やまもとのグレーゾーン

札幌の絵描き山本雄基のきまぐれ雑感と日常。

カテゴリ:海外美術鑑賞記 > 2012春アートバーゼル

※先に言っておくと、メインのアートバーゼルとバイエラー財団美術館内は撮影禁止だったので画像無しです。Art Basel43やFondation Bayelerでググったら雰囲気は伝わります。


さて、結局寝付けずに30分くらいしか睡眠をとらず朝の4時起き。
ボワーッとしながらシューネフェルト空港へ向かう。

お、アイウェイウェイの何かの広告がドーンと。
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ドキュメンタリー映画チラシか。美術映画の宣伝を堂々と。

空港のベンチで堂々と眠る人々。
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easy jetというヨーロッパではメジャーらしい格安航空を初使用。
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バスのように自由席。
安い時は国をまたいでも往復1万円以内とかで乗れるらしい。

少しは寝れるかと思いきや
バーゼル空港までたった1時間で着いてしまった。
興奮してるのかやはり寝付けず。
札幌-東京間とさほど変わらないのか。近いな…

朦朧としながら群衆に付いて行き、
見よう見まねでバスのチケットを購入、ひとまずバーゼル駅前まで辿り着く。
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あっ、駅の時計がスイス魂!!
なんか小さい街っぽいけどすでにリッチ感が漂う。
 
さてまずは一番早く朝9時開館のバイエラー財団美術館のジェフクーンズに行くことに
していたのだけど、駅から電車の乗り方が全くわからない…
そういえば下調べをほとんどしていないんだもの。
おまけに国が変わったからか、wifiの機械が使えなくなった。
情報検索もできない…。
30分程狼狽したのち、トラムで行きたいところは殆ど行けそうなムードを感じ取る。
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Art Baselのノボリもトラム乗り場にパタパタ羽ばたいてるから大丈夫だろう。
乗り場の路線図を写真に撮って、印刷してきたバーゼルの地図と見比べればいいんだ。

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おお〜ライン川!!ライン川を渡った!
しかし眠すぎて写真がいつにもまして微妙。

20分トラムに乗れば、バイエラー美術館前でトラムは止まった。よしよし。
いきなりケリーの彫刻の横に、デカいフラワー彫刻が!
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テンション上がるわー入館料はやや高かったけど!

しかしなんてリッチ臭のする美術館だ…
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裏には牛がのんびりしててのどかな光景も。

ジェフクーンズ。
掃除機の作品から始まり、陶器、木彫、ソフビの代表的な彫刻群、
ローゼンクイスト+フォトリアリズム風な巨大絵画群、
ツルピカのステンレス彫刻群まで。
こりゃあすげえや。

一度だけ森美術館で木彫をひとつ見た事あったけど、
一気に並んでるのを見るとキッチュすぎてエグいレベル。
でも、エグさが一周して謎のハイカルチャーオーラを纏ってるようにも見えてくる。
ブルジョワ観客とバカ顔したおもちゃモチーフのコントラストが際立ってて面白い。
美術「製品」な仕上がりは徹底されているなあ。木彫は微妙だけど。
バルーンの彫刻は想像通りものすごいギラギラしてて、
どこか変態イズムを感じ、圧倒的な存在感だった。

安っぽいオモチャや日用品が美術の展示に殿堂入りする皮肉は
わかりやすくデュシャンイズム、
加えて、巨大化、バルーン→ステンレスなどに見られる物質変換、
取り上げるモチーフのチョイス、
この辺の重要要素にとても性格の悪さを感じたのだった。

デミアンハースト、村上隆、と共に後期資本主義を象徴する3大巨匠って感じだが、
それぞれ立ち位置が違っておもろいな。
ジェフのこの感じ、思いのほか好きだ。
彼らのようなハデな作家はもう今後出てこないんだろうなあ。

意外に絵画が面白くて、(Jeff Koons Paintingでググってください)
完全に工房制作なんだけど、
イメージ作りはフォトショなんかで仕上げてるようだが、
とにかくモチーフのチョイスがバカっぽくて
ポップアートのそれとは全く違う。
一見しょうもない子供のダサい安っぽいおもちゃみたいなものを、
馬鹿でかく、そして絵として構成して、
細かく色面分割されててとてもキレイに平塗りしてるのな。
80年代ハイパーリアリズムとも似てるようで違う。

絵画まで「製品」感がプンプン漂ってるのがちょっと新鮮。
そしてこのカラッとしたポップカラーをなぜか油彩で描いてるっていう…。
こういう人達は、絵画って言う形式の利用の仕方が上手いなあ、と思う。
絵描きのアプローチではないが、絵画のことはとても詳しいというか。

そんなジェフ絵画を見ていると、見覚えのある日本人の方が…小山さん!
そりゃここはバーゼルだけれども、こんなところで出会うとは。
一瞬挨拶を交わしたあと、
美人スタッフさんとともに凄いスピードで鑑賞していた。

いやあジェフ恐るべし。
このドキュメントを合わせて見るとさらにグッと来る。
英語はまあ1割しかわからないが…それでもおもしろい。
こういうので、聞き取り練習。
音楽のチョイスも良いな。
http://www.youtube.com/watch?v=-otjIj2Ql3M


ジェフクーンズ以外にもコレクション常設があって、
並んでるすべての作品の質がめちゃ高い。
バイエラーさんは相当な目利きなのか。
モンドリアン、カンディンスキー、クレー、カルダー、
ピカソにモネにジャコメッティにロスコにニューマン…などなど。

Philippe Parrenoという映像作家の作品展もやってて、
それもおもしろかった。

2時間近く見てすでに眠さの限界、ソファーで30分気絶する。

バイエラーで少し眠ってしまった後、アートフェア方面へ戻って昼食。
噂には聞いていたが、困った事に物価がベルリンの3、4倍! 
ドナーケバブー、ベルリンなら250円くらいなのに、
バーゼルだと800円近くする…!厳しいなあ
でもそれが一番安くてラクなので しゃあない。
腹ごしらえして、今度はSCOPEを見る。
Art Basel以外にも、同時期に幾つかの
若手ギャラリー系のアートフェアが開催されていて、
その中の1つ。
ザーッと撮った写真をいくつか載せますが、
前半はそれなりにパシャパシャやってても後半はバテタので偏りが…
そのため良い悪いのピックアップできてません…
雰囲気だけでも。
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ん?この抽象、ニューヨークで見た覚えが。

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おもしろいのは、こういう巨匠の普段お目にかかれないような
スーパーラフな小さいスケッチまであったりすること。
このウェッセルマンはまだマシな方で、
こんなヘボいのまで見せていいんだろうか…というのまであった。
巨匠になると、ゴミみたいなスケッチも摂取されちゃうのか。

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あ、ここはカイカイキキギャラリー。

やたらギャラリー数があるので、
睡眠不足と疲労でどんどん鑑賞力が落ちる。

次はVOLTAへむかう。
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 途中コンテナが大量に積まれててカッコ良い

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個人的にはSCOPEよりVOLTAの方が引っかかる作品多め、
あとギャラリー毎のパンフレットを挟めるバインダーをくれたり、
会場が少し離れているので、他のアートフェア会場への送迎バスを出していたり
細かい企画側の配慮が丁寧な感じだ。
体力の限界でフラフラだけど、送迎バスがあるもんだから、
ここまできたらもう一個行ってしまえとLISTEに向かう。
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このビル全部会場!うげえもう倒れそう…
LISTEは会場構成がダイナミックだったな。

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しかし、3つ通して見ると
おもしろいギャラリーもちょこちょこあったけど、
全体の空気はなんとなくシャキッとしてない感。
普通に弁当食ってるギャラリーもあったし笑

そして微妙な作品の方がだいぶ多いわけで、
そうなるととにかくものすごく疲れる。

ああ…このなんというか「周辺」の大多数感、
とにかく作品作ってる人も作品売ってるギャラリーも
めちゃくちゃ大勢いて、
自分も続けていけばこの雑多な中には
もしかしたら飛び込んで行けるかもしれないが、
その後この膨大な数のハンパな雑多な中に埋もれたまま抜け出せず萎んでいくのは、
うんんんぬぬ…
とかなんとか考え始めるとだんだん暗い気持ちになってきて、
 会場を出る頃にはうつむいちゃってんの笑。
若手を一気に見すぎるのは、健康的じゃないな!!

また朦朧としてフラフラ歩く。
バーゼル中心は、何か作ってるようだ、デカイ工事。
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でその隣でやってるのが、Art Basel!!
明日に取っておこうと思ってたが、
この鬱々とした気持ちのまま今日を終えたくないのと、
夕方5時以降はチケットが安くなるので、
下見程度に覗いて行く事にした。

さすがに、スケールのケタが違う。
通路がカーペット状でフカフカしてるところから違う!!

 そしてArt BaselのiPhoneアプリがあり事前に
入れておいたんだけど、これが凄い便利。
どのギャラリーがどこにあってどの作家を出してるのかを検索できる。
作家名でも出来るので、見たい作家から優先して探せるという、
なんという優れたガイドだ。 

というわけで、速攻でクリストファーウール検索。
ついにあの擦ってるデカい抽象作品を生で拝見することができた。
これは感動… !
スプレー吹いて擦って、どうして良い絵画に成ってるのか。
ざっくりしてるのに絵画の良さの謎を浮き彫りにしたような すばらしい作品だ。
ああー絵画はこれだよー

他のギャラリーにも別のウール作品があった。
シルクスクリーン全開の作品はあまりグッとこなかったが、
点々を打ってる作品等もけっこう良かったなあ。

その他ザーっと会場を確認し、一日目終了。これは明日が楽しみだ。
…いやまだ終了してなかった。国境を超えて宿に行かなければ。 

電車で行けるはずだったのに乗り方がわからんので、
とりあえずトラムで終点の国境前まで行く。レラハって書いてる。
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 この高速道路の出口みたいなのが国境?
なんか、人も車も普通に行き来してる… ので、
歩いて超えてみたら、何も言われなかった笑
初、国境徒歩越え!!

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あるいて10分で宿に着いた。
何とかなって良かった…

バーゼル2日目。たっぷり寝すぎた。
まず今日の宿は少し歩いた別の宿なのでチェックインし直し。
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すげー適当な中国人の家族経営宿…
安いだけあって、ホントに適当!wifi完備って書いてあったのに
全く使えないし笑
いやでも一泊くらい何も問題無し。
レラハ便利です。 

ここはドイツなので物価が安い。途中昼飯用のパンを購入し、
アートバーゼルに向かう。 
2日とも晴れて良かった。
原チャのおっさん。
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チケット一日通し券は約4000円。高い。でもその価値あり。
撮影禁止なので入場時にカメラ検査があり、クロックに荷物預けなきゃならんのだけど、
いざ会場に入ってみると、みんな普通にiPhoneで写真とってるし…どういうこっちゃ。
僕はとてもマジメなのでそんなことしないし、故にここにアップできる写真もございません!

超有名ギャラリーは、バンバン巨匠を展示。
現存ビッグネームの作品はほぼ見る事ができた。
テリー・ウィンタースの近作、マジでヤバいっす。
表面はボコボコ塗りっ放しで荒く新しい感じはしないのだけど、
不思議なバランスの抽象形態との掛け合わせがおもしろい。
Matthew Marks Galleryのサイトで見れます。
このギャラリーは僕のツボどころばっか展示してて、
テリーの他にも、ブライス・マーデンの大理石ペインティングが良い。
フラット表面のある不定形大理石に絵具で線引いてるだけなんだけど…。

昨日も見たジェフクーンズの絵画、
こっちでは、色面分割してない境界線をボカしてよりフォトリアリズムっぽく
描いてる作品が展示されてた。地味に塗りのアプローチ変えてんだね。

村上隆氏、デカい3つのギャラリーで全部新作展示していたが、
いづれも目立つ良い場所に飾られており、他の巨匠と並んでいても、
あれだけ作り込みを徹底したペインティングは無い。
やはり強烈なインパクト。

一方で昨日も見たウールの作品なんかはスカッとしていながら、
村上さんの作品と同等かそれ以上の絵画の力を持って見えることもあり、
作り込みがすべてじゃない絵画の深みというか難しさを感じる。

作家を挙げればキリが無いのだけど、
とにかく一番多いのはやっぱり絵画なので、
絵描きとしてはヨダレもの。しかも抽象が多い気がした。
ドイツ系の渋くてストイックな抽象作家なども初見できて興味深い。

具象で目についたのはアレックス・カッツがやたらいろんなとこあったなあ。

近代の作家の作品を扱ってるところもあって、
キリコの自画像だけ10枚くらい並んでるブースとか、
異彩を放ってて良かった。
美術館に収蔵されず、
ギャラリーが持ってる近代作品ってのもけっこうあるものなんだな。

ここでもやっぱり普段見られないような巨匠のヘボい小っさい作品がちょこちょこ並んでて、
いやあ、恐ろしいもんだ。
例えば車のスクラップ彫刻で有名、最近亡くなったチェンバレンの作品も
いろんなところで並んでたけど、手のひらサイズのスクラップ彫刻があったり笑、
ピータードイグのサムホールなんかも、
こじゃれた学生が描いたようななかなかヒドいものだった。

このような名のある作家達の多くは、とにかく大小ピンキリ、
しっかりしたものから片手間でホイホイやっちゃったものまで、
作品をものすごく作ってるんだ、おそらく。

アートバーゼルには、Art Unlimitedというインスタレーション専門の巨大ブースもある。
ものすごいデカいフランツ・ヴェストのピンク色の彫刻があったり、
ダミアン・オルテガのパーツ吊るしたインスタレーションなどいろいろ。
でかい空間の割に地味なのが多かったけど、会場のスケールの新鮮さもあり
おもしろく感じる。
映像作品もあったけど時間が無くて全部は確認できず。

いやしかしやはり膨大な数、
結局閉館時間まで7時間かけて、全部見て回ったけれど、
見落としが必ずあるだろうなあ。
昨日と作品を若干入れ替えてるギャラリーもあった。

ごたごた多くの人が行ったり来たりしていて、
じっと一点の作品と向き合えるような環境ではない。
各ギャラリー、もちろん最大限作品がよく見える展示をしているけれど、
美術館のような崇高な演出とはずいぶんと違った、
即売会なのだなあと実感。
ちなみにどの作品がいくらで売れてるのかはわからない。
赤マルつけてるギャラリーもあれば、
全くつけてないギャラリーもあるみたい。

現実的なマネー雰囲気の中、
ぐっと存在感のある作品の強さ。
作品の強さは、そのものだ。
どんな場所でも強いもんは強い。


僕のような地方に住んでて鑑賞貧乏!本物見たくて餓えている!
みたいな立場の人には、てっとり早いお得な鑑賞場。

逆に、もうウンザリするくらい作品見てる人は、
わざわざ見に来なくてもいいのかもしれないなあ。
コレクターは別だと思うけど…もう社交場だもんこれ。

明らかに美大生かあるいは卒業して必死に食いつないでるプアーアーティストと、
明らかにお金持ち風格をだしつつラフな格好のオッサン、
みたいな客層のギャップが不思議だ。

かずえさんもこの日別ルートで見に来てた。
友人宅がバーゼルにあるらしく、移動がラクそうでうらやましい。
閉館後に入り口で待ち合わせ、バーでヘトヘトになりながら感想会。
景色の良いバー。
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つーかかずえさんとどっかイベント行くと、
必ず誰か知合いに会って、オ〜!とハグ挨拶している笑
世界中に友達がいるのだろうか!?
帰りがてらアートバーゼル入り口でも、何やら気取った青年と沢山話をしてた。
後から聞けば、彼はけっこうやり手の写真家でコレクターがついているらしく、
これからブルジョワ界のパーティに行くと言って去って行った。


僕はまた国境をひょいと超えて、レラハの適当宿に戻る。
明日はまた朝一の飛行機で戻る。
時間が余れば周辺の美術館も行きたかったけど、今回は無理。

朝5時半起き。
さてチェックアウトの手続きと思ったら、
フロント誰もいない… 
昨日、早朝にチェックアウトできるか聞いたら、
大丈夫って言ってたのに!
係の人への内線とかも無いので困った、
ノロノロしてると飛行機逃すので、
もう代金払ってるし、朝出発と言ってあるし、
鍵を部屋に置いて出て来てしまった…まあ大丈夫だろう。

あとは問題なく、飛行機の手続き完了。
居るだけでお金がガンガン吸い取られる恐ろしいスイスから撤退!!
子供の頃って、スイスはハイジのイメージや、中立国!的刷り込みで
謎の憧れがあったりするが、
金をたくさん取る国だと実感しました笑 
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ものすごく遠くにアルプス山脈も見えた。
いやしかし、バーゼルホント小さい街で、
でも街並みがとてもヨーロッパらしい
キレイなとこだった。

なんでこんなとこにデーンとアートフェアが?アート植民地的発想か?
と思って後で調べたら、
小さいとはいえ、スイスでは主要都市の1つで、
ライン川があって古くから物流の街として栄えてて、
ドイツフランスと隣接してる場所というのもあり、
文化的な街なんだとか。

今回は全然街を回る余裕がなかったけど、
たくさん美術館もあるようで、かつデカい銀行の本部もあったり、
なるほどもともとそういう基盤のある場所なわけね…。

ベルリンに戻って、こうガサガサした雰囲気に落ち着いて、
駅のアジアフード屋で焼きそばを食う。3ユーロ!
この感じ、やっぱいいなあ。

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