さんの展示ゾーンがあって、すげえなあ…て思った。
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作品もおもしろいし。
 

上階の企画展示は撮影不可なので入り口だけ。
まずTOKYO展。
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ユニクロが協賛企業になってるのか。
かなり詰め込んだ展示で疲れる。作品ラインナップはおもしろく
この中身だともっと広い空間が必要と思う。

それよりも個人的に超ヒットだったのだその隣の部屋でやってた
INVENTING ABSTRACTION1910-1925という展示! 
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渋い抽象画がメインで、ピカソの分析的キュビズムをスタートとして
画面内の色面形態がザクザク分裂しまくってる絵画ばっかり
ズラリと並んでいて思わず笑ってしまうほどのマニアックな内容。

この絞ったテーマのしつこさがすごく丁寧で企画展の意味を思い知る。
時代的には第一次世界大戦を挟んでいる時期だけど、
そういう時にエッジが効いてやたら分割線が多い抽象を描いてる画家達が
こんなにもいたんだという、別視点ての時代の証明になっているのも面白い。
別視点って例えば飛行機などの速度や空気を切るエネルギーとか、化学兵器の登場とか、
人が扱うスケール感の変化など決してそれらを直接テーマにしているわけではないのだろうけど、
個人の感覚レベルでリンクしちゃってるように見える。

個別の作家ではクプカやドローネーの他にもDavid bomberg、Vanessa Bell、
Ivan Klium、Georges Vantongertooなどグッときた。

あと、この時期のデュシャンの絵画はやはり出来が良い。
フィラデルフィアでは見れなかった回転マシーンもこっちで見れた。

展示は実験音楽や演劇の映像等も交えながら
レジェやピカビア、ロシアアバンギャルド、
デステイルと流れて行って抽象アニメーションあたりで締め。
いやあ参った。
同時期のピカソやマティスは最後まで抽象を選ばなかったし
だから最初のピカソ以外は展示の中には組み込まれていないけれど
そのパラレルな感じも脳においておかねば。 

2013年にまさに色面ザクザクで地味な抽象をやってる自分にとっては
なんというか勇気の湧く内容な反面、さあ今地味抽象やってどうすんべ、
というプレッシャーも同時に感じる。
図録もあります↓
 

 夜はDCに続き2度目の伊藤先生達と飲みアゲイン。
待ち合わせ場所までまた歩く。夜の中心部はモニタだらけで明るすぎ。
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黒いゴミ袋の山も懐かしい。

先生達は明日日本に帰国との事。
アメリカらしい肉をほおばりつつ、ここ数日の情報交換いろいろ。
あとは先生の2012年の活動が活発すぎて気になっていたので
作品の話をいろいろ聞きまくった。 

ニューヨーク2日目。メトロポリタン美術館へ。
NYは主要美術館の休館日が何件かズレているのでブランク日が出なくて助かる。 
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前回、MOMA以上に感動したのが実はメトロポリタン。
古今東西、古典から現代まで何もかも揃ってる超巨大美術館、
エジプトの神殿そのものまであるので、
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ぶ、文化略奪…?と驚いたもんだ。 
戦後の絵画コレクションも良いのが揃ってる。

こちらも6年前と比べると基本はそのままだけど
ちょこちょこと展示室の雰囲気が変わってるんだな。
なんとなく現代的な(ホワイトキューブに近い?)見せ方になってる気がする。

マティスの企画展が数部屋使って開催されていて、
これ以前わざわざコペンハーゲンまで見に行った企画の巡回!がーん。
何度でも見れるのは良いことだし、コペンハーゲンは空いててみやすかったし、
展示構成の差を勉強できるし…とポジティブシンキング。

ブラックの後期作品、この見た事無い絵がめちゃ気になった。 
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日本美術ゾーン、前回は改装中で見れなかった。
質高い。企画で鳥ばっかだった。俵屋宗達すげえ。

鳥ばっか古美術ばっかの中に、ビカビカのシカが。
これが噂に聞いていた名和晃平さんがコレクションされたってやつか。
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でもなんかこれ1つだけ現代美術なので、浮いていた。 

現代ゾーンはデカい顔がいっぱいあった。すげーアメリカっぽい。
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顔ばっか並んでると、如実に描き方の差が比較できるのでわかりやすいっっちゃわかりやすい。
実際は間にホックニー等も隠れてたり、向かいの壁は抽象だったりするが。

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テリー・ウィンタースとか。これは90年代ものだが最近の作風の方が好み。


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マークタンジーの牛の絵が良い。

奥のカプーアの作品で目眩がする。
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ウォーホルもう1つ。各パネルがけっこうガタガタで隙間があんのよね。

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ドガの踊り子彫刻群にもまた驚く。


古典はわりと流し見してもやっぱり丸一日かかった。
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フェルメールの最も不気味な作品もあり。

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ダヴィッドのソクラテスの死はダヴィッドの中では良いと思える作品。

 本当に凄まじい広さだし、2回目なので全体的にコメントは省略気味で…。 

NY3日目は自然史博物館へ。

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途中、消火栓から水がもの凄い勢いで道路に飛び出していたが、
いったい何なのだろう…。

これまた6年前の話。ここに閉館ギリギリに向かい間違った地下鉄に乗ってしまい
さらに時間が無くなったのでティラノサウルスの化石と宇宙柄のTシャツを買って
終わったという苦い思い出がある。 

おそらく誰でもびっくりするであろう剥製ジオラマの数々にまんまとヤラれる。
杉本博司さんのシリーズでも有名なあれこれだ。 
寄贈者の名前も書かれてる。
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何故かゴリラに両手を拡げるひと。

いやあこんなの並べられたら参っちゃうな。
デカいし、光の当て方なんかもま〜よくできてる。
そして背景画のクオリティが高い。
ドイツのミニチュアワンダーランドなどは背景が下手すぎて悲しくなるのだが… 。

そしてさらにこれを生きてるように撮る杉本さんの技術力が凄いという
きっと知ってる人は誰でも思うような感想。

ジオラマの数が多すぎて思いのほか時間を取られてしまったので
駆け足で見るハメになったけど、めっちゃおもしろい。
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民族のコーナーにはアイヌ文化の
紹介もあって思わず足が止まる。

ベルリンの自然史博物館と比べると、
ベルリンの方はより学術的という印象で、
こっちはビジュアルインパクトを大事にしてる印象。
まともに見たらここも丸一日必要だ…。


 セントラルパークを歩き、フリックコレクションへ。
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バーンズに続く邸宅系美術館。撮影不可。
バーンズ程のデカさではないけど、
やっぱデカいよ…家の中に庭あるしどうなってんだよ。

フェルメール3点、レンブラント等なにげに良作揃い。
中でもアングルの「ドーソンヴィル伯爵夫人の肖像」、
色っぽく描きすぎてて怖い。わざわざ後ろに鏡を設定して、
うなじから背中にかけての描写もしてしまうあたり
そうとうモデルに惚れ込んでる。 

次は歩いてグッゲンハイムへ。撮影不可。
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6年前は外壁の改装中だったので、白いグッゲンハイムを初めて見た。
ちょうど具体展の搬入中だったので、
一部のスペースで地味な展示構成をしてただけなんだけど、
その中の1つ、Zarinaの個展が思いのほか良い展示。
全然知らなかったし、
凄くシンプルなドローイングの作家。イメージの出所が不思議だし、
紙にポチポチ穴開けたり、抽象的な木版だったり、
なんか魅力的だ。
調べて見たらインドの女性作家で
もうかなりお婆ちゃんらしい。2011年のベネチアビエンナーレ参加もしてるんだな。


夜はベルリンのレジデンスで知り合ってお世話になったかずえさんと再会。
おいしい韓国料理を食べながら情報交換。
かずえさんはHodges Jim(ジム・ホッジズ?)の制作アシスタントもしていて、
トップレベルの作家との身近なやりとりの話が非常に興味深い。
もの凄く物腰が柔らかいらしい…
当り前だけどいろんなパターンのトップレベルがいるもんだ…

さらに安部さんとも合流、
オシャレなバーに連れて行ってもらう。
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安部さんの洞察力というか、世界を
どんな風に見ているかが話から伝わってくる感じは
ベルリンでお会いした時もヒシヒシと伝わって来たけれど、
やっぱりうーんと唸らされる。
今度ガゴシアンのグループ展にも作品が出展されるとか…ひええ。

がっつしNYで活動してる日本の作家さんの話をNYで聞ける有り難さ。
非常に気が引き締まる。

そして2人から、NYまで来たなら絶対にディア・ビーコンに行った方が良いとの
情報をいただく。ありがたやありがたや…! 
宿に帰って行き方の詳細や開館時間をみると、
おお明後日行けそうだ!!ほほほ〜ついにアメリカで電車に乗れる。 

4日目。まずはクイーンズのPS1へ。
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撮影不可。撮影できない美術館もけっこうあるなあ。
ここも以前来た時はまだ仮設っぽい場所もあったけど
かなり立派になってた。
もう同世代80年代生まれの作家の作品なども積極的に展示しており
作品の内容はピンキリとは言えやや凹んだけれど、
現在進行形な感じがしておもしろい。
Jeff Elrodという作家の絵画が気になった。

夕方からは昨日に続いてかずえさんと待ち合わせ、
ガイドしてもらうことに。
NEW MUSEUM初訪問。まわりの雰囲気からなかなか浮いてる存在感。
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展示室半分閉まっててちょっと拍子抜け残念。

Neue Gararieにウィーン分離派の良質コレクションがあるとのことで
寄ってみる。クリムトとシーレの良作を堪能。

さらにホイットニーの企画をサクッとのぞき、
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そこからすぐ近くの
マディソンアベニュー側のガゴシアンも初訪問。

さすがガゴシアンてな感じの巨匠並びで
良いポルケやアルバート・オーレン、
ブライス・マーデンなどに恵まれたのだけど、

一番ビックリしたのがジェフクーンズの新作ペインティング。
制作に3年くらいかけてるフォトリアリズム系のアレなんだけれど、
コラージュの元画像にデジタルノイズがチラチラと入っていて、
そのチラチラまで超絶な細かい描写で完全に描き切っている…。 

一体何人の描写職人が携わってるんだろう。 
同じ絵画でも自分からは遠い表現、それでも興味深い。
デジタル写真、CG、解像度という考え方が現れた後の絵画表現の
ひとつの可能性だなあ。
よろずのビジュアルイメージは、描いちゃえば絵画に取り込む事ができるし、
そこで絵画への落とし込みを突き詰めれば(それが難しいのだけど)
その都度絵画の不思議さを新鮮に感じられる。
不動の絵画のメディア特性。

夜になりチェルシーのギャラリーのいくつかがオープニング。
寒いけど凄い人の量だ。
Andrea RosenでAaron Bobrowの展示(微妙だった)からスタートし
Gladstone Galleryでボエッティなど。
ボエッティ故人だが今年はやたらプッシュされてんな。
やっぱビジュアルに落とすセンスガンガン感じる。
あとめっちゃ作品多い…。
あとモデルみたいなお客さんいっぱいいるわ。

ここでもビックリしたのがガゴシアン、
バスキア個展のオープニングだったのだけどもの凄い長蛇の列!!
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この寒い冬のギャラリーのオープニングに、こんなに人が並ぶのか…しかもバスキア!? 
結局バスキアは入れそうにないので他にも数件をまわったけど、
あんまりピンと来る展示なかったなあ。

ギャラリー巡りって短期の旅行でピンポイントに来ても時の運なので、
そこはやっぱり現地に住んで見られるのはうらやましい。
自分に合いそうなギャラリーを探す目的を強くもって
時を改めてがっつり調べてじっくり回った方が良い気もするなあ。
そんくらい腰を据えないとすぐ疲れちゃうし、
面白くない作品にヤラれるケースも多いし。

あと、前回来た時はとにかくギャラリーの多さにびびってあれもこれも回ったけど
今回はかずえさんがいるのでちゃんとしたギャラリーをポンポン回る事ができた。

NYのチェルシーと言っても、変なギャラリーの方が多いからな。
今度それについても書いておこう。

かずえさんの同居人のコンテンポラリージュエリーデザイナーの方と
音楽ライブをみて晩ご飯を食べて終了。
情報量が多かった…さすがに頭が疲れる。 

今日はオススメされたディア・ビーコンに向かう。
朝、ホステルのロビー情報によるとどうも今日は天気が悪いらしい。
あまり気にせずにグランドセントラル駅へ。
駅が立派!天井が星座でなんかロマンティックだし!
とテンションが上がりながらホントに間違えずに乗れるのかはいつも不安だ。

でもさすがにチケット買えるくらいのやりとりは英語でできるようになったので、
窓口で聞けばだいたい大丈夫。
Getaway Packageという往復チケットと美術館チケットがセットになってるのが
窓口で買えた。ホーム番号も聞いたしバッチリ。
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メトロノースに乗って約90分。
この電車はハドソン川沿いをずっと走ると聞き、
車窓からの田舎の風景を満喫しようと期待するも、
雪で真っ白だし遠くも見えん…ずーっと、 川しか見えん。これは残念!
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モヤに消える橋もキレイだけど、晴れてる風景がみたかったよなあ…。 

着いたビーコンは小さな駅。
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駅を出てすぐ、ディアビーコン行きの看板の示す方向が曖昧だけど、
道の数が少ないし10分ほど坂を登ればすぐ見えてくるので迷わなかった。
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奥の巨大な建物がディアビーコンだ。

入り口でチケット見せたら、
「ストームが来るので今日は14時で閉館です」だって笑
2時間しか鑑賞できねー!そして帰り大丈夫なのか!?
まあ不安になったところでどうしよもないので一回そのことは忘れてみる。

ここも撮影不可なのが残念。
ナビスコの工場を改造した美術館とのことで、
展示室に入った瞬間、「うわあ〜」て声が出てしまった。 

ミニマルの巨匠を中心にめちゃくちゃデカい作品がめちゃくちゃデカいスペースで
ゆったりと展示されていた。 セラのアホみたいにデカいのもここでした。
こんなスペース見た事ねえっす。

特にウォーホルの影ペインティングが数十枚並ぶ部屋、
ソルルウィットのウォールドローイングの部屋、
リヒターのミラー部屋、ロバートライマンの部屋、
河原温のデイトペインティングの部屋は、
絵画の事を考える上でも重要な部屋構成でひっくり返りそうになった。

それぞれがそれぞれの絵画の極北的表現なんだ。
極北なんだけれども感覚を震わせる豊かさが確かにある。
この豊かさをギリギリのラインで抽出できていることに感動するというか。

僕も、今度誰かがNYに美術鑑賞に行く時は、
こことフィラデルフィアをセットで巡ることをゴリ押ししよう。

その他チェンバレンやらイミ・クノーベルなど
とにかくすべての作家の展示スケールがデカくて、
作家としてこんな展示できるなんて至福だろうなあ、
でもこの空間成立させるとか相当辛そうだし予算とか一体どうなってんだ
など余計な事まで考えてしまう規模。

14時ギリギリまで鑑賞し、雪を浴びつつ駅へ。
電車は普通に動いていてNYにあっさり戻って来れた。良かった。

金曜の夕方はMOMAの無料解放タイムなので少し再訪する。
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こんな天気でもさすがに混んでる。

今日もギャラリーのオープニングがあるらしくまたかずえさんと待ち合わせ。
ベルリンでのかずえさんの異常なフットワークを思い出す。
しかしこれまたストームの影響でオープニング中止が連発。
ペインターのみほさんとも合流し、
チェルシーのイタリアンレストランで雪景色を眺めながら最後の夕食。

札幌の冬の降雪に比べるとストームってほどでもないのだけど、
NY的にはかなり多いようだ。
日本の豪雪地帯は異常なんだな。
あの雪で190万人都市が成立してる札幌はやはりミラクル…。

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ホステルからの光景。あーあ除雪車が入ってるわ。
明日帰るのに飛行機飛ぶんだろうか。 

朝。ストームは過ぎ去ったようで晴れている。
雪が積もっている。やはり除雪車なども出動している。

ハンパに暖かいので、雪がベシャベシャになってて歩くと靴が濡れる。
これは嫌だなあと思いながらチェルシーのギャラリー巡りを少し。
どうも雪の影響で開けてないギャラリーが多数っぽい。
ガゴシアンのバスキアは無事に拝めた。美術館展示レベルの作品数だったので、
そこそこ見応えがあった。

特別グッとくるペインティングには出会えなかったけど、
マシューマークスのダレンアーモンドの月の光の写真作品と、
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Luhring AugustineでRagnar Kjartansson、
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マルチスクリーンの映像作品が良かった。

最後にもう一度MOMAへ。INVENTING ABSTRACTIONを見おさめる。
心奪われたので重い図録をその場のテンションで購入。
きっと帰ってアマゾンで買った方が合理的なのだろうが、
そういうことじゃねえんだ。ここで背負って帰りてえのよ。

最後マティス部屋にもごあいさつをして空港へ。
夕暮れの中の遠くの摩天楼の姿…おおさらば刺激的なNY。
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次はいつ来れるのか。なんとか定期的に来たいなあ。
 
帰りのフライトはベルリンへ直通8時間。
たった8時間。そこそこ美味い機内食を食べて寝てたら着いた。
早い。早いし安いし…さすが「欧米」ってくくれる近さだ。
この感覚も体感してみたかったんだ。

こちらの世界地図では、当然ヨーロッパが真ん中にあって大西洋が分割されてないので、
まさに移動の距離感もそういう感覚。
こちらの世界地図では、日本は右の端っこにある。遠いジパングだ。

アメリカ西海岸からだと、日本は近いと思われてるんだろうかなあ。 

ちなみにこれが今回の移動スケール。
青枠で北海道と比較して見ました。赤点は訪問都市。
アメリカ北海道
ニューヨークが北見付近だとすれば、
フィラデルフィアは帯広付近、
ワシントンD.C.は函館付近 って感じになる。
ピッツバーグはけっこう離れてるな。
さすがにアメリカは大きいわ。 

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