やまもとのグレーゾーン

札幌の絵描き山本雄基のきまぐれ雑感と日常。

2024年12月

自分にとっての芸術の原理とは。

自分が心奪われてきた芸術体験と、いま一度向き合って潜らねば、とか今年は考えていた気がする。

子どもがいま3歳半。この3年で、ひとがどのように世界を受け入れていくのかを家族として観察した。僕の最初期の記憶が2.3歳頃からなので、それ以前のことを子を通してそれなりに理解した。

3歳までは、毎日の生活と芸術体験との大きな違いはなかった(というか世界を知覚することが全時間の全て)と思うが、物凄い観察能力と様々な物事に出会った際の反応差、食べることと遊ぶことの嗜好の中に、芸術体験の原液のような感触はある気がする。

言葉の習得には関係するんだろうか。言葉が世界を規定していく。言葉が、もの、こと、人のこころ、とつながっていく。理解のスピードと習得のパターンの多様さにはもうついていけない。線や色も理解して、それらもすでに言葉とつながっている。

言葉の基本が整った最近になって、かっこいいとかかわいいとかおもしろいとか、そういう反応を記号的かもしれないが使えるようになってきた。

驚いたのが、何かの拍子でダリの記憶の固執を見せたら、息子がこんな反応をした。

「このとけいどうなってんの?木にぶらさがってるね なんで?ここにもなんかぶらさがってるね。テーブルにもあるね。青いこおりの色みたいだね。あまいのかなあ?ありさんきてるし。ひとの手(絵の真ん中の有機体が手にみえるらしい)がはずれてるみたいだね。手にものってるね(時計が)。台もあるね。」

あれ、もしや絵を鑑賞する準備は整っているのか?生活と芸術に区切れが現れつつあるのかも、いつの間に?いや、描かれた事象の説明ができたり不思議を感じる程度では、それが芸術体験というにはまだ足りないし、そういう感じではなかったように思う。

僕の自意識レベルでの芸術の最初の原体験はハッキリとふたつ。

ひとつは3歳近辺で、UFOをみたこと。別に超常現象を信じたり、ムーを熟読してたわけでもないがこれ本当。今となっては現実だったのか、もしかして夢だったのかあやふやだけど、かなり具体的にその情景が脳の奥底に焼きついてる。

もうひとつは4歳、スーパーマリオブラザーズに触れたこと。細部にいたる世界観全てに魅了され、ひたすら没入した。シュールレアリスムに触れたのはマリオが最初だったと思っている。

どちらも、現実を飛び越えてるかつ、その魅力(=美?)に堕ちちゃう感じ。言葉以前に、強烈なわけわからなさがあった。それをまだ他人にはうまく伝えられなかった。(言葉で芸術を語ったり、体験を自ら生み出すのはかなり後だったように思う)

自分がそれを体験した年齢に、そろそろ子が重なってきている。もし彼にもそういう原体験がこれから訪れるなら、それを見逃さずにいたい。

しかしそんな自分の原体験はもはや遠く、40代にもなれば、現実の感じ方や受け入れ方における段階の変化を自覚するようになったり、芸術に関わって積もってきた諸々が役立ったり邪魔だったり思うようになってくる。

それでもまだ、今の状況を基として、強烈なわけわからなさをたぐり寄せることができるか、そこに集中したいと思ったところで、

みなさま、よいお年を!

山本雄基 個展
交錯情景
Humarish Club 藝術空間 (澳門路氹溜冰路澳門葡京人L01樓H853 Fun Factory 娛樂廠R68號舖)
2024年11月22日ー2025年 1月5日
12 : 00 – 20 : 00
http://www.humarish.com


5th Anniversary Exhibition
「都市と自然/Urban and Nature」
OIL by 美術手帖ギャラリー(渋谷PARCO2F)
Part1:2024年11月15日(金)〜28日(木)
Part2:2024年12月1日(日)〜16日(月)
11:00〜21:00
会期中無休
Part2会期に、新作2点出展してますのでぜひご覧ください。
https://oil-gallery.bijutsutecho.com

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年末感漂うなか、2つの展示が動いております。
今年は美術市場の不況のアオリがここにまで届いているのか、超赤字ではありますが、
そもそもフルタイム決め込んだ時点で、そんな可能性は承知の上でやってるので活動あるのみ。
幸い作品の内容には満足できてるし、展示もいい感じに決まっていると思う。
、、、とはいえやっぱりシビア!
行ったひとほぼ全員絶賛してる国立新美の荒川ナッシュ医、
見ときたかったけど飛行機チケット買う余裕ないっすわ。

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マカオ行ってきた雑感
・カジノホテルの規模、遠くからも目立つ独特のネオン看板夜景、地下鉄ないからタクシー移動増えがち。

・香港からの移動でも毎回パスポートチェックがある。

・まだコンテンポラリーアートのギャラリーやシーンはほぼ無くて、これからその基盤を作っていこうとしているらしい。

・30歳以下の若者世代やアーティストと話した感じ、マカオは街が狭く、思春期には退屈を感じ、進学で外へ出ることを考える。しかし中国はしかしマカオとは全然違う文化なので選択肢になりにくく、香港も最近の諸事情でなかなかシビア、それで英語などを積極的に覚えるのだと。なんとかして海外の大学を狙いたい若者が少なくないらしい。皆、2.3ヶ国語はペラペラで、コミュニケーション力も高く、しっかりしている。日本文化への親しみは強く、ドラえもんやちびまる子ちゃん、ドラゴンボールはTVで見て育ち、リアルタイムで漫画も読み、jpopもリアルタイムで受信してきたらしい。

・マカオと香港は街のマインドがかなり違くらしく、香港は中国と元々敵対的な構造で、返還前から本土を見下してる風潮もあったが、中国経済が上に向いてからは逆に上手に出られたり、返還後のさらなる関係悪化とはよく知られているところ。実際半日香港にも行ってみたけど、明らかに西洋人の比率が減っている。
一方マカオは昔から賭博特別地域のため、もともと中国からの観光客も多く、強いステークホルダーファミリーもいて、経済もほぼそのファミリーが握ってる関係からか、中国とのバランスの取り方が香港よりは安定している。うまいこと自由は確保できつつ、でもマカオだけでは街の規模も小さくて結局すぐつまんなくなるし、GDPが高すぎて住んでるだけで年間10万超のお金が支給されるという羨ましい話もありつつ、悩ましい部分も多々あると。


・タイパエリアの超人工的空間の連続(カジノホテルと巨大モールとがずーっと繋がってる。そういうのがたくさん並んでる)にだいぶ酔った。その真ん中にチームラボ美術館があって、どれ一度くらいは、、、と体感してみたら、更に酔った。


、、、など色々聞いたけど、台湾や香港などと共に、中国の影響力の大きさとそこからくる生活意識みたいな根本がやっぱりそれぞれ違いながらもあり、
その上で日本を考えてみると、これまただいぶ違うものだ、と実感する。

飛行機の中で読んだ、原田マハの「楽園のカンヴァス」、面白かった。
なるほどこういう美術の面白さへの導入もあるのか、、、それこそビジネスマンのためのアート!アート思考を身につける!系の本よりも、身に付く知識としても態度としてももしかしたら有効なのではないかな、、、

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パルコ渋谷のOIL by 美術手帖での展示は、「都市と自然」と題したグループ展で、
僕は自然のグループに入っている。企画の方になんで自作が自然?と聞けば、
乱数を作品に使っているからとのこと。赤瀬川原平がどこかで乱数と自然の関係について書いていたという話も。
そういう誘われ方、嬉しいですね。

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livedoorブログ、スマホでみると本当に不快な広告がデカデカと表示されて嫌すぎる。運営に言っても意味ない。前も書いたかな?
そもそももはやほぼ書いてないし見る人もどこにいるのやらという状況ではありますが、
PCで見ること推奨します。

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