やまもとのグレーゾーン

札幌の絵描き山本雄基のきまぐれ雑感と日常。

カテゴリ:海外美術鑑賞記 > 2017.9 欧州

その3

ミュンヘン
いやあ、これは来たタイミングが良かった。今見たい絵画が驚くほどまとめて見ることができたので、絵描きとしてはドクメンタよりも直接的な勉強になった。

ハウスデアクンスト、展示は渋めだったがインストール中のサラジーが細かい映像も使ってたりで良さげ。
展示とは関係なくショップで売ってたケネスノーランドの画集がめちゃ良いので購入。ノーランド、あんま見たことない70年代以降の作品の方がよく見る初期よりずーっといいのね。どっかでステイニング系のグリッド作品を見たときあたりから怪しんではいたけれど、さらに額のニッチな使い方とか、シェイプトキャンバスの豊かな解釈に到達していて、ただのポストカラーフィールド画家ではない。

初訪問のレンバッハハウスは最高!!青騎士派の色彩とタッチは大好きです。ブリュッケよりブルーライダーさ。絵具によるイメージがモコモコしてる感じになんとも言えない可愛さがある。マルクとマッケの部屋や、ミュンターとヤウレンスキーと初期カンディンスキーのコンボ。
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これはヨダレすぎるわ。

加えて現代エリアがまた贅沢な顔ぶれで、
例えばCharline von Heyl。
まとめて6枚も見たのは初めてなので構造の一貫性がよくわかった。
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細部
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物質的な厚みはなく、キャンバスの肌理が埋まってない程度にはガサガサしてる。なんでかって、どういう順に色を重ねたのか、どう塗ったか、描き始めから完成までのプロセスを意識的にかなり目で追えるようにわざと作ってあるからだと思う。目で追えるくらいの手数なのに複雑で、加えてイメージの出所は相変わらず全く読めず、その辺がとてもおもしろい。プロセスの提示の豊かさはドクメンタで見たホイットニーもそうなのだけど、あっちは色面のバランスの取り方など視覚的に納得ができるぶん、ヘイルの方がよりわけがわからないのだ。
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素晴らしい。キャンバスに描く前までのプロセスを想像するのもまた一興。描き始める時点ですでにフォトショなどで完璧に手順を決めてかかっているのかもしれない。

Glosseも同じく、プロセスの複雑化をおもむろに見せていたり、それが大きな画面サイズの中で色彩の混ざり方や拡張する空間と絡み合って、インスタレーションの時とは違った、極めて絵画的なイリュージョンが発生している。そして実に装飾的な色彩感覚。
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スプレーって相当うまく使わないと痕跡が凡庸になってすぐつまらなくなるのだが、ここまでできるんだねえ。僕も最近多用しているメタリック、パールカラーを巧みに使っていたので参考になった。
 

ケルンでも見たGuyton...は痕跡を追う鑑賞作業がほぼ無いのでまあ絵肌としてはつまらないのだが(けなす意味ではなく)、その軽さがカッコ良い。そのつまらなさはおそらくら当時のウォーホルや当時のリヒターの態度に直系的につながるんだと思う。

ブランドホルストはKERSTIN BRATSCH(撮影禁止)。グラデーションのブラシストロークは発明だな。あれ見ちゃうと、真似したくなるもん。それにしてもインスタレーションの組み合わせが大胆で読めない。絵画の展示の仕方も、大きな紙がベースのために、木枠キャンバスのようにそのまま壁にかけるような仕組みにはさせてくれない。そういう、見づらいひっかかりを多数掛け合わせて視覚表現にそのまま取り込んでしまうところがおもしろい。でも僕にとってはちょっと反骨精神が多すぎる印象。やや疲れてくる。

しかしこれら優れた00〜10年代の絵画に慣れてくると、クオリティの話とはまた別にもはや50年前のジョーンズやラウシェンバーグは以前にも増して重さ遅さの絵画として見えてくるし、ウォーホルでさえ真っ当な絵画としてハッキリと古典と認識できてくる。そのくらい、とり挙げた絵画は良い意味での軽さ速さが際立っていて同時代の感覚として納得できるんだよなあ。もちろん、それが全てだとも思わないけれど。
さらには立派な美術館に収まってる時点でこれらも過去のものになっていく。さて自分の作品はどうだ?

ピナコテークデアモデルネでもいつもヒットなローズマリートロッケルや
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こちらでもヤウレンスキー
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など。
他にもたくさんいいのがあって書ききれない。
 

ドイツからイタリアに電車移動中、風景眺めてたら日本人のナイスミドルガチ鉄オタ20年選手に遭遇、アルプスの鉄道の魅力をドバドバ語られて、オーストリアで降りていかれた。
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 アルプスを鉄道で移動するのは2回目、ずっと景色みれられる。
 

◯ベニス
アルセナーレ。序盤のMarcos Avila Foreroの映像、
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複数人が川に入って水だけを打楽器にしてリズムを合わせていく作品が、共同作業のプロセスと創造性の美しさを明快に提示していて素晴らし。しかしあれ、その後の流れがなんとなく面白くない。。。なんだこの展示構成は。どうしたベニス!?と不安になる。大好きなオロツコまで若干スベってる印象。
いやCharles Atlas、Anri Sala、Alicja Kwade、日本からは松谷武判さん、THE PLAYなど、単体で見ると良い作品ももちろんあるのだけどなんでだろ。
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サラの作品、壁に転写された模様と一箇所で回り続けてる転写機。
ビジュアルが美しく、それだけで終わらせてくれない意味深な関係、背景もわからないのに面白い。

屋外の菅さん作品は、ベニスでもあまりに溶け込んでいた。
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客の悪ふざけだろうadidasのスニーカーが作品ゾーンに浮かんでいたが、それすら取り込んでいたのでさすがだった笑
 

ジャルディーニの方はなかなか面白くて少し安心、気になった作家メモ
Taus Makhacheva 高地にロープを張り、綱渡りで絵画を運ぶ映像。
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どういうことなのか、ひたすら運んで映像は終わる。行為の背景は何も映像内では語られず、あまりに無意味に見えるが、どうも描かれてる絵画の内容に意味がありそうだ。でもやっぱりわからん。にも関わらず、不思議とずっと見ていられる良い作品なのだ。説明書きをカタコトで読めば、運ばれてるのはコーカサス戦争が画題になってる絵画らしい、と言われてもコーカサス戦争が全くしっくりこないのでウィキで調べたらロシアとイスラム勢力の戦争だったようだ。なるほど少しだけ腑に落ちた気がする。
Philippe Parreno ガラスケースに電気と蛍光灯でチカチカしながら音が鳴ってる作品、単純に全体的にカッコ良い。パレーノってこんな作家だったっけ。
Sung Hwan Kim 置かれているオブジェと映像の関係がいまいち良くわからなくて、なのにいちいち繊細な作業を感じるし美しい。
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気になる。
 

国別パビリオンは、もともとあまり楽しめなくて、こんなん今更だけどパビリオン自体もそれぞれ規模が違い、クオリティも恐ろしくバラバラ。そんで結局安定感のある大きなパビリオンを優先的に見て、残りをダメ元で突撃して良かったらラッキーみたいな態度についなってしまいがちなのがなんか嫌。
そのため、体力があるうちにまず企画展示を見てからの後になっちゃうし、どうにもやる気が起きないのだがジャルディーニ周辺だけは押さえた。
話題のドイツ館Anne Imhofは、
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最初の20分を外から見ることしかできなかったがめちゃ面白そうだった。

アメリカ館のマークブラッドフォードは元々好きな作家、
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しかし今回は彼の作品スケールに対してパビリオンが小さすぎる気がした。
その他流し見、、、
ちなみに日本館は一部行列ができてたので並んで見たらそこだけ体験型になっており、その仕組みを知らなかったら強制的に鑑賞者が作品の一部にされてしまう構造だったのがちょっとなあ。


一方、ハーストの大規模個展はあまり期待してなかったが思いの他見応えがあった。
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まるでドクメンタベニスで散々見て来たシリアス、リサーチ、世界問題真正面系の作品傾向をブン殴るようなウソ満々のドキュメント映像と海底から発見された設定の巨大オブジェというかフィギュアというか。ポストトゥルースという考え方の悪用? ものすごいお金かかってそうだし、現状に対するパンク精神は少しもブレてないんだなあと感心した。その態度は潔くてカッコいいわ。でも確かに1つ1つが俗悪モノとしてハイクオリティでよくできているが、斬新さは感じず、もし大金持ちになったとしても欲しいものは一個もないし笑、見てる時はニヤニヤして楽しいのだが1日経つと余韻が全くないのもいつも通りだ。

イタリアは食べ物が美味しいのでそっちで気力を回復させる。
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ベニスでは立ち飲みバルをハシゴするのが楽しいのです。
 

◯ミラノ
アンブロジアーナ絵画館にて、カラバッジョの果物籠を初見。宝物状態で展示の1番奥に展示されてて撮影禁止。背景は黄色ではなく薄いベージュなんだ。たぶん果物籠の周りにもモチーフを描いてたのを最後に塗り潰しているような感じ。塗り跡は明らかに果物籠より背景が手前にあるのだ。その処理によって、シールを貼ったように果物籠からイリュージョンが削ぎ落とされている。ギリギリ、下の机から前にせり出した籠の部分及びその影のみが、空間を維持してる。右端の、画面からはみ出る枝と葉の描写は他部分と比べ簡略化されていて、かつ籠からも独立していた。なぜカラバッジョはこんな絵にしたかったんだろう。意図的に、奥行きの空間をペラーっと圧縮させながらその矛盾を堪能してたのではないかな。

ドゥーモ横の現代美術館は、見事なまでにイタリアのみの現代美術史の流れを見せていた。超ローカル!!未来派もモランディも如実にキリコ発で、キリコがいかに尊敬されてたかよくわかる上に、キリコからよくぞそういう風に枝分かれしたよなってとこが面白い。また未来派から、キネティック、発光系の仕掛け作品に発展するのもちょっと笑えた。マリオメルツなど
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が出てくるまでの流れもこう見せられるとよくわかる。

ブレラ絵画館。
僕の苦手な、キリストの死連発とサロメ&生首な宗教画連発が来た!!さすがイタリア。この感覚がいつまで経ってもわからんのよね。要は残虐な死体の絵画をこれでもかと見せつけられるわけで、ここに信仰心や崇高さを重ねられないので、西洋画の学習のためには鑑賞は避けては通れないけれどめちゃくちゃ疲れるし具合悪くなる。
基本的に教会もすいませんお邪魔しますなんか雰囲気怖いっすここ、感は拭えないし、宗教画でなく現代美術を見てても、ちょいちょい同じ苦手な感覚の作品がある。Paul Thekとかまさにそれでまじ苦手。西洋に慣れられないところ。
おっと、話がズレた。
それを差し引いても、ここかなり好みの古典がたくさん。
ティツィアーノ、数多く見てきたライオン爺さん画の中でもこれはいいぞ。
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ティツィアーノお得意の、絵画内の一人が絵画内で起きてる事柄を遮ってこっちを向いてくるという技。この絵ではついに、ガイコツがこっち見てる。


ルーベンス版の最後の晩餐は、おまわりさんコイツです!と指さされてドヤ顔のユダにちょっとウケた。
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足元の犬は法の象徴なんだって。
筋肉描写をしていないかつ動きの要素が少ない画題におけるルーベンス、テンションが2割くらい落ちてみえる。

その他良いカラバッジョ、ピエロデラフランチェスカを見れた。
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教科書でみた、マンテーニャのキリストも。
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最後は郊外にあるPirelli Hangar Bicocca。
あまりにデカすぎるキーファー。前回の札幌国際芸術祭でキーファーのドキュメンタリーが上映されててその中で映ってた、建築積んだ作品と巨大絵画のインスタレーション。
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デカい倉庫にデカい常設。デカけりゃいいというものでもないし、しかもキーファー自体は僕は全然好みじゃないのだが、ここまでデカくても変わらずボロボロで、デカいほど重いほど説得力と安定のキーファーになるので、思わず笑っちゃうわ。わざわざ来た甲斐はある。さらに別の企画展もあってそれで無料ってどういう仕組みなのか。

企画はRosa Barbaというフィルム作家のインスタレーションで激シブ。玉川で働くM君に見せたいやつ。会場がこれまたデカいので映像も大写しで機材とのバランスも良く、こんなインスタレーションされたらそりゃカッコ良いわ。

だいぶ端折りましたがひとまず終わり。
 

K見夫妻には道中、ツアーコンダクター役のお返しとしてたくさんご飯を奢ってもらいましたーダンケ!
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その2

ドイツ後半

◯ミュンスター彫刻プロジェクト
初ミュンスター。自転車レンタルしての彫刻巡り、レーンがきちんと整備されているので25kmくらい回って楽しい。けどさすがにくたくた。
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ピエールユイグはもちろんロマンティックで多様な仕掛けで謎もたくさんでとっても良かったけど、ゾーニングの曖昧さの観点で見ると今回はがっしり建物で囲っているぶん、前回のドクメンタの方がより良かったな。光の当て方とかも今回はややキザ過ぎるし。しかし今回の参加作家の中で1人だけ飛び抜けてスケールがデカいよなあ。何かわからんマシンが置いてあったので係の人に聞いたら、キャンサーを測定するとかなんとか。キャンサーって癌だよね?英語力不足もあり、どういうことかわからんまま。。。癌の測定が作品全体の循環構造に関わってるなら、ゾーニングの考えも変わってきそうだぞ。
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旧作品の中では特に、港千尋さんの「ヴォイドへの旅」で読んでからずっと体感してみたかったブルースナウマンはやっぱりすごかった。
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作品に入っていくことで感じるスケールの歪みはモエレ沼公園にも近い。構造がこれだけシンプルでも感動できるのは、作品の大きさ、コンクリの白や、凹みの深さ、斜面の角度、直線の幅、などが緻密に人の体および知覚から逆算されているからだろう。

旧作も新作も落書きだらけの作品がけっこうあり、ある程度補修の跡もあったりなかったり、結局はそのまま受け入れちゃってる感じがこれぞ公共だよね〜って、とてもしっくり来てしまった。
全部見るのは断念して2日目は街の中心部を徒歩で回る。ヒトスタヤルが圧倒的に良かった。
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テクノロジーの扱い方が。なんというかこの作家を説明するのは難しいのだが、少し前にブログでゼルダの新作を絶賛しショック受けたことを書いたのだけど、このようなバーチャル世界での体感の進化を感じられる時代の作家を象徴してる気がするのだよな。それだけでなく、大きな世界問題も引き受ける器もあり。。。なんなんだ。
あとBarthollもなかなか良い。3つともよかったが火の熱で電気を作る構造がシンプルでチープだけど、造形としてしっかりしてるので説得力がある。
ちなみに、シュナイダーを2時間待つほどのガッツは無かった。
油断してたがLWL美術館の常設展も何気にいい作品がある。特に、、、
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素晴らしいポルケを発見した時の嬉しさよ。

街には中心に大きな教会があったり、大きな美術館博物館があったりと、そんなに大きな街じゃないのに、そもそも文化レベルが高いように感じた。
彫刻プロジェクトの始まりは、ムーアの彫刻の設置に批判があって中止になったことに対するアクションと聞き(しかも今回はそれを題材にした作品もあった)、確かに当時は現代美術に対して保守的な面もあったのかもしれないが、街並みを見る限りやはり、日本、、、というと範囲が大きすぎるので自分の活動周囲における公共性や美術周りの考え方とは、比較にならないような文化ベースが存在している。もちろん彫刻プロジェクトの継続による成果もあるのだと思うけど、おじいちゃんおばあちゃんまでが一緒に自転車に乗って、熱心に作品について議論してるのだ。作品選定に市民も関わると聞いたことあるが。普通市民が選定に関わったら、害のない、いいひとな作家、かわいくて、個性を尊重した、オブジェらしき凡庸な作品が選ばれそう。だからそこはきっと先導役がいて、予めリストと説明がありそこを支点に熟議するのかな。

さて比較して日本の文化レベルを愚痴っていては仕方がないし、国と文化の関係など成り立ち自体が違うので歴史から紐解かなければ意味がない。しかしそこを考えだすと話が止まらなくなるし最後は途方に暮れる。では自分のできる範囲でどう動けばよいのか、を考えた方が生産的だよな。ひとまずものすごく短くまとめておくと、大前提としてどこで活動しようと自分自身がイケてる美術家になること、その他、美術と自己表現のちがいについて謙虚に伝えられるようになることや、さらにまずは自分も含め最低限大人が大人の品格を身につけることだと思う笑
 

◯カッセル
ドクメンタ14。会場毎にいくつか。
評判通りフリデリチアヌムは全体のラインナップを振り返ると見るとムムムな不満足感で、面白かったのはハンスフーケのドクメンタ2の記録写真
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とか数点、あくまでギリシア現代美術館の常設をそのまま持って来たという行為ありきの存在だった。

全体のコンセプト(移民難民、障がい者、グローバル資本主義の限界、などに特にフォーカスしながらなんとか多様性を考えなおしてみたけど結局まとまんないし、ここはアテネに学んでみよう?)を鑑賞者として忠実に追おうとしても、結局それでもヨーロッパ中心視点なのは当然だ。国際ニュースで見る大きなサイズ的世界問題の大きな欧州としての当事者視点による構成なので、どこかよそよそしさを持って鑑賞することになっちゃうし、目立って日本に関わる作品といえば佐川一政という狂気だし(作品自体はおもしろかったが)。
前回のドクメンタもそのへんはあんまり変わらないのだけど、個々作品のクオリティが高かったことに加え、作家とキュレーターの信頼関係、作品同士のゆるやかな関連が直に見えるような全体の包容力や希望にとても感動した記憶がある。
今回は、もっとなんというかバラバラしてる。ゆるやかにテーマに連動していく構造はあっても、並ぶ作品のクオリティも作家選定のエリアのおそらく意図的にかなりバラバラ。
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例えばドクメンタハレの広いホールにこんな素朴な刺繍作品があったり。雑貨風味ながら描かれているのは戦争を含む生活史。

いや、そのバラバラが挑戦的で面白くもあり、むしろ前回にも増した多様性、ローカルの提示として開き直るならばこっちも自身の表現に合った個別の作品を追えば自分の現代美術表現者としての現在位置を確認しやすいんじゃないかと思って見ることにした。コンセプトの読み解きを楽しむだけでなく、そういう見方を許容してくれる展示の方向性ではあったのでは。
ドクメンタハレのStanley Whitney
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順序のニュアンスの多さ、それをわざとらしく見せつけない軽さは、実物を見ることで理解できた。良い画家だ。
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しかしこんないかにもドクメンタに似合わない、ギャラリーのような展示をなぜここで今さら?グリッドは古代建築からのアイデア何々の書いてあったけど。70代黒人画家というのも選ばれた要素の1つなのかな。

自然史博物館のRosalind Nashashibi
(とガラスパビリオンのVivian SuterとノイエのElisabeth Wildもセットで)
ビビアンの庭、という映像作品をすぐに見て、
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(あっ、魔女の宅急便を視聴してるシーンが。。。)

各シーンの美しさに感激、調べてみたら映像内の母娘(どちらもアーティスト)両者の作品とナシャシビ自分の絵画作品もあるとのことで確認したらどれもこれまた美しい。
別会場のNashasibiの絵画、
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サラッと薄塗りの中に、読めないが具体的なイメージを感じる作品群。

離れたガラスパビリオンに展示されているSuterの作品は、雑味がいい。
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粗悪に見える支持体の布は、タヒチ時代のゴーギャンの荒いキャンバスを思い起こすし、塗られたベッドを取り囲むように垂れ下がったたくさんの絵画は一枚一枚を見せることではなく連続したインスタレーションとして、絵画的な魅力を放ったまま別の切り口での純粋さを生んでいた。

ノイエギャラリーのWildの作品もまた、小さくて渋いながら実直なコラージュ作品で、21686248_1574981295895696_5389837844115052006_n
3者とも具体性を帯びた抽象表現をしており、
かつ離れた会場同士の作家を映像で結びつけている構成が良かったなあ。 
 

…これらは、どうしても僕が絵描きだから反応するに決まってるのだ笑。ドクメンタ鑑賞における絵画好きのための救済措置的存在。というか自分のやってることの立ち位置にシンクロできそうな存在。
きっと、Vivian親子が森に住んで制作する背景など深掘りすれば、さらに全体テーマと共鳴するおもしろさがあるのだろうけど。

今回daybookは買わなかったが、そうだあれは展示を回りながら列に並んでる時や作品見てる時、昼飯の時、次の日の鑑賞に備えて寝る前、、、などにリアルタイムで読んで背景に納得するためのものだった。
 

その他、埋葬博物館のTerre Thaemlitz
『愛の爆弾』という映像、少し古めの作品のようだけど強烈に見入ってしまった。
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映像に日本語訳がついているので言ってることが直接わかるせいもあるかも。調べたら10年以上日本在住の作家なので、説明抜きでの共感レベルが他作品と全然違う気もする。そこを抜いても各シーケンスのリズム感の良さと読みきれない心地よい謎、音のセンスも素晴らしいし、アトムへの言及もあり。懐かしのマックOS9の画面で始まり画面で終わる。

ノイエギャラリー
えらい行列が出来ていた。新旧入り混じりモノ系作品が多い。いかにも複雑そうな読み解きはここでも放棄してしまったが、先日見たばかりの映画『残像』の主人公であった画家ストゥシェミンスキの作品が見ることができて感激。背景を映画で予習したので、ここに作品がある重みも違う。
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一回書きの線のバリエーション。囲むか開けるか、んー渋い検証!
 

その他気になった作家メモ
パライス
Roee Rosen
ノイエノイエ
Maret Anne Sara
Arin Rungjang
Andreas Ragnar Kassapis
Ross Birrel
カッセル大学
Angela Melitopoulos
など。
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キリがないのでこの辺で。

今回は展示会場が中心部にまとまってたので非常に回りやすかった。それに各会場とリンクした作品選定にさすがと思う。
途中、札幌の芸術祭のとある問題の渦中だった作家Hくんと合流して当事者としての話を聞きながら意見交換したり(よりによって国際展の本場で)、
ハンブルグチームとディナーで合流、美味しいステーキを食べながら綿引さんの誕生日を祝ったり。
それにしても、ミュンスターもカッセルもめちゃくちゃ日本人多くて驚いた。ここまで来ちゃうくらいの現代美術好きって、たくさんいるんだなあ。

続く

8/30日から18日間、美術漬けの欧州旅行より帰国した。
K見夫妻の新婚旅行も兼ねてだったのだが旅行プランはほぼ僕が立ててしまったので、
どちらかといえば苦行に近い鑑賞ラッシュ。
3カ国8都市、20以上の美術館及び国際展を休みなしで。
2日目でもう一人の同行者S君の足にはマメができるわ、途中全員体調を崩すわ、まあいろいろあったが無事に帰ってこれたので良かった。
 

以下、3回に分けて鑑賞記

その1

パリ。5年ぶり2度目。
○街の中
5年のあいだにテロが何度も起きていたので、どのくらい変わったか気になるところだったが、さすがに観光客の多いところでは大きな銃を持った軍人さんが徘徊しており緊張感が違うわ。それ以外では、歩いている感じあまり変化はない。美術館の荷物チェックも思ったよりいつも通りだな。

○ポンピドゥー
前回展示されてなかったマチスの「コリウールのフランス窓」にようやくご対面できた。マチスの中でも最も抽象構造に寄って、かつ暗い作品。不在の黒。戦争への反応。マネとデュシャンのあいだ。う〜ん、感動して思わず記念写真を。
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企画展はホックニー。撮影禁止。
贅沢な回顧展。そのままの意味で絵が描ける画家の線や塗りを見ることは、極めて清々しい。
やってることは団体公募展の人物及び風景を描く作家に近くもあり(その世界最高レベル)、何を描くかにおける刺激はやや足りないものの、どう描くかの部分、つまりモチーフの扱い方や描写の技術があまりに理解の深い絵画表現なんだよなあ。その延長として近年のiPadペインティングのようにテクノロジーへの柔軟対応(爺様なのに!)には感心する。
80年代以降に現れるキュビズム的な作風は、彩度の高い色の当て方など参考になるが、やはり優等生的な空間構成で、近いセンスで言えばやはりホジキンの方が読めなさの魅力でいえば僕にとっては強いな。 
 

○ピカソ美術館
初来訪、素晴らしい。
いろんな時期の作品を満遍なく見れるので、ピカソの正しい楽しみ方(できる限りちがった、傑作から駄作まで幅広い表現をたくさんみる)をここ一館でもかなり実現できるのが良い。
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古さを感じないあまりに多用な表現、ポストモダン以降の具象系絵画はまずピカソに回帰共鳴してたのだな。
 

オルセー
5階の印象派名品ゾーン、ラインナップはマネの草上の昼食を初め確かに名品祭り、
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んー、これらを連続して見れるのはやっぱいい。
オルセーでマネを見る前に、フーコーの「マネの絵画」で予習するのオヌヌメ。

しかし、外光が直接作品にかかってていくら外光大好きな印象派とは言っても作品にまで浴びせなくても、、、それでいいのか!?
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それにしてもゴッホはいつも、頭でっかちになりがちな感性をガツンと殴ってくれるなあ。絵肌が直接涙腺にくる。
こういう作家は他にあまりいない。
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星月夜は初めて見たのは実は札幌のゴッホ展だった。今回で3回目、何度見ても感動する。
この絵肌の感じとブルーの色合いは写真じゃムリ。
ゴッホも僕らと同じ北斗七星を見ていた。
そしてゴッホを堪能しながら毎回思うことは、いつも一緒の部屋に置かれてしまうゴーギャンがいつまでも不憫であること。。。ゴーギャンも良いのだがゴッホの圧が強すぎる。

○ルーブル
前回見れなかったプッサンの『アルカディアの牧人たち』を見るのを楽しみにしてたのに、プッサン部屋と北方ルネサンス部屋が見事にクローズ。ありますよねえこういうことは。それでも他にも前回クローズで見れてなかったシャルダンのエイ、
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アングルの背中などは見れたから良しとする。アングルのフラットも240年経つとバリバリだ。
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5年ぶりのパリ在住みっちゃんに美味しいご飯連れてってもらいました。
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ナチュラルワイン、滅茶苦茶美味い!!
 

ドイツ前半

○ケルン
新幹線でドイツ入り。今回はユーレイルパス使って鉄道移動です。
パリからは要予約で新幹線料金が発生するので注意。ということを直前に知って焦ったが大丈夫だった。
ケルンに着いて早々、ハチに刺されてウィルコメン。

ギャラリストみきこさんの計らいで、
以前自作を購入してけれたビッグコレクターさんのビッグオフィスに一緒にご挨拶へ。
写真はここには載せられないが、
オフィス内が美術館みたいで、イミクネーベル、ベルナールフリーズ、デビッドリード、カタリーナグロッセなどなど驚きのラインナップ、、、しかもそれぞれクオリティ高いものがたくさん!?衝撃。1つ1つをコレクターご本人自ら丁寧に説明してくれる。凄いなあ。
僕の作品に目を留めてくれたきっかけは、今年3月アートマガジンに新人枠で掲載されていたのを見て、わざわざこれもご本人が自らの足でギャラリーに来てくれて3枚も買ってくれたのだった。自作は立派な保管庫で大事に取り扱われており、小作品の同じ棚にリヒターがあった笑。
彼自身のコレクションをまとめたカタログと、アーティストブックをお土産にもらった。
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これコレクションカタログより。写真奥にはMary Hailmannの作品も。。。
お土産返しは日本の達磨!うーん、ここにきて仕事しに来た感がグッとでた。帰国したらすぐにガンガン作品をつくろう。

コロンバとSankt Peter koln教会は休館で残念、ルートヴィヒではインストール中のガイトンを見ることができてラッキー。
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ここで作品張るのね。

ケルンでは、O先輩オススメの、前回食べ逃した人気ポメス屋さん念願のリベンジ達成!!
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夜は5年ぶりにデュッセルドルフ在住の荒川くんと会えた。最近やってるパフォーマンスの話や、前回から現在に至るまでの話。5年空くとお互いの状況の進み具合が目に見えるので面白い。

○デュッセルドルフ
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トマスサラセーノの巨大体験型の作品。
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最上階に張られた網を歩ける構造はアトラクション状態で、普通に怖い。下から見るとわからないが、登って歩いてみるとやはり造形的な美しさがあり、階層の重なり方がよく計算されている。しかしこれだけのインスタレーション、人が落ちないような安全面での構造計算の徹底と作品の完成度を擦り合わせていくことを想像するだけで気が遠くなる。
プラス、地下階の映像展が良かった。
ハズレのないケントリッジに、以前ロンドンでも見たことあるリチャードウォーカー。
k20は風邪でほぼダウン。

続く

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