やまもとのグレーゾーン

札幌の絵描き山本雄基のきまぐれ雑感と日常。

カテゴリ:海外美術鑑賞記 > 2012冬ストックホルム

ハンブルグに作品を届け、ストックホルムへ。
万全の態勢でハンブルグ空港へ向かったが、
ストックホルム行きのRYAN AIRの窓口がない。

近くの職員お兄さんに聞いてみると、
「…空港が違うね、ここじゃない。もう1つの空港だね。」
なにー!!!! もう1つ空港があるのか!?

お兄さんは間に合うかどうかいろいろ調べてくれたけど
「ここから1時間以上かかるから、ちょっとキビシいかもな。
君はハンブルグの空港は初めて使うのかい?初めての人は、よく間違えるんだ。
これで覚えたね。」って…なぜかこういう時はスラスラ英語が聞き取れる気がする。

ホントだチケットよく見たら「ハンブルグ空港」じゃなくて、
「ハンブルグ・リューベック空港」って書いてる。わかりづらいっつーの!!
走って引き返してみきこさんに泣きの電話をいれて何か間に合う方法を
調べてもらうももうインポッシブルとのことで、さらばストックホルム…

いや、さらばじゃねえ。余計行きたい。
ので一旦ギャラリーに戻って、数日後に再予約。
ユースホステルにも日付変更の電話。
ぐへえええ お金が勿体ない…
 
海外滞在に慣れて来て油断している証拠だ。
いい引き締めにはなった。

再挑戦。ハンブルグ中央駅からバスで1時間、
今度はばっちりリューベック空港へ。
IMG_2685
すげー田舎っぽいとこにポツンと。
こんなに小さい空港は初めてだ…

IMG_2686
中もテントみたいだ。さすが格安航空会社のハブ空港。
FLY CHEAPERって堂々と書いてあるから潔い。

_MG_0737
乗る。1日1本のストックホルム行き。
easy jetと同じように自由席。
そして1時間遅れての出発…ぐぬぬこれじゃどの美術館にも間に合わねえ。


_MG_0741
約1時間半のフライトで、着いたのは夕方4時。
さすがさらに北、すでに真夜中のように暗いし雪が積もってる。

やや風邪気味で右鼻が詰まっていたので、
着陸前の高度が下がってる時に右耳に恐怖の激痛が。
あれホント死ぬほどつらい。

以前韓国の帰りの飛行機で
これなら死んだ方がマシだとか、早く気絶しろ自分!と思うくらい痛かったが、
今回もキツかったなあ 降りても水が溜まったような感覚…
ストックホルムは、いろいろ攻めてきますねえ。

北欧に似合わないお前が行くな!って
誰かにわら人形でも打たれてるのかもしれない。
 
到着したスカビスタ空港も、ストックホルムから90km離れた遠い空港だ。
観光案内所のおっさんに、ホエアアーユーフロム?チャイナ?と聞かれたので
日本からです!と答えると、
今日のこの空港初日本人だよコンニーチハ!といわれた。

さらにバスで1時間半揺られる。 

IMG_2691
ついた。キレイで近代的な都市だ。電飾はちょっと地方っぽい!

IMG_2693
駅から歩いてメイン観光地の旧市街に行ける。
そこらを散歩。 

_MG_0752
小道に坂に店の看板、おおお雰囲気がある。

_MG_0754
ふらふら歩いてたら人だかり発見。
小窓からサンタのおばちゃんが。歌を歌ってた。

IMG_2698
旧市街を抜けてちょっと歩けばすぐ船着き場。

IMG_2705
おっきいツリーも。奥の白い船はレストランだった。シャレとる。

_MG_0755

_MG_0756
豪華なあれこれを横ぎり、

_MG_0757
クレーンでの雪落としを眺めつつ、

_MG_0759

_MG_0760

_MG_0761
市街地に戻るとやっぱり華やか。
先に美術館を封じられると、落ち着いて街を歩けるので
たまには良い。
なんか規模もちょうど良くて、札幌っぽい。

整備されててキレイだし、
久々にマトモな都会を見た気分だ。
こういう街と改めて比較するとベルリンはやっぱ異質だ。

_MG_0765

_MG_0767


_MG_0766
けっこう寒いのに、外で飲んでる人達…そんなに外が好きか。

_MG_0769
H&M。発祥地。

街をぐるっと一周して、値段が一緒のマックで夕飯を食べ、
近くのユースホステルに到着して1日目終わり。
宿も1泊20ユーロだがアットホームでキレイ。
印象いい街だな!

Peter Bjorn&Johnとか、The Radio deptとかがストックホルムのミュージシャンなので
現地で歩きながら聞いてみるとしっくりくる気がして
ややテンションが上がる。。。
エセ観光者っぽい。
十勝で松山千春を聞く感じだ。

でも一番アガったのはやっぱりアバだよ。

2日目はストックホルム近代美術館Modena Museetへ。
ホステルが街の中心で、そこから歩ける距離だけども
試しに2駅だけ地下鉄に乗ってみる。
_MG_0770
改札があって、きれいだ。

_MG_0772
長いエスカレーターでホームまで下ると、こんな感じ!
洞窟風な壁天井に、柄が塗られている。
センスがいいんだかよくわからんがインパクトはある。
田舎のアミューズメントパークっぽい。

_MG_0777
かわいい王冠のついた橋を渡り、シュップスヘルメン島へ。
少し坂を上ると見えてくるModena Museetの入り口。
ニキの彫刻が雪に埋もれていた。

_MG_0783

_MG_0784

一番の目的はこの美術館のコレクション、
ラウシェンバーグの「モノグラム」という有名作品を見る事。
_MG_0888
うおおホントにあった。ガラスに入れられとる。
とりあえず激写する。

_MG_0802
ペイントを施された顔はなかなかキュート!

_MG_0805

_MG_0901

_MG_0898
ガラスが非常に邪魔なのだ。その分近づけるので無駄に上から撮ってみる。
この毛がワシャワシャな山羊ってのがいいよな。

_MG_0803
糞のように、薄汚いテニスボールが配置されていた。

_MG_0799

_MG_0800
タイヤと台座の関係がガチッと垂直にキメてるのかと思いきや微妙にズレている。
この作品て搬入時にけっこう細かく分解可能で、
タイヤも実は外せちゃうということを知ったので
最後に設置した人がちょっとアバウトだったのではないかと怪しむ。

_MG_0933

_MG_0934
台座となる絵画面もカッコ良い。床から浮かせてる。

_MG_0937

うーん、やっぱすばらしい!!!
これは絵画か?、みたいに取り上げられることもあるこの作品、
僕はあんまそういうのは気にならず。「コンバインペインティング」っつってるし、
絵画っぽさも感じるしヤギ入れた全体のバランスが造形として魅力的なので。
後からいろんなフォローができるような幅の広さを持たせちゃった、
的な感じがある。

後からここをオススメしてくれた張本人の伊藤先生に教えてもらったこの動画をみると、
http://www.youtube.com/watch?v=PiCnCN2NV-E

作家本人は、古道具屋でみつけた汚いヤギの剥製がかわいそうで、
作品にして生き返させたかったとか、
古道具屋とのやりとり思い出話、
最初は壁にかけたりしたがうまくいかなかったみたいな
作品化するにあたっての試行錯誤のことを
たぶん言っている。(間違ってたらごめんなさい)

思いのほか、動機やプロセスがシンプルなのねえ…!
後半の解説が、一般的なコンセプトとしてよく語られる部分だ。

_MG_0946
背後には、トゥオンブリとジョーンズの作品。
どこの美術館でも仲良く展示されてるよね…。

_MG_0895

_MG_0896

_MG_0897

ちなみにジョーンズさんの絵画も高レベルな逸品。
思いのほか1枚の中にいろんな描写テクニックが使われていた。

こんな感じで、コレクションは特別大きな規模ではないのだけど
ずいぶん質の高い有名所を一通り揃えていた。

_MG_0795
真ん中と右端は、I loveなムンク。
ロシアンアバンギャルドも充実していたし、
ポップ、ミニマル、コンセプチャルも部屋毎に纏まってました。

_MG_0832
マティスの大きな切り絵もある。

_MG_0823

_MG_0827
80年代以降の部屋もざくっとこんな風。リヒターの良い抽象、
シンディシャーマンとトーマスルフが並ぶなど。車の作品はローズマリートロッケル。


_MG_0830
思いがけずこんな最近の絵画も拝めたり。
Tauba Auerbach。ほぼ同世代の絵描き。
キャンバス目がわかる程度のうす塗り描写で
光を意識したシワシワサーフェイスの細密描写。よかった。

あいだあいだにスウェーデンの地元作家の現代美術作品が挟まっていて
基本亜流っぽさ満載でちょっと微妙なのだけど、
_MG_0810
このDick Bengtssonって絵描きだけは少し気になった。
いるにはいるんだな。デンマークでも地元作家ゾーンのヒットはそんな感じだったなあ。



その他企画ではまずティルマンス。
_MG_0848
実は大きな展示は初めて見た。重みは無いがカッコ良いですな。

_MG_0851
展示細部をみるとやっぱり透明テープとか相当気を遣って貼ってる。
ピンで留めてるラフな方法でも、かなり繊細に取り付けてる。
こういうのが重要だよな。
展示以上に驚いたのが、出口にどっさり図録が置いてあってテイクフリーだったこと。

あとティルさん個別作品で言うと、常設の方にもあった1枚、2001年くらいのこれが
むしろおもしろかった。
_MG_0786
デジカメ発展途上期のせいだと思うけど、画面にノイズがけっこう残ってて、
それが2000年代前半の質感としてちょっとレトロっぽく見えるのだった。


地下の企画ではコレクションを中心としたピカソvsデュシャン展。
それぞれが別ブースで纏まってる展示。
_MG_0875

_MG_0874

デュシャン側。
_MG_0852
回転盤。かっこよい。

有名所のレディメイドは所狭しとひととおり並んでる。
すんごい淡白なかっこよさ。
でも便器の台座はレンガ仕様でややダサい。

そして大ガラスのレプリカがあって驚き。
_MG_0858

_MG_0853

裏側。
_MG_0856

_MG_0855
サインも入ってる。

しかし何よりまず、…木枠!?けっこう野暮ったいデザインだし。
クールなイメージがなんとなく肩すかしくらうこの木枠は北欧流なのか…
便器のレンガ台座といい、この蛇足感にムズムズする。

裏側も黒い単色でなんかペラッとしており思いのほか拍子抜け。
これはレプリカのせいなのか?


_MG_0857
トランクの箱とかグリーンボックスは堂々としておりました。
これだけまとまってデュシャン見られるのは珍しいのでは。
マルチプルばっかで一点ものの絵画とかは無いので、かなりドライですが。


ピカソ側には小作中心。
うまく撮れなかったがトーチカみたいに光でドローイングした牛の映像とかあって
ちょっとおもろい。
ピカソは油断すると駄作ばっか見るハメになる。ここでも油彩はけっこう微妙。
コラージュとかいくつかのドローイング、制作記録写真などがなかなかおもしろい。
_MG_0862

_MG_0863

_MG_0868

という感じで、
全体の規模は大きすぎずちょうど良く、企画の質も高いので満足できる
美術館だった。強いて言えば、ローカル色が弱い。

近くにある王立美術館で古典も覗く。
やはりレンブラントとリューベンスは厚い。
レンブラントの大作はかなり良い絵だった。
_MG_0970

_MG_0973


その他、シャルダンが5枚くらいまとまってて良かった。
まともに初めてみた。小さいし、色がやや茶色グレーにくすんでて素朴な上品さがある。
画面作りもフェルメールに通じる様な構築。とてもいいな。
_MG_0994

_MG_0983
ブーシェの割と有名なやつも。
裸体の乳頭がどうも赤すぎるし、
あとさりげなく醜い要素を絵の中に混ぜ込んでるので
ロココの中でブーシェだけはおもしろく見てます。

やっぱり古典美術も同じように、ローカル色が弱い。

時間無くて飛ばしてしまったがモダンなデザイン展示室もあって
きっと美術よりこっちが北欧っぽさが強く出てるんだろうな。
_MG_0963


日が暮れて、宿へ歩いて帰る途中にスケートリンク。
IMG_2770

街の中心にあるアートセンターも覗いてみる。
_MG_1022

_MG_1020

_MG_1021

エントランス、本屋、映画館、おっさんたちのチェス場、以外はすでに閉まってた。残念!!

IMG_2787
地下街なんかも広くてキレイなのでホント札幌みたい。
視察完了。もちろん夕食はマクドナルドだ。 

このページのトップヘ